天
清滝支部 鮫島爺児医
最後です言かたが切ね聴診器
(最後です ゆかたがせっね 聴診器)
(唱)遣い限い遣っ後悔あ無かどん
(唱)(やいかぎいやっ くけあなかどん)
お医者様には、この断を下すのが、一番辛いことだろうと思います。聴診器をやおら外して、深刻な言葉で「最後です」。患者の身内には頼みの綱が切れた一瞬です。聴診器を擬人化してありますが、最後を確認する聴診器もさぞ辛いことでしょう。
地
城山古狸庵
聴診器胸ん内ずや聞かならじ
(聴診器 胸んうっずや 聞かならじ)
(唱)何か悩んもあろそな様子じゃが
(唱)(ないか悩んも あろそなふじゃが)
聴診器という兼題を出したのは、聴診器その物でなくて、聴診器を擬人化して、お医者さんと患者さんとの、心のふれあいとか葛藤とか出てくるのじゃないかと、期待してのことでした。聴診器を擬人化すると、患者さんの悩みや、お医者さんの心の動きなど、聞こえてきそうです。
人
川内つばめ
腹ん胎児ん声を聞いちょい聴診器
(腹んこん 声を聞いちょい 聴診器)
(唱)暫時じゃっで頑張れち語っ
(唱)(いっとっじゃっで きばれちかたっ)
胎児の声が聞こえるか存じませんが、鼓動ははっきりと聴こえてきます。声にこそ出さないが、胎児と話をしています。順調に育っているのでしょう。聴診器を当てただけで分かります。頼もしい限りです。
五客一席 紫南支部 二軒茶屋電停
頑固の親父ず看取った聴診器
(いっこっの おやずみとった 聴診器)
(唱)親孝行をしっ医者冥利
(唱)(親孝行を しっ医者冥利)
五客二席 清滝支部 鮫島爺児医
懐で温めっ当てご聴診器
(ふとこいで ぬっめっあてご 聴診器)
(唱)冷てなかごっ気配いもしっ
(唱)(ちんてなかごっ きくばいもしっ)
五客三席 城山古狸庵
飯事の医者は玩具ん聴診器
(ままごっの 医者はおもちゃん 聴診器)
(唱)孫もしっかい医者様めない気
(唱)(孫もしっかい いしゃさめない気)
五客四席 伊敷支部 矢上 垂穗
聴診器首び下げちょってまた探げっ
(聴診器 くび下げちょって またさげっ)
(唱)こん頃らそいが多こなって心配
(唱)(こんごらそいが うこなってせわ)
五客五席 上町支部 吉野なでしこ
聴診器孫も持っちょいリットマン
(聴診器 孫も持っちょい リットマン)
(唱)名器んロゴい爺もけ驚がっ
(唱)(名器んロゴい じもけたまがっ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
診いよっか先き検査をち若か医者
(みいよっか さき検査をち わっか医者)
古いかどん慣れたとが良か聴診器
(ふいかどん 慣れたとがよか 聴診器)
聴診器値段じゃ無して使こ技術
(聴診器 値段じゃのして つこぎじゅっ)
聴診器元祖はラッパで口が耳
(聴診器 もとはラッパで くっがみん)
城山古狸庵
こら妙じゃ郷句ずい聞こゆい聴診器
(こらみょうじゃ くずい聞こゆい 聴診器)
ネクタイち思もたや赤か聴診器
(ネクタイち ともたやあかか 聴診器)
川内つばめ
首び下げた聴診器せえ夢を見っ
(くび下げた 聴診器せえ 夢を見っ)
病診い耳ぬ澄ませっ聴診器
(やんめみい みんぬすませっ 聴診器)
聴診器子供心い憧れっ
(聴診器 こどんごころい あこがれっ)
上町支部 吉野なでしこ
聴診器恋の動悸き狼狽っ
(聴診器 恋のとためき ばたぐろっ)
雑 吟
伊敷支部 矢上 垂穗
三千本飲兵衛が飲んだ一升瓶
(三千本 のんべが飲んだ いっしゅびん)
作句教室 樋口 一風
薩摩郷句は五・七・五の定型が原則です。
音字の読み方で、破調句になりますので、もう一回復習をしてみます。下五は名詞か終止形(言い切る)で止めること。
鹿児島弁は読み方が難しいので、若い人には難しいでしょうが、まず音字の数え方を覚えましょう(川柳も同じ)。
音字の数え方
拗音 は二字で一音字。「きゃ」「きゅ」「きょ」または「くゎ」などを、下に小さく書き、上の音とほとんど同時に発する音。焼酎(しょちゅ)・社長(しゃちょ)・火事(くゎし)は二音字です。
促音 詰まって発する音で、小さく書く「っ」である。一音字と数える。「持っ」(もっ)は二音字、「親父」(おやっ)は三音字と数える。
長音 長く引いて発する音で、(ー)は一音字。「フェリー」「カープ」は三音字
撥音 「ん」とかんがえればよい、一音字。新聞(しんぶん)四音字。
また、鹿児島弁には語彙を強める為に、「打(う)っ捨(せ)っ」の(うっ)とか「け死ん」の(け)、「ひん飲(の)ん」の(ひん)とか接頭語がその他多数あります。
薩摩郷句鑑賞 96
おけさ節す区切って踊い不調法亭主
(おけさぶす くぎって踊い ぶちほとと)
児玉紫雲児
おけさ節にかぎったことではないけれども、大体踊りというのは、リズムに乗せて、流れるように踊るものであろう。ところが、急に引っ張り出されて、無理に踊らされたのか、知らない踊りを、隣の人を真似て踊っているのか、とにかく、不調法な踊りをしているのである。ごつごつとした踊りを、「おけさ節を区切って踊る」と表現したところが面白い。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎12 号
題 吟 「 来年(でねん)」
締 切 平成28年11月5日(土) ◎新年号
題 吟 「 挨拶(えさっ)」
締 切 平成28年12月1日(木)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
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