=== 年頭のあいさつ ===

新 年 の ご 挨 拶
鹿児島市医師会病院 院長

     田畑 峯雄


 あけましておめでとうございます。会員の先生方にはご家族おそろいで健やかな新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。昨年中は鹿児島市医師会病院に対する多大なご支援を賜り,会長はじめ役員,会員の先生方には感謝申し上げます。
 経済は低迷,被災地はそっちのけ,社会保障の本体部分は棚上げしたまま消費税増税を決めいきなり解散。政治家は離散集合,政党乱立し,お互いの揚げ足取りの舌戦で誰に,どの政党に託すかわからない師走衆議院議員総選挙だったと思います。新政権下での社会保障国民会議の医療・介護政策が注目されます。
 平成24年は医師会病院にとっては試練の年でした。小児救急医療拠点病院返上の平成23年夏頃から入院患者延べ数・病床稼働率が減少し,平成24年3月に若干持ち直しましたが4月以降は前年度を下回る結果となりました。平成24年度になって大学医局の入局者減少に伴い麻酔科・外科・放射線科・呼吸器内科医師減員,呼吸器外科医師引き上げという事態に陥り,医師不足が患者数減少に大きく影響しました。平成24年度の診療報酬改定は病院運営に恩恵があると思われましたが,上半期の経常収益は好転できませんでした。
 医師会役員はじめ病院職員幹部で経営改善策を検討しました。診療部幹部が各支部会に出席させてもらい病院の現状を報告し患者紹介依頼を行いました。時間外急患お断りを極力避けるため担当医師への手当,20数年据え置きされていた当直料・オンコール料の値上げも行いましたが,医師の過重労働が問題視されている現在では限界があります。24時間体制の広域二次救急医療を維持するためにはマンパワー不足です。大学医局にお伺いして了承の得られた診療科はホームページによる医師募集,県外医局や人材派遣会社にも医師募集を依頼していますが,現在のところ効果はありません。会員の先生方からの急患依頼をブッキングなどでお断りしご迷惑をおかけすることもあると思いますが,何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
 病院の行事としましては平成24年5月12日に鹿児島県市町村自治会館で日本医療マネジメント学会 第3回鹿児島支部学術集会を病院主催で開催しました。テーマは「チームで取り組む安全で質の高い医療」とし,シンポジウムとして「地域医療連携の現状と課題」を企画しました。シンポジウム8題,一般演題23題,参加者約200人で,より良い地域医療の充実のため議論が行われ,有益な学術集会となりました。ご参加の皆様に感謝申し上げます。
 看護師不足も深刻な問題となり,新卒者の獲得が困難で看護師養成奨学金貸与制度を開始し,数人が奨学生となっています。産休後の職場復帰がスムースにいくように院内保育施設の開設が決まりました。運営委託業者選定を行い設置場所は新館3階部分となり,今春にはオープン予定です。
 懸案事項であった電子カルテの導入が決まり,経営難を理由にメーカーの変更がありましたが今年6月本稼動予定です。現在の電子と紙の二重構造の不自由なオーダーシステムから開放されることを職員一同楽しみにしています。
 基本方針の専門性を追及した高度医療の実践と連携の強化のためには,高度医療機器の導入・更新も必要です。平成23年度の64列CTの導入・MRIのバージョンアップに加えて,平成24年度はシンチグラフィーの新規更新を行い,検査時間の短縮,認知症の早期発見などの脳機能の解析や心臓CTとの融合画像の作成も可能となりました。また,マンモグラフィーの新規更新も予定しています。会員の先生方からの病理組織・細胞診検体はご依頼が減少傾向です。液状化検体細胞診加算も認められ当院でも導入いたしました。会員の先生方のご利用のほどよろしくお願い申し上げます。
 平成24年度の診療報酬改定で感染対策加算の新規分類とがん地域連携クリニカルパスによる計画策定料・指導料が認められました。専従の感染認定看護師のいる当院では加算1と地域連携加算を取得し,加算2の施設との年4回のカンファランスおよび加算1同士の相互チェックを行っています。がん地域連携パスの運用は指定病院である当院がパス策定病院となり,連携病院(かかりつけ医)とパスを用いて患者さんの情報を共有しながら診療していくことで診療点数が得られます。がん地域連携パス説明会を2回行い計51施設86人に参加していただきました。鹿児島県が認めている5大がんのうち胃がん,肝臓がんで開始し,間もなく大腸がんも運用できる予定です。これからも多くの会員の先生方と連携できることを期待しています。
 病院の経常収支が厳しくなった主な原因は,国の診療報酬で誘導する病床削減策に乗せられた結果(平成13年度:新入院患者数4,571人,平均在院日数18.4日,病床利用率90.3%;平成23年度:新入院患者数5,130人,平均在院日数13.1日,病床利用率72.3%)や急性期病院群の患者獲得競争の激化などにより,在院患者延べ数・病床利用率が徐々に減少したことです。他に2年毎の診療報酬改定と減価償却費の変動にも影響されてきましたが,キャッシュフローがマイナスにはなった年度はほとんどありません。開院30年目を迎え移転・新築する時期も近づいており,病院が存続するためには黒字基調にならなければなりません。紹介型病院での集患には職員の努力だけでは限界があります。会員の先生方の積極的な患者紹介・ご支援をお願い申し上げます。




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