=== 随筆・その他 ===
柳の下に二匹目の鰌(どじょう)はいなかった
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南区・谷山支部
(東開内科クリニック) 植松 俊昭
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かつて当時の首相であった小泉純一郎氏は,郵政民営化をシングルイシュー(単一争点)に掲げて衆院選で圧勝したことは,記憶に新しい。
今回の東京都知事選でも,夢よもう一度と,「原発ゼロ」を錦の御旗に,細川護熙元首相を担ぎ出し奮闘したが,その熱意は届かず敗退した。しかも細川氏の得票は95万票にとどまり,初当選した舛添要一元厚生労働大臣とはダブルスコアの大差で3位の惨敗だった。
いわゆる「小泉神話」は崩壊した。やはり柳の下には二匹目の鰌はいなかった。世の中そんなに甘いものではなかったようだ。
都民の切実な関心は「原発などのエネルギー問題」よりもっぱら,「医療や福祉」「景気や雇用」など,より生活に密着した問題であり,その民意とのズレがあったことが事前に読めなかったように思われる。政治家にも時代の流れ,空気を読む鋭敏なセンスが求められようが,両氏にはそれが欠けていたのかもしれない。故山本七平の名著 『「空気」の研究』(文春文庫)をじっくりお読みになったらよかったろうに。もはやご両人は過去の人なのだろう。
都知事選以降,両氏の脱原発活動は杳ようとして聞こえて来ない。
少なくとも都民の見識,民度が地についており,しかも高かったとは言えないだろうか。
このたびの選挙結果から,遠い日に口ずさんだ井上陽水の「傘がない」をはからずも想起してしまった。曰く
作詞 井上陽水
作曲 井上陽水
唄 井上陽水
都会では自殺する若者が増えている
今朝来た新聞の片隅に書いていた
だけども問題は今日の雨 傘がない……
テレビでは我が国の将来の問題を
誰かが深刻な顔をしてしゃべってる
だけども問題は今日の雨 傘がない……

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