天
清滝支部 鮫島爺児医
長げ手術時計ゆ見い見い心配な家族
(なげしゅじゅっ とけゆみいみい せわなけね)
(唱)大丈夫かよち険し顔れなっ
(唱)(だいじょっかよち けわしつれなっ)
おおよその手術の時間は、手術の前に知らされているので、手術が終わるのを待つ家族は、常に時計を見ています。
しかし、予定より五分、十分が過ぎても手術が終わらない場合は、時間を長く感じて、とても心配します。待つ身は、手術が無事に終わることを祈るのみですが、その様子がうまく詠まれています。
地
武岡 志郎
朝なんだ時計い早よせち下知つされっ
(朝なんだ とけいはよせち げつされっ)
(唱)そい輪をかくい母親ん大て声
(唱)(そい輪をかくい かかんふて声)
子どもたちは登校があり、大人は出勤がありますので、平日の朝は忙しいです。
交通手段はそれぞれですが、遅刻をしないように、家を出る時間はだいたい決まっています。起きてからすることも決まっていますから、寝坊でもしたら大変です。急いでいる様子を、時計が指図しているかのように表現していて滑稽です。
人
川内つばめ
震災の記憶を刻ん掛け時計
(震災の 記憶をきざん 掛け時計)
(唱)多くの犠牲ゆ忘れちゃならん
(唱)(多くのぎせゆ 忘れちゃならん)
平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災も、来年で三年が経過します。
この間、国の支援や被災地の懸命な努力で、復興は徐々に進んでいますが、まだまだ回復には時間がかかりそうです。
あの時、針が止まったままの時計が、これからも歴史の証言者として、大震災を語り継いでくれるのでしょう。
五客一席 紫南支部 二軒茶屋電停
可能なら時計の針を戻したか
(でくいなら 時計のはいを 戻したか)
(唱)気持ちゃ分かいが大事なとは今
(唱)(きもちゃわかいが でしなとは今)
五客二席 城山古狸庵
金時計ゆ見すいが年中遅刻くしっ
(きんどけゆ みすいがねんじゅ ちこくしっ)
(唱)全で飾いで役きな立ちゃせじ
(唱)(まっでかざいで やきなたちゃせじ)
五客三席 紫南支部 紫原ぢごろ
安物も高級か時計も時刻か同等
(やすもんも たっか時計も とかひとっ)
(唱)じゃっどんそこは見映えが違ごっ
(唱)(じゃっどんそこは 見映えがちごっ)
五客四席 武岡 志郎
辛れ時も一緒ち我慢った腕時計
(つれとっも ひとちきばった 腕時計)
(唱)何時も側べ居っ全部知っちょっ
(唱)(いっもそべおっ ずるっしっちょっ)
五客五席 市立病院支部 甲突五差路
家ん時計どいもこいもが針や狂っ
(えん時計 どいもこいもが はやくるっ)
(唱)十分遅れじゃっとは承知
(唱)(じゅっぷんおくれ じゃっとは承知)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
多え時計仕事ちゃ同等でん値段にゃ大差
(うえ時計 しごちゃぐわいでん ねにゃたいさ)
鶏が時計ゆ馬鹿けしっ先き叫れっ
(にわといが とけゆばけしっ さきおれっ)
人様は時計が言ごっ寝て起きっ
(ひとさまは 時計がゆごっ 寝て起きっ)
武岡 志郎
舶来の時計じゃんどんまた遅刻
(はくらいの 時計じゃんどん またちこっ)
長話し時計ゆ見い見い相槌を打っ
(ながばなし とけゆ見い見い えはをうっ)
城山古狸庵
四時限目ぐうぐ鳴っでた腹時計
(四時限目 ぐうぐなっでた 腹時計)
耄碌したかけ死んだ時計ゆ腕ではめっ
(どもしたか け死んだとけゆ うではめっ)
紫南支部 宇宿ガサ医者
携帯が流行って売れん腕時計
(ケータイが はやって売れん 腕時計)
ロレックス見せびらかすっ嫌ん野郎
(ロレックス みせびらかすっ すかんわろ)
上町支部 小石 助六
寸足らずベルトと一緒腕時計
(寸足らず ベルトとおなし 腕時計)
腹時計誰じゃろかいち知らんふい
(腹時計 だいじゃろかいち しらんふい)
紫南支部 紫原ぢごろ
答案を時計ゆ見い見いやっと出っ
(答案を とけゆ見い見い やっとでっ)
市立病院支部 甲突五差路
腕時計電波ソーラー手間要らし
(腕時計 電波ソーラー 手間いらし)
印南 本作
腹時計今食終ったて直き鳴っ
(腹時計 いまくとったて いっきなっ)
薩摩郷句鑑賞 71
辞めたなら胡麻擂いからも歳暮は来じ
(やめたなら ごますいからも せぼはこじ)
長瀬 慶子
日ごろお世話になっている人々へ、感謝の気持ちをこめて届けるのがお歳暮。だとすれば、身分相応のものを選ぶのが礼儀というものだろう。
ところが、世の中では付届けが出世につながるらしく、門前列をなすところもあるらしい。でも、得にならないことはしないのが現代気質とでもいうか、退職すれば、もうお歳暮なんか届かなくなる。しかも、現職の時はしきりに胡麻を擂っていた人までが、見向きもしなくなるのである。皮肉のきいた句。
ボーナスも袋を出れば飛で行たっ
(ボーナスも 袋を出れば つでいたっ)
上畠 蟷螂
年末から年始にかけては、特に出費がかさむので、遣り繰りに四苦八苦。ボーナスを貰っても、羽がついたように飛んでいってしまうのだろう。しかし、ボーナスのない人々、いつ出るか見当もつかない人々に比べれば、すぐ飛び出すボーナスでも感謝すべきであろう。
名刺をば見てかい腰が低くしなっ
(名刺をば 見てかい腰が ひくしなっ)
村口 貴族
初めは横柄な態度で応対していた人が、相手の名刺を見たとたんに、急に腰が低くなって、態度ががらりと変わったのであろう。いかにもありそうなことで、その姿が滑稽であり、哀れである。
どうも世の中には、肩書を振りまわす人も案外多いし、また、その肩書に弱い人々も多いようである。この句はそういう世の中に対する皮肉であり、そういう人々に対する批判でもある。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎2 号
題 吟「 惜れ(あったれ)」
締 切 平成26年1月6日(月) ◎3 号
題 吟「頑張っ(きばっ)」
締 切 平成26年2月5日(水)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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