=== 年頭のあいさつ ===

年 頭 の ご 挨 拶
鹿児島市医師会病院 院長

     園田  健


 あけましておめでとうございます。会員の皆様ご家族および各医療機関の職員の皆様,ともに輝かしい新たな年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
 院長を拝命して三年目の春を迎えましたが,あっという間の思いです。当時を振り返りますと,迷っていた私に,恩師故 井形先生の“頼まれたら断らない。頼まれるうちが花”という言葉をいただき,火中の栗を拾う気持ちで就任した事を思い出します。恩師の言葉は重くかつありがたいものでした。
 さて,医療界においては診療報酬改定・新専門医制度・地域医療構想など難題が山積しております。その中で何とか財務の改善を果たし,健全な病院経営ができるよう努力を重ねてまいりたいと思いますので引き続きよろしくご支援のほどお願いいたします。
 昨年の出来事の第一番は熊本地震でしょう。4月14日の臨時警戒情報が室内で鳴り響いたかと思うと,今にも家財道具が倒れんばかりの揺れに驚かされました。しかしそれは前震で,4月16日が本震という国内でも初の出来事に行政の対応も困難を極めました。私の先輩も14日の前震ののち93歳になるお母さまを気遣い,帰郷したところで16日の本震に遭遇され,大変な目にあったと述懐されていました。さらに36年ぶりの阿蘇山噴火など熊本県民ならずとも,自然の脅威の前に人間の無力さを痛感させられることでした。
 また世上は極めて不安定で,IS(イスラム国)拠点制圧のため,イラク政府軍・クルド部隊・シリア軍と反シリア政府軍またそれぞれ支援するロシア軍,アメリカ軍・トルコ軍などNATO(北大西洋条約機構)軍入り乱れた戦闘により,犠牲となるのはいつも一般庶民です。難民化する人々・受け入れによる政情の不安を恐れて入国拒否する国民。人間の心の嫌な部分が見えてしまいます。衣食足りて礼節を知ると言いますが,残念なことが起こっています。その顕著なことがトランプ大統領候補当選でしょう。メキシコに壁を・イスラム人国外退去・入国拒否・TPP(環太平洋パートナーシップ)反対・外国品に高い関税・駐留米軍撤退など保護主義まっしぐらです。これはアメリカ社会が病んでいることを示しており,もはや他人のお世話などできないところまで落ちこんでいると言えます。我が国はというと,今後人口減少に拍車がかかり,自国のみでの経済発展はありえないため,EU(欧州連合),環太平洋アジアブロック経済を模索するでしょうが,中国相手にどう対応していくのか,戦前のブロック経済破綻による日中戦争から太平洋戦争へと突き進んでいった悪夢がよみがえります。そんなことのないように舵取りをお願いしたいものです。
 国内では政治家の腐敗が問題視されました。公金の不適切な使用疑惑などによる舛添知事の辞任に始まり,築地移転問題・リオ五輪開催予定地にかかる費用を巡る問題から資金運用の不透明さ,税金の活用に腐心すべき優秀な公務員がその能力を発揮できない組織構造の劣化ともいえ,長年のシステムを抜本的に改善せねばならないものと思われます。
 その中でリオデジャネイロオリンピックでの日本選手の活躍は国民の心を癒やしてくれ,心の安らぎを得られました。2020年の東京オリンピックが無事成功裏に開催されることを願いたいものであります。
 さて,当院の三年間を振り返りますと,医師会のニーズや経営戦略の一環として平成25年より緩和ケア病棟を稼働し,4階病棟を女性病棟として婦人科および女性患者さん使用に改変し,アメニティーの向上を図りました。また翌年より7階病棟を地域包括ケア病棟に変更しました。その為,今回の重症度厳格化に対しては特に意識したコントロールを行わずに,概ね28-29%の看護必要度で推移できております。しかし,4月から泌尿器科の閉科なども手伝い,手術症例の紹介が減少しております。そこで,本年度5月から過去のデータを基に医療連携・相談室員と各科診療科医師が会員医療機関訪問を行い,当院の経営状況および受け入れ体制の可能な診療科,診療科不在の場合にも他の医療機関を紹介することなどの対応をご理解・納得いただけるよう説明し,今後更なる連携をお願いしております。
 また,昨年度から在宅医療後方支援病院としての運用も開始し,現在200人を超える在宅患者様の事前登録があり,急変時の速やかな受け入れができる体制を整えました。
 紹介患者様の病態が専門外の疾患であっても「まずは診る」ことを基本とし,極力断らないようにしております。それでも当院で対応困難な場合には受け入れ先の調整をできる限り行い,決して会員任せにしないようにして信頼関係の構築に努めております。
 28年度の収支は改善傾向を示しました。これは運用実績に見合った人員の適正配置を行った事による人件費抑制が大であり,今後は紹介患者数の確保による収入増大が求められます。
 また,国の算定した将来の鹿児島の急性期必要病床は多く,調整すべきとされています。これを先取りしたかのような病棟改変ではありましたが,今こそ地域医療を担う医師会員の皆様との連携を強固にして,急性期治療および地域包括ケア病棟を活用し,患者様が自宅退院できる方法の支援を確立していくことが国の施策にも合致するものと考え,推進して参ります。
 くどいようですが,当院の基本は急性期医療であります。来年度4月から新たに消化器内科・外科各1人,さらに救急関連も含めいくつかの科で医師の入職が予定されております。さらに急性期医療の充実が図れるものと期待しております。
 最後になりましたが,基幹型研修医に一人マッチングいたしました。加えて大学協力型一人の研修も予定されております。若き医師を育てていくことが将来の安定した後継者づくりに貢献できるものと考えます。
 以上,医師会病院が皆様とともに地域医療の一翼を担っていけるよう努力していく決意を新たに致しまして,年頭のご挨拶といたします。今年もご支援をよろしくお願いいたします。




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