傘寿新春に祈る：2013年の東北災害地歴訪，広州老朋友親書等雑感
| 東区・荒田支部 （肥後クリニック） 有馬 榮德 |
平成26年新春の輝かしい門出と平和を祈りつつ80歳の筆者の近況と雑感を述べます。
東日本大震災津波・原発災害復興と予想される大災害への対策，尖閣諸島問題等での一衣帯水の中国との不和状態等の早い回復を祈るのみです。
Ⅰ.東日本大震災大津波地巡礼と追悼鎮魂の祈り
1．大震災・大津波の爪痕点描：石巻・仙台
鹿児島大学病院定年退官の1998年4月から岩手県の民間病院，老健などに副院長・施設長として3年ほど勤務。滞在期間中に東北大災害のほとんどの地域を訪れていた筆者は津波発生当日，2011年3月11日夕刻，震源地から千数百キロ離れた鹿児島県の太平洋岸，宮崎県境の志布志市夏井海岸岸壁上の老人病院（100床・副院長）の3階のベランダから志布志港で潮位1m10cm高の津波が北側の夏井港にも波しぶきを立てる瞬間（16時20分頃）を目撃していました。当時志布志市の海岸寄りの国道は通行止めで，家路を急ぐ病院職員は山側に迂回。この時点からテレビなどで津波や火災等の被害の生々しい報道を見聞きしていましたが，今回，2年数カ月ぶりに東北大津波震災の現地を2回訪問。初めて災害の重大さを肌で感じることができ，現地で鎮魂の祈りを捧げることができました。
1）石巻市：かつての飲み屋街が海底に
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| 写真1上：最近のJR仙石線石巻駅正面風景 下：旧大川小学校周辺の水田，集落が あった場所。広い範囲で海面下に 沈んでいます。 |
2）福島から岩手県陸前高田市一本松巡礼
2013年9月4-7日，福島県二本松市の岳（だけ）温泉（あづま館）での日本温泉科学会第66回大会出席。2年半前，この山奥の公民館などにも大津波被災者が震災直後から大勢収容されたとのこと。福島は筆者が1954年医学部専門1年の夏休みに福島県立医科大学主管の第1回全日本医学生サマーキャンプ・裏磐梯国立公園に参加，全国から百余名の男女医学生が参集，磐梯山登頂，五色沼湖畔テント村のビア樽型宿所に分宿してキャンプファイヤー，フォークダンス，地元医学生の鉢巻・袴姿での少年白虎隊歌の合唱，昼は桧原湖遊覧船，五色沼でのボート遊び，野口英世記念館参観など青春の思い出多い土地。59年後，その福島で今回は大地震・津波・原発事故災害の爪痕を確かめ，鎮魂の祈りを捧げる旅となりました。
2．岩手県陸前高田市一本松慰問訪問
福島の温泉科学会に引き続き岩手のもう一つの会議，温泉学会の創立10周年記念大会（岩手駅隣のマリオスから移動雫石温泉森の風・ホテル鶯宿泊 9月6-8日）に出席。国際シンポジウム「東アジアの温泉文化」ではパネリスト，討論者など中国，台湾，韓国からも数人の参加があり，さらに，ホテル鶯宿の懇親会には中国から男性3，女性2の5人の参加もあって筆者が1983年以来昨年まで西は烏魯木斉から東北地方，南は雲南に至る中国各地を25回学術訪問，広州市解放軍第一軍医大学（現南方医科大学）の組織胚胎学，電子顕微鏡室や東北，錦州医学院の肝胆外科の客員（座）教授に招聘されていたこと等を披露して交友を深めることができました。最終日9月8日午前の特別報告，岩手大学松岡勝美教授の「陸前高田市の被災状況と復興に向けた取り組み」，東野市長本田敏秋氏の「東野市の後方支援活動」など“一本松巡礼”の‘予備知識’を興味深く拝聴して閉会。お昼前には学会主催の“陸前高田市復興応援ツアー”の大型バスに乗車。東野市，気仙川沿線を経由，大津波で真ん中でちぎれたJRの鉄橋に祈りを捧げ，さらにJRの旧駅がバス停に，旧JR線路がバス道路に変身した竹駒駅・国道をたどり，大津波ですべて波にさらわれ敷石のみが残った陸前高田市の旧市街地や港を巡礼黙祷。ふと，筆者ら戦中派の頭にこびりついている終戦前の空爆のあとの廃墟，68年前少年時代に体験した母校，旧制加治木中学校と周囲の空爆後の焼け跡，さらに鹿児島市内が大空襲後焦土と化した焼け跡にぽつんとそびえる山形屋百貨店の高い外壁の残骸等々。
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| 写真2 陸前高田市の奇跡の一本松 （枯死後加工修復）。 モニュメントとして立ちつづけます。 |
3．姶良カルデラ・若尊海底火山・桜島巨大噴火・津波災害への備えは
この機会に私どもは郷里，特に桜島，姶良カルデラの若尊（わかたか）海底火山の存在（福山に近い海底火山十数カ所の海底噴火口からの熱湯で魚の死体が上がることもある。海上保安庁などが平成初期から調査中）。特に現在の南岳，昭和火口などの頻回の噴火で思いだすのは，昭和29（1954）年，筆者が医学生時代，仲間とともに北岳の擂り鉢状で平らな火口底の草野球もできるようなスペースに降りて持参したバレーボールで球技を楽しんだこと。そしてその1年後の昭和30年10月13日に昭和21年以来の南岳大爆発で北岳との中間の尾根，中岳にテントを張っていた鹿児島大学生グループの一人が火山弾で死亡，8人が負傷しています。その北岳の擂り鉢は最近の航空写真映像で見ると，東側の両火口から吹き出した火山岩，瓦礫，降灰などで埋め尽くされ，大きなひだが見られ，火口壁の一部からあふれ出ているような感じです。
ともかく，現在活動中の南岳とその東中腹にできた昭和火口の二つの噴火口と福山町沖若尊海底火山の十数個の火口群がいつ巨大爆発を起こすか，併せて津波をも発生する危険が当然予想されます（過去にも津波の記録あり）。とくに鹿児島市医師会病院や県庁を含む海岸近接地域，与次郎一帯から天保山，北埠頭にかけては，特別な避難訓練，避難設備設置など，さらに鹿児島湾・姶良カルデラ，霧島連山領域など広域の，万全の対策を今から講じておくべきではないでしょうか。東日本大震災大津波で毎年避難訓練を実施してきた小学校とそうでなかった学校とで遭難者数に著名な差があったことが得難い教訓といえます。十数年前，筆者の岩手県水沢市滞在中，岩手山の噴火活動が盛んでしたが，同山麓の防災避難訓練が広域で頻繁に実施されていました。現況では鹿児島湾岸の桜島山麓以外はまだ対策が遅れているのではと危惧している今日この頃です。ただいま鹿児島市医師会病院入口2階の人間ドック診察室で嘱託医の一人として週4回午後，受検者の診察・判定・説明などのお手伝いをしている医師の一人として特に強く感じております。
Ⅱ．わたしの中国との民間交流：朴名誉教授ほか
最近の日中関係はあまり良くないように見えますが，民間の交流は良好に保っていくべきと考えます。前述の温泉学会の国際シンポジウムで来日した中国のシンポジストなど男女5人は皆さんフランクで好感が持てましたし，今回の記念シンポジウムは地道な日中友好のためにも大成功でした。
わたしの訪中は1983年の天津での国際小児外科シンポジウム参加が最初。ちなみに天津は亡父有馬勇二郎が八路軍軍医に留用された終戦の1945年から1952年までの最後の3年間を天津第一軍医大学外科講師として教鞭・メスをとった場所であり，その跡地の当時解放軍糧秣庫も見ることができました。そして一昨年，私の30年来の老朋友でもある現北京小児病院院長で小児外科名誉教授（93歳）の張 金哲先生は，亡父が外科講師をしていた同じ天津の軍病院で同時期に外科のレジデントであったと話してくれました。わたし自身，1983年から一昨年6月上海での太平洋小児外科学会まで29年間の25回の学術訪中，消化器外科，小児外科，同手術執刀供覧，同映画，ビデオ供覧，医学講演，国際会議，中国内医学会議，
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| 写真3上：広州朴先生からのFax。 下：南方医科大学の朴名誉教授 （左2人目）や現スタッフと（同大学電子 顕微鏡室と学内酒店で）。 |
これからも日中関係はまず民間交流，医学交流などで辛抱強く続けていきたいものです。近い将来良好な明るい両国関係が取り戻せることを期待しています。
《参考資料》
1．「戦争の記憶 問われているのは何か」文教図書出版（株）2004年刊。
2．「大津波震災地に祈る：仙台・石巻，福島，岩手・一本松歴訪」 九州大学麻酔科・蘇生学教室同門会報 第24号，2013年11月。
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