随筆・その他

リレー随筆

ミュージカルを観に行ってみませんか


鹿児島市立病院 小児科 中﨑 奈穗

 突然ですが,みなさんの趣味は何でしょうか。「あなたの趣味は何ですか?」と聞かれる機会が多々あると思います。私が「ミュージカルを観ることです」と答えると「すごいですね」とびっくりされます。鹿児島ではほとんどミュージカルを観る機会がないためか,とっつきにくいイメージがあるように感じています。そこで,せっかく文章を書く機会を与えていただいたので,今回はそんなミュージカルについて,みなさんに興味を持ってもらえたらと思い,書いてみることにしました。
 私が初めてミュージカルを観たのは中高生の頃だったと思います。鹿児島にやってきた劇団四季の舞台に母が連れて行ってくれました。とにかく圧倒されたのを覚えています。当たり前で失礼な話ですが,みなさん歌が上手!そしてエネルギーがすごい!もちろん内容も素晴らしくて,どんどんその世界に引き込まれていきました。それ以来ミュージカルが大好きになりました。今では,劇団四季だけでなく様々な舞台に足を運んでいます。
 では,実際ミュージカルはどういうものか,みなさんはご存じでしょうか。まずストーリーですが,様々な種類があります。「エリザベート」「レディ・ベス」「モーツァルト!」など実在した人物や史実をもとにしたもの。「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「ジキル&ハイド」など小説をもとにしたもの。「ライオンキング」や「美女と野獣」などディズニーの作品をもとにしたもの。もちろん,オリジナルのものもあります。ジャンルもシリアス,コメディ,友情,恋愛,ミステリーなど多岐にわたります。そして,これはミュージカルの特徴かもしれませんが,出演者が公演によって変わる場合があります。主役も含め各役に対して演者が何人かいて(多い舞台では1つの役に対し4人くらいいるときもあります),各公演で演者の組み合わせが変わります。同じ作品でも演者の組み合わせが変わることで違う印象になるので,何度でも楽しむことができます。また,ブロードウェイの作品が日本で公演されることもあります。演者がすべて外国の方で,セリフや歌ももちろん英語ですが,日本語の字幕が舞台上で表示されるので,少し目が忙しいですが,安心して観ることができます。そしてミュージカルになくてはならない演奏ですが,生演奏で行われることが多く,迫力があります。劇場にもそれぞれ特徴がありますが,個人的には博多座の雰囲気が好きです。帝国劇場も歴史があり,立派で素晴らしいですが,博多座は程良い広さで,舞台から客席も近く,私はアットホームな感じがします。どの劇場もだいたいは劇場内で食事やお菓子,お土産まで売っていて,劇場によってはどこかの市場に来たかのような賑わいをみせているところもあり,開演前や休憩時間も楽しく過ごすことができます。
 いろいろな楽しみ方があるミュージカルですが,ミュージカルに対しとっつきにくいと感じている(私が勝手に感じているだけかもしれませんが)人がいるのは様々な理由があると思います。まずは,チケットの値段がそれなりにするということ。確かにコンサートなどに比べるといい値段だとは思いますが,歌と芝居,さらにダンスもあって,公演によっては生演奏付き!それらを考えると1粒で2度おいしいじゃないですが,1つの作品でいろんなことが味わえてお得と私は思っています。舞台装置や衣装も凝っていて,ライオンキングの動物たちは動き方も含めとても工夫を凝らしてありますし,ある有名な作品ではびっくりするような乗り物(ネタバレになってしまうので伏せますが)が出てくることもありました。とにかく細部までこだわってあって,これだったらこの値段でも納得だなぁと思います。次に,急に歌いだす意味がわからないということもよく言われます。私はもともと,親が車の中でよくディズニーの曲をかけてくれていたこともあって,ミュージカルのような曲に違和感はありませんでしたが,初体験の方にとって急に歌いだすことは衝撃的かもしれません。しかし,セリフを曲にのせて歌うからこそ表現できるとコメントしている演者もいますし,観客の私達も,より心情や世界観を把握することができると思っています。そして,最後に,そもそも鹿児島ではあまり観ることができないという現状があります。ほとんどが東京や大阪など首都圏であるので,私自身もなかなか観に行くことができません。こればかりはどうしようもないことですが,鹿児島でも最近は年に数回は公演がありますし,近年では九州新幹線も開通し福岡ぐらいは日帰りで行くことも可能なので,観に行くチャンスは増えたと思います。最近ではDVDやCDになっている公演もあるので,生の迫力には負けますが,それらで雰囲気や歌の素晴らしさを味わうのもいいと思います。
 私はミュージカルを観に行き始めていろいろなことを学びました。例えば,ストーリーの舞台となっている国や歴史について興味を持って新たな知識を得ることができました。また,書籍が原作となっている作品については,こんな解釈もあったのかともう一度読み返す機会を与えてもらうこともあります。さらに,私がコンサートなどにあまり行ったことがないので知らなかったのですが,私の中の勝手なイメージとして,日本人は引っ込み思案というイメージがありました。でも,実際は老若男女問わずスタンディングオベーションはもちろんやりますし,カーテンコールでコンサート会場のようになると,引っ込み思案なの?と思うくらいみんな盛り上がって,私の固定概念を覆してくれました。そして,一番思うことは,みんな今この瞬間を精一杯生きているということです。それは演者,オーケストラ,スタッフ,すべてにおいて感じ取ることができます。そして,自問自答してしまいます。はたして自分は精一杯生きているだろうかと。
 いろいろ書きましたが,ミュージカルはみなさんが思っている以上に,とっつきやすいですし,何より楽しいです! きっかけは何でもいいと思います。あの作品は映画や小説で観たことがあるけれどミュージカルではどうだろうとか,とりあえず劇団四季って有名だから観てみようとか,帝国劇場に1回は行ってみようとか。最近では主にミュージカルで活躍されている俳優さん達がテレビに出演する機会も増えたので,それで興味を持ってもらってもいいと思います。だまされたと思って一度観に行ってみてはいかがでしょうか。

次号は,鹿児島市立病院の平林雅子先生のご執筆です。(編集委員会)





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