天
紫南支部 二軒茶屋電停
偏屈が逝た親父ん置土産
(偏屈が はっちたととん おっみやげ)
(唱)血筋じゃっでち子も輪をかけっ
(唱)(ちすっじゃっでち 子もわをかけっ)
偏屈の置き土産には驚きました。
血筋は争えないもので息子にも偏屈の血は脈々と流れています。多分自分でも偏屈者と自認しているのでしょうから、この句のポイントは置土産です。まさに意表を突かれました、いま流行のびっくりポンです。
薩摩郷句はこうでないといけません。
穿ちの句とでも言いましょうか、なるほどと膝を叩かせる、ユーモアのある句に出会いました。
地
城山古狸庵
偏屈者が居らじ弾んだ郷中ん寄合
(へんこっが 居らじはずんだ ごじゅんよい)
(唱)面白と可笑しゅ冗談どん言っ
(唱)(おもしとおかしゅ わやっどんゆっ)
そうです。集落に偏屈者(へんこっ)が一人や二人いるものです。まとまった話にさえも文句を言う人がいます。その人が欠席した会はスムーズに進行できます。
何気ない日常の風景を良くまとめてあります。句の流れが良いです。
原句は部落寄合になっていました。私たちは昔そう呼んでいましたが、現在は差別用語とみなされていますので使えません。薩摩郷句では町内や集落の事を古い言葉ですが、まだ郷中(ごじゅ)と表現しています。
題は「偏屈(へんこっ)」ですが、偏屈な人の事も「へんこっ」がと言います。人の事を言う時には「偏屈者(へんこっもん)」「偏屈者(へんこっ)」と者を付けた方が良いと思います。
人
清滝支部 鮫島爺児医
偏屈爺機嫌の悪い時か焼酎が効っ
(へんこっじ ごっのわいとか しょちゅがきっ)
(唱)そいが目当てで横ごをば言っ
(唱)(そいが目当てで よんごをばゆっ)
「まあまあそげん言わじ一杯(いっぺ)どうぞ」と、ご機嫌の悪い偏屈者(へんこっ)を奥様は搦め手から攻めます。焼酎好きは弱点をしっかりと握られています。横(よん)ごを言うと焼酎が飲めるので案外常習犯かも。面白い句です。
五客一席 上町支部 吉野なでしこ
初孫い偏屈爺もでれっなっ
(はっまごい へんこっじじも でれっなっ)
(唱)なんちゃならん良か恵比寿顔
(唱)(なんちゃならん よかえべすづら)
五客二席 川内つばめ
寒みとこいアイスを食もっ偏屈児
(さみとこい アイスをたもっ へんこっご)
(唱)震るながらでん御代わゆばしっ
(唱)(ふるながらでん おかわゆばしっ)
五客三席 清滝支部 鮫島爺児医
偏屈者も女房ん前でな真面めなっ
(へんこっも かかん前でな まとめなっ)
(唱)惚れた弱味で頭が上がらんじ
(唱)(ほれたよわんで ずがあがらんじ)
五客四席 城山古狸庵
医報をば後とから見っ郷句をば読ん
(医報をば うしとから見っ くをばよん)
(唱)今月ちゃ天ち凄ぜ期待ゆしっ
(唱)(こんげちゃ天ち わぜきたゆしっ
五客五席 上町支部 吉野なでしこ
偏屈も度が過ぎたかち少った後悔
(偏屈も 度が過ぎたかち ちったくけ)
(唱)分かっちゃおいが直しもならじ
(唱)(分かっちゃおいが なおしもならじ)
秀 逸
上町支部 吉野なでしこ
偏屈じゃ好っな食物も手も付けじ
(偏屈じゃ すっなくもんも 手も付けじ)
清滝支部 鮫島爺児医
偏屈な北も中国き笑顔で寄っ
(偏屈な 北もちゅうごき えごでよっ)
偏屈爺孫ん守いしな優しなっ
(偏屈じ 孫んもいしな やさしなっ)
城山古狸庵
偏屈が書た字はまこて多か角
(偏屈が けた字はまこて うわかかど)
川内つばめ
叱られてん言こちゃ聞かせん偏屈児
(がられてん ゆこちゃきかせん 偏屈ご)
薩摩郷句鑑賞 89
警察のボールペンにも紐が付っ
(けいさっの ボールペンにも よまがちっ)
山田 案山
役所だとか、銀行や郵便局などの窓口に、筆記用具を忘れたお客さんのために、えんぴつだの、ボールペンだのが置いてある。借りる方も別にそんなものを盗む気はないのだろうが、用が済むと自分のポケットに入れてしまう人がいて、いつの間にか無くなるのだろう。ひもを付けたものを、事実よく見かけるものである。
ところが警察署に置いてあるものさえ、いつの間になくなるのか、ひもが付いていると言うのである。警察であるところが滑稽。
税相談優しゅ言どん引ちゃくれじ
(ぜいそだん やさしゅゆどん ひちゃくれじ)
中原 天狗
来年度のサラリーマンの平均納税額は、一万六千円も増えて、戦後最高額になると言う。大幅減税を求める声が一段と高まることであろう。
ところで今日から、六十年度の所得確定申告の受付が始まるが、この句は、税務署に相談に行った時の事を詠んだもの。「優しく説明はしてくれるけれども、減額はしてくれなかった」という所が穿っている。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎4 号
題 吟 「ランドセル 」
締 切 平成28年3月5日(土)
◎5 号
題 吟 「指輪(いっがね)」
締 切 平成28年4月5日(火)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
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