天
清滝支部 鮫島爺児医
噂をば鵜呑んで語っ作い罪
(噂をば 鵜呑んでかたっ つくいつん)
(唱)つまらん話しゃ他人て言わんこっ
(唱)(つまらんはなしゃ ひてゆわんこっ)
世間で言いふらされている明確でない話の「噂」は、聞きかじった話を、単に情報として伝えているにすぎませんが、次から次へと世間に広まっていきます。
中には、根も葉もない個人的な事情が噂となり、罪作りになることもあります。話の真偽をよく考えずに、鵜呑みにする無責任さを、なげいている句でしょう。
地
上町支部 小石 助六
バリウムも直き鵜呑んの食切れ亭主
(バリウムも いっき鵜呑んの えぎれてし)
(唱)妙な奴が来っ胃どま驚っ
(唱)(妙なとがきっ 胃どまたまがっ)
幸か不幸か、私はバリウムを飲んだ経験がないので、聞いた情報で想像します。人間ドックや胃の検査などでは、X線造影剤の硫酸バリウムを飲まされます。
検査の為に、朝から何も食べていない空っぽの胃で、あたかもその空腹を満たすかのように、バリウムを飲んでいると詠んでいて、郷句味が出されています。
人
紫南支部 二軒茶屋電停
おれおれん話しょ鵜呑んで大て目遭っ
(おれおれん はなしょ鵜呑んで ふてめおっ)
(唱)疑ごっ先ずは警察ち相談
(唱)(うたごっまずは けいさちそだん)
知能犯による詐欺ですが、後を絶ちません。先日も、テレビで再現VTRを見ましたが、実に巧妙です。
切羽詰まった電話に、信じて疑わない心理が災いして、被害を生んでいますが、まさに、話を鵜呑みにしています。このような卑劣な犯罪に巻き込まれないように、しっかりとした自己防衛が必要です。
五客一席 印南 本作
知恵袋鵜呑みしっせえ治い風邪
(知恵袋 ぐのみしっせえ なおい風邪)
(唱)病院嫌れにゃそら頼いなっ
(唱)(病院ぎれにゃ そらたよいなっ)
五客二席 城山古狸庵
熱か料理外て出しゃならじ鵜呑みしっ
(あつかじゅい そてだしゃならじ ぐのみしっ)
(唱)何事かよちヒーヒ言た喉
(唱)(ないごっかよち ヒーヒゆた喉)
五客三席 紫南支部 紫原ぢごろ
わんこそば味じゃ二の次で鵜呑みしっ
(わんこそば あじゃにのつっで ぐのみしっ)
(唱)忙すしこいじゃ早食い競争
(唱)(せわすしこいじゃ 早食いきょうそ)
五客四席 上町支部 小石 助六
食ごちゃ無が鵜呑んで旨めち新妻ん料理
(くごちゃねが 鵜呑んでうめち よめんじゅい)
(唱)優し気遣や模範亭主じゃっ
(唱)(やさしきづかや 模範てしじゃっ)
五客五席 清滝支部 鮫島爺児医
仲人は鵜呑みすい如っ上手し語っ
(なかだっは ぐのみすいごっ じょしかたっ)
(唱)聞いちょい衆かあほうほうち声
(唱)(きいちょいしかあ ほうほうち声)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
良か料理も噛まじ鵜呑んじゃ逃ぐい味
(よかじゅいも かまじ鵜呑んじゃ にぐいあっ)
オレオレを鵜呑んにすっで嵌い罠
(オレオレを 鵜呑んにすっで うたいわな)
儲け話しゃ鵜呑んにすっと怪我ん源
(もけばなしゃ 鵜呑んにすっと 怪我んもと)
城山古狸庵
鵜呑みした鮎を吐っ出す可哀相か鵜
(ぐのみした 鮎をはっだす ぐらしかう)
鵜呑みしっ誇大広告き騙されっ
(ぐのみしっ 誇大こうこき 騙されっ)
紫南支部 紫原ぢごろ
あと一っ残った饅頭鵜呑みしっ
(あとひとっ 残ったまんじゅ ぐのみしっ)
おれおれを鵜呑み信じっ騙されっ
(おれおれを ぐのみしんじっ 騙されっ)
川内つばめ
鵜呑みした大袈裟チラし騙されっ
(ぐのみした 大袈裟チラし 騙されっ)
よかぶいが他人ん言う事つ鵜呑みしっ
(よかぶいが ひとん言うこつ ぐのみしっ)
薩摩郷句鑑賞 76
毛虫騒動い茶摘ん手籠どま踏ん潰えっ
(ほじょそどい ちゃつんてごどま ふんくえっ)
倉元 天鶴
きれいに刈り込まれた茶畑ではなく、畑の土手あたりに、垣のように植えてあって、俗に「茶園やぼ」と言われるようなところの茶摘みであろう。
ちょうど八十八夜ごろは、毛虫が群れをなしていることがあって、うっかり手でもやろうことなら、かぶれる人は全身やられてしまう。かゆくてたまらないし、気持ちの悪いものである。
多分、毛虫にかぶれる人が、悲鳴をあげて逃げる時、茶摘ん手籠も踏み潰してしまったものと思われる。本人は必死だろうが、傍目には滑稽。
草籠ん底け筍は息く殺れっ
(くさてごん そけたけんこは いくこれっ)
福園 東風
「草篭」を「草切い篭」ともいうが、直径六十センチばかりの荒目の篭である。今では、もうこういう篭も使われないかも知れないが、束ねるほどの長さになっていない今ごろのやわらかい草を刈って入れたものである。
ちょうど布袋竹(こさんだけ)の筍の出る時期だから、多分よその筍を何本か失敬して、草篭の底に隠しているのであろう。筍が息を殺しているという表現によって、良心にとがめられている人の様子が、うまくとらえられている。
見舞籠い美事て産毛ん走い枇杷
(みめてごい みごてうぶげん 走いびわ)
実方 天声
桜島あたりでは、もうこの前から枇杷の出荷が始まっているようであるが、普通の土地では、暖かい地方でようやく色づき始めるころである。
ところで、病気見舞いに果物を持って訪ねてきたわけだが、その篭の中に、走りの枇杷が入っていたのである。もぎたての新しい枇杷の様子が、「美事て産毛」という言葉でうまく表現されている。走りだという珍しさと、いかにも新鮮な感じの枇杷に、病人も、食べたいという気を起こしたであろうことも想像できる。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎7 号
題 吟「可哀想し(ぐらし)」
締 切 平成26年6月5日(木) ◎8 号
題 吟 「 痛て(いて)」
締 切 平成26年7月5日(土)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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