鹿市医郷壇

兼題「来年(でねん)」


(445) 樋口 一風 選




清滝支部 鮫島爺児医

来年どま来年どま言て年しゃ暮れっ
(来年どま 来年どまちゅて としゃ暮れっ)

(唱)思もばっかいでまた先送い
(唱)(おもばっかいで またさっおくい)

 尊敬していた人生の師に「正受老人一日暮らし」の話を聞いたことがあります。「一生は一日の連続であるから一日に命をかけて大事に生きよ」ということでした。しかし、また明日があるさと、明日も生きている保証も無いのに、だらだらと一年を過ごしています。私の事を詠んでいるみたいで汗顔の至りです。来年こそはしっかりと生きて行きましょう。




紫南支部 二軒茶屋電停

来年なち誓こた目標あけ忘れっ
(来年なち ちこたもくひょあ け忘れっ)

(唱)毎年の事でまた三日坊主
(唱)(め年のこつで またみっかぼし)

 一年の計という言葉があります。除夜の鐘を聞きながら、今年の反省をして来年は絶対これをしようと自分に誓いましたが、一年を何となく過ごして昨年の決意は霧散しました。人間とはこんなものでしょう凡人をよく詠んであります。
 あんまり高い目標でも無かったのでしょう。




 城山古狸庵

お初参や来年に回っ寝正月
(おはっめや 来年にまえっ 寝正月)

(唱)食ちゃ寝食ちゃ寝で出っとが大儀し
(唱)(くちゃ寝くちゃ寝で でっとがてそし)

 ぐうたらもここまで徹底すれば立派です。その人にとっては最初にお参りした時が初参りでしょう。新焼酎とは何時迄を言うのかと、言うのと一緒みたいなものでしょう。今年の分を来年一緒にすればいいやと寝正月を決め込みました。薩摩郷句にはもってこいの人物です。


五客一席 上町支部 吉野なでしこ

来年こそロコモ防止いスクワット
(来年こそ ロコモ防止い スクワット)

(唱)転倒けんごっ頑張ろち思っ
(唱)(はんとけんごっ きばろち思っ)


五客二席 城山古狸庵

来年なち毎年言っきた年の暮れ
(来年なち めとしゆっきた 年の暮れ)

(唱)去年の事もまだうっ溜っ
(唱)(去年のこっも まだうっだまっ)


五客三席 清滝支部 鮫島爺児医

受験生い来年な無どち頑張らせっ
(受験せい 来年なねどち きばらせっ)

(唱)三浪あ駄目ち家族中で発破
(唱)(さんろあぼっち けねじゅで発破)


五客四席 川内つばめ

腹を見っ来年な痩すちダイエット
(腹を見っ 来年なやすち ダイエット)

(唱)こいじゃいかんち初参い誓こっ
(唱)(こいじゃいかんち はっめいちこっ)


五客五席 城山古狸庵

来年くさ必勝を誓こた梅ヶ淵
(来年くさ ひっしょをちこた 梅ヶふっ)

(唱)絵馬め東大ち大つ書て下げっ
(唱)(えめ東大ち ふつけて下げっ)


秀  逸

 城山古狸庵

来年どま嫁女を見せち婆が催促っ
(来年どま よめじょを見せち ばがせずっ)


清滝支部 鮫島爺児医

ノーベル賞来年も欲しか日本人
(ノーベルしょ 来年もほしか 日本人)

来年どま初孫願ごっ宮参い
(来年どま はっ孫ねごっ 宮参い)

また来年ホールインワン遠か夢
(また来年 ホールインワン とおか夢)

来年どま海外旅行い行こち騒動
(来年どま 海外りょこい 行こちそど)

藪払れも来年ぬ思っ短こ切っ
(やぼはれも 来年ぬ思っ みしこ切っ)


 川内つばめ

来年かあ行かんで済もち梅ヶ淵
(来年かあ 行かんですもち 梅ヶ淵)

来年から五輪ぬ狙ろっ励つけっ
(来年から 五輪ぬねろっ はめつけっ)


薩摩郷句鑑賞 98

空箱を通い衆ん数蹴っ行たっ
(からばこを 通いしんかし けっじたっ)
              隈元みのる

 道端に段ボールかなにかの箱が転がっているのだけれど、いきなりそれを開けて見るのは、なんともいやしいようで気が引けるだろう。歩きながらぽんと蹴ってみて、空箱だと分かると、素知らぬ顔で通り過ぎたのである。ところが、通る人が、みな同じようなことをするところがおかしい。人間みんな似たようなことを考えるものらしい。


駅伝の向風ここが勝負どこい
(駅伝の むこかぜここが しょっどこい)
              中間 紫麓

 先般川内実業出身の児玉泰介選手が、北京国際マラソンで、二時間七分三五秒という、日本最高、世界歴代三位の記録で優勝したこともあり、今日指宿で開かれる県高校駅伝大会は燃え上がりそうである。
 参加は昨年より減って四十六校。暮れの全国大会の初切符を手にするのはどこだろう。坂あり、向かい風ありだろうが、各チームの熱戦を期待したいところ。


肩すかし拳骨で土俵を二度三度
(肩すかし とっこでどひゅを 二度三度
              東 不調法

 福岡国際センターで、大相撲九州場所が始まるが、逆鉾、寺尾、薩州洋、霧島、陣岳の井筒五人衆は揃って東。また、二子山部屋の若島津や、十両入りした陸奥部屋の星岩濤と、県出身力士がこれだけ揃えば、テレビ桟敷も湧かざるを得ないだろう。願わくば、この句のように、負けたら土俵を叩いて悔しがるような根性で、思い切り取って欲しいということである。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋




薩 摩 郷 句 募 集

◎2 号
 題 吟 「 後悔(くけ)」
 締 切 平成29年1月5日(木)
◎3 号
題 吟 「 流行(はやい)」
締 切 平成29年2月6日(月)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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