天
紫南支部 紫原ぢごろ
何の用事暇せかあればメール打っ
(ないのゆし 暇せかあれば メール打っ)
(唱)コミュニケーションこいが今時
(唱)(コミュニケーション こいがいまどっ)
周りを見渡すと、メールに夢中の人は多くいて、時には、歩きながら携帯電話を片手に、器用に指を動かしている人も見かけたりします。
あまりメールをしない人から見ると、「そんなに用事が多いのか」と、半ば呆れる光景ですが、世相を反映した句で、中七の表現が、よく効いています。
地
印南 本作
用事しゃ無かち諄か勧誘い腹が立っ
(ゆしゃなかち くどかかんゆい 腹が立っ)
(唱)金せかあれば違ごた成り行っ
(唱)(ぜんせかあれば ちごたなりゆっ)
勧誘と言えば真っ先に保険の勧誘が思い浮かびますが、他にも入会や、また広く捉えると、営業活動も同じようなものではないかと思います。
勧める人は、利益を武器に攻撃しますが、勧められる人は、意志を盾に立ち向かわなければなりません。「用事ゆしゃ無なか」という強い意志が勝ったようです。
人
清滝支部 鮫島爺児医
頼まれた用事ゆしゃけ忘わすれっ千ち鳥どい足あし
(頼まれた ゆしゃけわすれっ ちどいあし)
(唱)頼んだ相手が 最初かあ間違げ
(唱)(頼んだえてが はなかあまっげ)
諸事情で、本人が直接用事を相手方に伝えることができなかったり、妥当でなかったりする場合は、他人に頼みますが、それはおそらく、大事な用事だったに違いありません。しかし、用事を任された人は、相手に飲まされた焼酎に、その責務も果たせず、酔いつぶれての帰りです。誠にもって情けない滑稽な句です。
五客一席 城山古狸庵
二階かあ降じっ来たどん消えた用事
(二階かあ おじっきたどん 消えた用事)
(唱)何じゃったけちまた二階け上がっ
(唱)(ないじゃったけち またにけあがっ)
五客二席 紫南支部 二軒茶屋電停
結婚当初用事も断っ早よ帰宅っ
(といえはな 用事もことわっ はよもどっ)
(唱)用事どこいじゃ無大事な新妻
(唱)(ゆしどこいじゃね でしな新妻)
五客三席 武岡 志郎
大事な用事しゃ三五十五で語い好っ
(でしなゆしゃ さんごじゅうごで かたいずっ)
(唱)話しゃ面白つ起承転結
(唱)(はなしゃおもしつ きしょうてんけっ)
五客四席 紫南支部 宇宿ガサ医者
用事しょ作っ天文館に昨夜も出っ
(ゆしょつくっ 天文館に ゆべもでっ)
(唱)癒されけ行っ美人ママん店
(唱)(いやされけいっ シャンママん店)
五客五席 清滝支部 鮫島爺児医
用事しゅ作っ合わせっ見たや一目惚れ
(ゆしゅつくっ あわせっみたや ひとめぼれ)
(唱)良かカップルち案の定じゃった
(唱)(よかカップルち あんのじゅじゃった)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
元気かち聞たや用事しゃ無ち逃ぐい女房
(元気かち きたやゆしゃねち にぐいかか)
用事しゃ無どん覗っみろごちゃい孫ん顔
(ゆしゃねどん みっみろごちゃい 孫んつら)
嫌ん会や用事で逃ぐいが無難じゃっ
(すかんかや 用事でにぐいが ぶなんじゃっ)
武岡 志郎
放蕩息子用事ち無心に寄いて付っ
(どらむすこ 用事ち無心に よいてちっ)
人が良で用事も無かとに人が寄っ
(人がえで 用事もなかとに 人がよっ)
薩摩兵児天下国家ん用事し走っ
(さつまへこ 天下国家ん ゆしはしっ)
城山古狸庵
焼酎いなっ大事な用事どまけ忘れっ
(しょちゅいなっ でしな用事どま け忘れっ)
用事しゅば書た紙ぬ落とせっ後返い
(ゆしゅばけた かんぬ落とせっ あともどい)
紫南支部 紫原ぢごろ
メモ代い用事しゅ掌い書っ付けっ
(メモがわい ゆしゅてのはらい かっつけっ)
呆けだせっ頼だ用事どまけ忘れっ
(ぼけだせっ たのだ用事どま け忘れっ)
霧島 木林
金曜日用事が無してん全員集っ
(金曜日 用事がのしてん ずるっよっ)
愛煙家用事しょ作っせえ外で吸っ
(たばこのん ゆしょつくっせえ 外ですっ)
紫南支部 宇宿ガサ医者
おいあいで大概な用事しゃ済ん老夫婦
(おいあいで てげなゆしゃすん おんじょみと)
用事しゃ無どん妻あ度々 実家て帰っ
(ゆしゃねどん かかあはたれっ さてもどっ)
紫南支部 二軒茶屋電停
恋愛中用事どん準備っ長げ電話
(れんあいちゅ 用事どんしこっ なげ電話)
印南 本作
爺と婆孫い会うため用事しょ作っ
(じいとばば 孫いおうため ゆしょつくっ)
清滝支部 清滝やまぶき
用事ち友人し呼ばれっ行たや誕生会
(用事ちどし よばれっいたや たんじょかい)
作句教室
今月は、初登場も含めて投句者数が、賑やかな九名でした。「やるのは今です」の気合いが感じられて、とても嬉しく思っています。
さて、作句の基本をいくつか復習してみます。まず破調句です。中七が「頼んだ用事(ゆし)どま」と、八音字になったり、下五が「うろうろしっ」「用事(ゆし)をつくっ」と、六音字になった字余りの句がありました。破調句は駄目ですので、五・七・五の十七音字になるように、言葉の位置を変えたり、言い替えたりと、表現を吟味することが大事です。
次に下五の止め方です。下五が「全員集合(あつまい)だ」「メールをし」「女房(か)け叱(が)られ」などの句がありました。下五が「残業だ」「笑(わる)え言(ちゅ)が」「もう無(な)かち」「前ん席(せ)き」「早(は)よせんか」などの、助動詞や助詞の形での止め方は、締まりのない句となるので、避けなければいけません。したがって、下五の止め方は、動詞か名詞の形が望ましいと思います。
また、「騒動(そど)をし」や「議(ぎ)を言(ゆ)われ」などは五音字ですが、ことばの正しい使われ方としては、「騒動(そど)をしっ」「議(ぎ)を言(ゆ)われっ」ですので、この大事な小文字「っ」抜けで、字数を合わせることは、避けなければいけません。
薩 摩 郷 句 募 集
◎7 号
題 吟 「 悪口(あっご)」
締 切 平成25年6月5日(水) ◎8 号
題 吟 「 親類(しんじ)」
締 切 平成25年7月5日(金)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
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