随筆・その他

リレー随筆

私の趣味について


中央区・市立病院支部
(鹿児島市立病院)   末吉 和宣

 今回,リレー随筆を書かせていただくにあたり,何をテーマに書こうかと悩んでおりましたら,ある先生から,『先生のあの趣味について書かれたらいかがですか』と勧められ,ちょっと地味な趣味なのでどうかなと思ったのですが,皆さんがどう思われるか心配ではありますが,思い切って私のその趣味について書かせていただこうと思います。
 性格的に飽きっぽい私が,学生時代より,もうかれこれ30年以上も続いている趣味があります。それは,『お寺めぐり』です。学生時代は,なかなか,県外に出ることがなくて,時々,家族旅行などで訪れたところで『お寺めぐり』はしていたのですが,医者になってから,この趣味にものすごくのめり込んでしまい,学会などで訪れる地で,時間を見つけては(時間がなくても),お寺や神社を観て回っております。東京,大阪,京都,福岡はもとより,色々な地方にたくさん神社仏閣はありますので,どこに行っても,非常に満足しております。
 訪れたお寺ではまず仏像をじーーーっと,あるいはぼーーーっと観て過ごしております。これがなかなか格好いいというか,ちょっと怖いぐらい迫力があるというか,なかなか見応えのある仏像から,小さくてかわいらしい仏像まで,様々な仏像があり,非常に興味深く,私にとっては子どもの頃にテレビで見たウルトラマンやマジンガーZのようなヒーローを観ているような感覚があります。また,うっすらと微笑むお顔や険しく眉間にシワをよせ怒っているようにもみえるお顔を見ると,こちらをじっと見つめられている感じもして,何もやましいこともないのに,思わずペコッと頭を下げて,小声で『すみません』とつぶやいている自分がいます。時には顔や腕がなくなっていたり,とんでもないのは半身がなくなっていたり,黒ずんだり,変色をしていたりと,仏像に様々な変化が見られ,仏像は何も語らずともその姿自身がとてもとても長い歴史を経て,壮絶な試練をかいくぐってきたことを物語っており証明していると思うと非常に感慨深いものがあります。おそらく,昔の人々も,これらの仏像を,長い長い歴史の中で,自らの願いを叶えてくれる救世主のように思い,一心に拝んでいたのではないのかなあと思ったりします。
 さて,仏像の中にはそれぞれの手に様々な独特の武器(持物)を持っており,『これはどんなふうに使って闘うんだろう?!』とか,『この手はこの後,どういうふうに動くのだろう?!』とか,『もしかして,歩き始めるのか?!いやいや,蹴りを繰り出すのか?!』とか,仏像が動かない分(当然ですが),自分で想像(妄想)したりして完全に自分の世界に没入してしまい,シーーーンと静まり返ったお堂の中で,ひとり,『おおーーーっ!!』とか,『すごいっ!!』とか,『かっこいいっ!!』とか,小声で叫んでおります。以前,いとうせいこう・みうらじゅんの『見仏記』という本に出会い,なかなかユニークなお寺参り・仏像鑑賞の楽しみ方を面白く書いていて,非常に共感したのを覚えております。
 また,お寺は仏像だけでなく,歴史的にも美術的にも非常に重要で見事な建物や風景,庭園などもあり,時間をかけて,ゆっくりと拝観・散策すれば,心を穏やかにでき,日頃のストレス解消に効果てき面であります。緑の映える竹林,苔むす庭,春先には梅・桜,初夏には紫陽花,夏は深緑,秋には紅葉,また冬には雪景色とすばらしい風景が見られるお寺も数多くあります。このような風景をお寺とともに写真に収めるのもまたお寺めぐりの楽しみの一つです。さらに鬱蒼とした森の中に佇むお堂は,仏像を隠す為の秘密基地のような趣もあり,きれいに整えられた庭園や池やお堂の壁面などは,もしかすると,『グィーーーン』とか,『ゴゴゴーーーッ』とか,音を立てて,地面や水面や壁面が上下左右に分かれて,中から『ドドーーーン』と巨大な仏像がせり上がってきて,発進っ!!・・・・・・とか,いやはや自分でも,もう手のつけられないほどのかなりの妄想状態に陥っております。
 ところで,お寺に行きますと必ず頂くものがあります。それは,『御朱印』です。自ら持参した『朱印帳(集印帳・納経帳)』にお寺の方がお寺の名前や梵字などを象った朱色の印を押して,さらにご本尊のお名前やお寺のお名前,参拝日などを墨書して下さったものです。それはそれは見事なもので,朱と黒のコントラストが絶妙で,きれいな絵のようで,ずっと見ていても見飽きない,私にとっては大事な大事な宝物でありお守りでもあります。今では,どこの学会に行く時も,肌身離さず『朱印帳(集印帳・納経帳)』は持ち歩いております。お寺によっては,『御朱印』を頂けないところもありますが,だいたいのところはお願いしてみますと,頂けるようです。また,一つのお寺の中で,複数の『御朱印』が頂けるところもありますし,お寺を再訪問したときに『御朱印』の書き手が替わっていたり,『御朱印』自体のデザインが変わっていたりして,新しい『御朱印』を頂けるということもあります。それから『御朱印』はお寺だけでなく,神社でも頂けます(写真1,2)。
写真 1 朱印帳(集印帳・納経帳)いろいろ

写真 2 御朱印いろいろ


 『御朱印は記念スタンプではありません』と注意書きのあるところもあり,失礼のないように私もまずはお寺のご本尊をちゃんとお参りした証として頂くように心がけております。お寺の納経所・御朱印所(御朱印を書いていただく場所)では,時には行列ができていたりしています。なかには『御朱印』をもらって,ニコッとガッツポーズをしている外国人の方を見かけることもありますし,これまた『御朱印』をゲットして『すっげーーっ!!』と騒いでいる小中学生もいたりして,なかなかの人気です。今,ネットでは,自分で神社仏閣を巡って頂いた『御朱印』をアップしているブログをよく見かけ,同じような趣味を持っている人がいっぱいいるんだなあとびっくりしてしまいます。
 また,お寺は本堂などでは写真撮影も禁止されているところがほとんどで,当然の事ながら仏像の写真を撮ることなんて不可能で,私にとってはヒーロー・アイドルも同然の仏像の写真をどうしてもゲットしたいので,お寺に売店があって,そこに仏像の写真,絵はがきなどでもあったら,『ラッキーッ!!』と思って即,購入いたします。時々,ポスター(当然,仏像のですが・・)を買って,自宅の自室や病院の医局に貼ったりしています。このような『グッズ』も年を経るごとに増えてきており,今ではかなりの数の絵はがき,写真などが自宅の自室の書棚や机の上を占拠しております。
 30年以上もこのような趣味を続けていると,数多いお寺や仏像の中でも,私の非常に好きな,ごひいき(ファン)のお寺や仏像が出てきます。そこには,何度も(学会が多い地もありますので)訪れて,何度も拝観しておりますが,本当に飽きが来ませんし,帰る時には,また来ようと心に決めていたりします。
 このように何度も訪れたくなるようなお寺もあり,またこれから,今までにまだ行ったことのないお寺,見たことのない仏像を一つでも多く見られるように願いながら,今日もお寺めぐりの計画を練っております。


次号は,鹿児島市立病院の上村昭典先生のご執筆です。(編集委員会)




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