天
清滝支部 鮫島爺児医
賽銭な音がせんとに神みゃ笑るっ
(さいせんな 音がせんとに かみゃわるっ)
(唱)願げを聞っとい分け隔てなし
(唱)(ねげをきっとい 分け隔てなし)
初詣、合格祈願、七五三をはじめとして、健康、恋、商売繁昌など、物事の成就を願い、人々は神社に参詣します。
神様に「どうか願いを叶えてください」と供える賽銭は、大抵賽銭箱で音がする硬貨を投げ入れますが、中には札の人もいます。そんなお札に、神様もにんまりしたと捉えていて滑稽です。
地
城山古狸庵
宿題に親父が真っ先き音を上げっ
(宿題に ととがまっさき ねを上げっ)
(唱)親ん目面かこら丸潰れ
(唱)(親んめんぼか こら丸潰れ)
進んで復習や予習をやれれば、宿題も必要ないのでしょうが、勉強の習慣を付けさせる意味もある宿題は、やらされる感があって、嫌われているようです。
宿題の中には難しい問題もあったりして、親に尋ねる時もありますが、その頼りの親が、頼りなかったという真実味の面白い句です。
人
上町支部 吉野なでしこ
午前様音を立てめちそっ歩っ
(ごぜんさあ 音をたてめち そっあるっ)
(唱)寝床ん女房は寝付ちゃおらん態
(唱)(寝床んかかは ねちちゃおらんふ)
楽しい酒を飲みながら、二次会三次会と続き、時間を忘れてとうとう帰宅が午前零時を過ぎてしまいました。
皆と別れた帰路では、遅くなってしまったという自覚から、酔いも半分は醒めてしまいましたが、幸い家族は先に寝ています。家族を起こさないようにと、気遣っている様子が目に浮かんでくる句です。
五客一席 城山古狸庵
目覚しん音て立腹けたかほい投げっ
(めざましん おてはらけたか ほい投げっ)
(唱)壊せっまたも買い替えじゃろか
(唱)(こわせっまたも 買い替えじゃろか)
五客二席 清滝支部 鮫島爺児医
太鼓三味線の良か音て乗って踊いでっ
(てこしゃんの よかおて乗って おどいでっ)
(唱)好っで勝手い動っ手と足
(唱)(すっで勝手い いごっ手と足)
五客三席 印南 本作
空腹が長す待っちょったドアん音
(すっばらが さすまっちょった ドアん音)
(唱)早よ飯す食せちやれ纏付っきっ
(唱)(はよめすくわせち やれめちっきっ)
五客四席 霧島 木林
雷ん音よっか凄げ爺の鼾
(かんなれん 音よっかすげ じのいびっ)
(唱)ギネスブックい載いかもしれん
(唱)(ギネスブックい のいかもしれん)
五客五席 川内つばめ
腹ん虫音をば立てっ飯しょ催促っ
(腹ん虫 音をばたてっ めしょせずっ)
(唱)我慢ぬせえち言てん聞かせん
(唱)(我慢ぬせえち ゆてんきかせん)
秀 逸
川内つばめ
いっの間い春を呼んじょい風ん音
(いっのまい 春をよんじょい 風ん音)
ぐつぐつち滾った鍋で温まっ
(ぐつぐつち たぎった鍋で あったまっ)
暗れ部屋ん携帯の音てビクッしっ
(くれ部屋ん ケータイのおて ビクッしっ)
上町支部 吉野なでしこ
子守歌親もつん眠いよか音色
(こもいうた 親もつんねい よか音色)
午前様夜中い響たドアん音
(ごぜんさあ 夜中いひびた ドアん音)
清滝支部 鮫島爺児医
大て鼾音が消えたや心配を焼っ
(ふていびっ 音が消えたや せわをえっ)
風鈴の音で暑さが飛で逃げっ
(風鈴の 音でぬっさが つでにげっ)
霧島 木林
配達の音で早朝あ目が覚めっ
(はいたっの 音でそうちょあ 目がさめっ)
若者が音を吹かせっ走い去っ
(わけもんが 音をふかせっ 走いさっ)
印南 本作
ワンルーム時計の音がやれ響っ
(ワンルーム 時計の音が やれひびっ)
雪国に春の足音待っ遠し
(ゆっぐんに はいの足音 まっどおし)
城山古狸庵
そん音じゃ調子が合わじやい直し
(そん音じゃ おだめがおわじ やい直し)
紫南支部 二軒茶屋電停
何もけん春ん足音待っわびっ
(ないもけん 春ん足音 まっわびっ)
薩摩郷句鑑賞 84
枕元てうつらうつらん看病疲れ
(まくらもて うつらうつらん かんびょだれ)
有川 武則
身内の者が大手術でもしたのか、たいへん重い病気で寝ていて、昼夜分かたぬ看病が続いたのであろう。気苦労もあろうし、睡眠不足もあって、くたくたに疲れてしまったのである。
ようやく小康状態を保つようになると、ほっとして、つい枕元でうつらうつらしながら、病人を見守っているのである。真実味あふれる句。
役く負るで女房を行かせた郷中ん寄合
(やくかるで かかをいかせた ごじゅんよい)
盛満 椒平
年度末になると、地区のいろいろな役員の改選が行われる。ところが、こうした役員というのは、ほとんど無料奉仕か、それに近いうえに、会合等が多いせいもあって、なかなかなり手がないらしい。
この句、うかうか郷中の会合に出て行くと、役員を推しつけられそうだから、奥さんを出席させるという手を使ったわけである。
名物の木市ちゃ春風てのっ来っ
(めいぶっの きいちゃはいかぜ てのっきっ)
鎌田お六櫛
恒例の春の木市が始まる頃になると、甲突河畔の柳がみずみずしい芽を吹いて春の訪れを知らせてくれる。春光にぬれながら、苗木や草花の店をのぞいて歩くのも楽しいし、金魚を入れたビニール袋をぶら下げた子どもさんの軽やかな足どりにも、綿菓子の匂いにも、躍動する春を感じるものである。
甲突川の堤防を桜の名所にしようという計画もあるようなので、何年後かには、この木市が桜の下で開かれるようになることであろう。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎5 号
題 吟 「 無料(ただ)」
締 切 平成27年4月6日(月)
◎6 号
題 吟 「 加勢(かせ)」
締 切 平成27年5月7日(木)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
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