天
紫南支部 二軒茶屋電停
指輪が小めなっ抜けん言て大騒動
(指輪が こめなっ抜けん ちゅてうそど)
(唱)太て薬指び埋まっちょいこて
(唱)(ふてくすいゆび うまっちょいこて)
面白いところを見つけました。細い指願望は、女性なら当然のことでしょう。白魚の様な指だったのに、太くなったら当然指輪はきつくなります。
窮屈になった理由を、指輪のせいにしたい女心が、よく詠めています。穿ち味のある面白い句です。
地
城山古狸庵
指輪をこん前見せっ最早離婚
(指輪を こん前見せっ もへわかれ)
(唱)替えをば嵌めっ誤魔化せっ
(唱)(かえをば嵌めっ ごまかせっ)
ついこの前は、結婚したのよと誇らしげにキラキラの大きな指輪を見せびらかしていたのに、昨日会ったら薬指の指輪が消えていました。可哀相に離婚したらしい。自慢の大きさだけ反発も大きくなります。よくあることを、さりげなく詠んでありますし、皮肉味が良く効いています。
人
清滝支部 鮫島爺児医
指輪を燃えた心ん証ししっ
(指輪を もえた心ん あかししっ)
(唱)確いすうち気を引っ締めっ
(唱)(しっかいすうち 気を引っ締めっ)
「燃えた」と、過去形になっていますので、多分結婚指輪か婚約指輪だろうと思います。若かった頃は、希望に燃えていました。豪華ではないが心が籠った指輪なのです。
見るたびに、あの頃の一途さを思い出して戒めにしています。
五客一席 川内つばめ
赤け糸も安し指輪じゃ効あ打たじ
(あけ糸も やし指輪じゃ しょあうたじ)
(唱)先が心配じゃち婚約か解消
(唱)(さっがせわじゃち こんやかいへん)
五客二席 上町支部 吉野なでしこ
記念にち貰ろた指輪財布ぜ入れっ
(記念にち もろた指輪 ふぜ入れっ)
(唱)お守い代い偶ん嵌めっ
(唱)(おまもいがわい まねけんはめっ)
五客三席 城山古狸庵
指輪んダイヤを自慢ん成上がい
(指輪ん ダイヤをぎらん ないあがい)
(唱)催促もせんて他人て見せたくっ
(唱)(せずっもせんて ひて見せたくっ)
五客四席 清滝支部 鮫島爺児医
指輪あ値切っちゃ駄目ち叱い売い子
(指輪あ ねぎっちゃぼっち がいうい子)
(唱)縁起が悪いち娘が説教
(唱)(縁起がわいち おごが説教)
五客五席 川内つばめ
子から孫高価け指輪は婆ん愛情
(子から孫 たけ指輪は ばんぼんの)
(唱)子孫代々我家ん絆
(唱)(しそん代々 わがやん絆)
秀 逸
上町支部 吉野なでしこ
指輪でささくれ指も気いならじ
(指輪で ささくれゆっも 気いならじ)
清滝支部 鮫島爺児医
円高で安し指輪を土産げ買っ
(円高で やし指輪を みやげこっ)
指輪を年中嵌めちょい優し女房
(指輪を ねんじゅ嵌めちょい 優しかか)
指輪で家が建とそな大てダイヤ
(指輪で 家がたとそな ふてダイヤ)
城山古狸庵
偽物ち知たじ指輪見せつけっ
(まげもんち したじゆっがね 見せつけっ)
指輪を買たこっも無か戦中派
(指輪を こたこっもなか 戦中派)
川内つばめ
婚約の指輪なんだ錆くろっ
(婚約の 指輪なんだ 錆くろっ)
作句教室 樋口 一風
今月は題が悪かったのか、難しかったようで、出題を反省しています。「指輪(いっがね)」または「指輪(ゆっがね)」は「指金(ゆびかね)」の転訛です。疑問になった振り仮名に、「指輪(いっがに)ゅ」と言う言葉がありました(私の勉強不足で遣っている地方があるかも分かりませんが)。
「指輪(いっがに)ゅ」は「指輪(いっがね)を」という意味ですが、もし振り仮名を付けるとしたら、「指輪(いっが)にゅ」が正しいと思います。でも響きが良くないような気もします。できれば「指輪(いっがね)を」と表現していただければと思います。例えば、松葉蟹を「松葉蟹(まっばが)にゅ」では字を見たらわかりますが、聞いただけでは理解できないような気もします。「指輪(いっがね)に」のときは「指輪(いっが)ね」とか「指輪(いっがね)い」と振ります。
参考句
指輪も呉れじ二十年使こたくっ
(いっがねも くれじにじゅねん つこたくっ)
黒 柱
指輪を亭主し投げつけた別れ騒動
(いっがねを てし投げつけた 別れそど)
牛 骨
薩摩郷句鑑賞 91
惚けでたや女房が実印ぬば取い上げっ
(ぼけでたや かかがはんぬば 取いやげっ)
鹿児山愛晩亭
うっかり友人の保証人になったばかりに、サラ金に追いかけられたり、中には一家破滅というひどい目にあった人も少なくない世の中である。
そんなことにでもなったら大へんなので、まだ惚けてはいないんだろうが、物忘れをしたり、いわゆる「ぼやしゅなった」主人に、うかうか実印を持たしておけない気になるのも、うなずける話である。
近所つれすったい堪さん管巻亭主
(近所つれ すったいのさん じじらとと)
藤崎 政男
酒に酔って、くどくどしゃべることが「管を巻く」ことだが、鹿児島でいう「じじら」というのは、いわゆる「山芋を掘る」(酒乱)一歩手前の状態といったほうがよかろう。
酒を飲めば「じじら」を言うので、隣近所に評判が悪いのである。家族にしてみれば、ほんとに恥ずかしくて、肩身の狭い思いをしているに違いない。
こんな人にかぎって、飲まない時は仏のようなひとがいるものである。まさに「酒は楽しく飲むべかりけり」であろう。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎7 号
題 吟 「 突然(ひょかっ)」
締 切 平成28年6月6日(月)
◎8 号
題 吟 「 花火(ひゃなっ)」
締 切 平成28年7月5日(火)
◇選 者 樋口 一風
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◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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