鹿市医郷壇

兼題「頑張っ(きばっ)」


(414) 永徳 天真 選




紫南支部 二軒茶屋電停

満開の桜頑張った受験生
(満開の 桜頑張った 受験生)

(唱)家族中い笑れが久振い出っ
(唱)(けねじゅいわれが さしかぶいでっ)

 入試の前は、受験生はもちろん、家族も気は漫ろです。皆合格をさせてやりたいですが、そうもいかず、合格発表の結果次第で悲喜こもごもです。
 実力だけではなく、運も左右する合否の判定ですが、頑張って合格した受験生を、満開の桜も祝福してくれている、喜びにあふれた句です。




清滝支部 鮫島爺児医

頑張れよち監督の活ち逆転打
(頑張れよち かんとっのかち 逆転打)

(唱)応援席も飛ん上がっ沸っ
(唱)(おうえんせっも とんびゃがっうぇっ)

 野球やソフトボールの試合で、相手にリードを許したまま、いよいよ回も押し迫り、九回裏二死の場面です。
 バッターボックスに向かう選手を、監督が呼び止め、気合いの注入です。その絶妙の声掛けに奮起した選手は、ボールに集中することができて逆転打が出ました。ドラマチックな勝利の句です。




 城山古狸庵

頑張ってん俺が偏差値ちゃ医者あ無理
(頑張ってん おいがへんさちゃ 医者あむい)

(唱)済まんが親ん期待ゆ裏切っ
(唱)(すまんが親ん きたゆ裏切っ)

 学力の判定水準となる偏差値は、うむを言わさない揺るぎないものです。この偏差値を元に、志望校も絞られ、受験の前にはすでに見通しが立てられています。
 今の実力では、目標だった医学部の合格は無理だと、数値が教えてくれているので、潔く諦めて、方向転換をする決断の時でしょう。現実味のある句です。


 五客一席 上町支部 小石 助六

痛て注射妹の手前やれ我慢っ
(いて注射 いもっの手前 やれきばっ)

(唱)泣こごちゃっどん兄んプライド
(唱)(なこごちゃっどん あにょんプライド)


 五客二席 上町支部 吉野なでしこ

苦げ薬孫い言われっ頑張っ飲ん
(にげくすい 孫いいわれっ 頑張っのん)

(唱)気が利た孫が飲んだかチェック
(唱)(気がきた孫が のんだかチェック)


 五客三席 清滝支部 鮫島爺児医

我が仕事つ頑張った結果今があっ
(わがしごつ 頑張った結果 今があっ)

(唱)支えた丈夫な五体いも感謝
(唱)(支えたじょっな ごていも感謝)


 五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ

平生も無頑張った作業で腰すば損傷っ
(かねっもね 頑張ったさぎょで こすばやっ)

(唱)まだ若けつもい じゃったが間違げ
(唱)(まだわけつもい じゃったがまっげ)


 五客五席 印南 本作

あと少と頑張って出来た逆上がい
(あとちっと 頑張ってでけた さかあがい)

(唱)汗を拭ぐ拭ぐにっこい笑るっ
(唱)(汗をぬぐぬぐ にっこいわるっ)


   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

寒稽古頑張った子達ち温ち雑煮
(寒稽古 頑張ったこたち あちぞうに)


受験生今頑張らんにゃ後じゃ後悔
(受験生 今頑張らんにゃ 後じゃくけ)


賞を狙ろっ頑張らにゃ郷句上手もならじ
(しょをねろっ 頑張らにゃ郷句 うもならじ)


上町支部 吉野なでしこ

試験前気合ゆば入れっ頑張い方
(試験前 きあゆばいれっ 頑張いかた)


検査前酒も飲まんじ我慢っちょっ
(検査前 酒ものまんじ きばっちょっ)


紫南支部 紫原ぢごろ

宝籤気張っ買たどん又も夢
(たからくし きばっこたどん 又も夢)


筋じゃろか頑張った割にゃ上手もならじ
(すっじゃろか 頑張ったわいにゃ うもならじ)


 城山古狸庵

頑張ったで逝かせっくれち爺は拝ん
(頑張ったで いかせっくれち じは拝ん)


上町支部 小石 助六

大霜いも前垂れ一枚で我慢い地蔵
(うじもいも めだれいっめで きばいじぞ)


市立病院支部 甲突五差路

飲んじゃ食っ頑張らん正月肥ゆい放題
(のんじゃくっ 頑張らんしょがっ こゆいほで)


 川内つばめ

スタンドん頑張れち声が生んゴール
(スタンドん 頑張れち声が うんゴール)


 作句教室
 共通語に「気張(きば)る」ということばがあり、その意味は、@息をつめて力を入れる。いきむ。「―って荷を持ち上げる」A気力を奮い起こす。いきごむ。「―って仕事に取り組む」B格好をつけて見えをはる。また気前よく金銭を出す。「―って高級品を買う」「祝儀を―る」とあります。
 方言では、「きばっ」であり、その意味は、頑張る、辛抱する、我慢する、力むとあります。この「きばっ」の漢字の表記は、「頑張(きば)っ」「我慢(きば)っ」「気張(きば)っ」などのように当て字も含めて、その意味の違いによって使い分けを行っています。
 今回の兼題は、「頑張(きば)っ」でしたが、句の内容からして、他の漢字の方が適切ではないかと思う作品もありましたので、その漢字に直して掲載しています。


 薩摩郷句鑑賞 74

願われっ嫁て牛ん如っ使われっ
(ねごわれっ きてべぶんごっ つこわれっ)
                  岩崎美知代

 結婚する前は、仕事なんかなんにもさせないで、床の間にでも飾っておきそうな口説き方をしたのであろう。結局拝み倒されて結婚をしたら、全く話が違ったというわけである。このごろ農村でも牛や馬を田畑で使っているのは、ほとんど見られなくなったが、まるで役牛のようにこき使われるという比喩がきいている。


春木市病妻け贈い花ね迷っ
(はいきいっ やんめかけやい はねまよっ)
                  長井 春江

 春の木市が始まる頃になると、やはり春がきたなという感じがしてくる。
 花木や果樹の苗を見てまわったり、小鳥屋をのぞいたりしたあげく、病気で寝ている奥さんのために、草花を買ったのである。なんの花を買ったかは分からないが、ほのぼのとした真実味のある句。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋

薩 摩 郷 句 募 集

◎5 号
 題 吟「鵜呑ん(ぐのん)」
 締 切 平成26年4月5日(土)
◎6 号
 題 吟「傘(かさ)」
 締 切 平成26年5月7日(水)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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