天
紫南支部 紫原ぢごろ
夫婦じゃれば老老介護も苦いならじ
(夫婦じゃれば ろうろ介護も くいならじ)
(唱)優し心い感謝で一杯
(唱)(やさし心い 感謝でいっぺ)
老化現象は、自然の成り行きですが、食事や運動など、その生活習慣によって個人差があるようです。
歳を取り、その病気が重いと、夫婦間では老人が老人を介護する事態にもなります。現実はなかなか思うようにいきませんが、夫婦の強い絆を感じさせてくれる、温かみのある句です。
地
清滝支部 鮫島爺児医
五十年連れ添た夫婦も小言ちゃ絶えじ
(五十年 つれそた夫婦も ぐちゃたえじ)
(唱)レクレーションのよなもんじゃんそ
(唱)(レクレーションのよなもんじゃんそ)
世間の夫婦を取材したテレビ番組で、偶に、互いを思いやり、仲の良い夫婦を見ると、ほのぼのとした気分になり、これが理想の夫婦かと思うことがあります。
でも現実は、夫婦の形もいろいろで、その夫婦の関係は、他人が知る由もないことです。この句にあるような夫婦が、一般的なのかもしれません。
人
城山古狸庵
億く使こて夫婦いなったが最早別れ
(おくつこて 夫婦いなったが もへ別れ)
(唱)浮気が原因じゃ話しもならじ
(唱)(浮気がもとじゃ はなしもならじ)
芸能人や有名人の結婚が話題になったり、披露宴のテレビ中継があったりしますが、中には格付けのような豪華なものもあります。そんなカップルを「どうせ別れるだろう」と、庶民は冷静に見たりして、予想通り、早すぎる離婚が多いのも事実です。庶民とは全く無縁ですが、話のネタにはなる奇妙な世界です。
五客一席 紫南支部 紫原ぢごろ
老夫婦両方で呆けを笑れ飛べっ
(おんじょみと まんぼでぼけを われとべっ)
(唱)はらじゃったけち丸で漫才
(唱)(はらじゃったけち まっで漫才)
五客二席 川内つばめ
夫婦喧嘩子ん判定は母ん勝っ
(みとげんか 子ん判定は かかんかっ)
(唱)良う聞いちょれば母が正論
(唱)(ゆうきいちょれば かかが正論)
五客三席 霧島 木林
彼其ち主語どま要らん老夫婦
(あいそいち 主語どまいらん おんじょみと)
(唱)ツーカーで用事じゃ大概な事ちゃ済ん
(唱)(ツーカーでゆじゃ てげなこちゃすん)
五客四席 清滝支部 鮫島爺児医
老夫婦孫が来んがち心配な事
(おんじょみと 孫がこんがち せわなこっ)
(唱)木戸い立ったい電話をしたい
(唱)(木戸い立ったい 電話をしたい)
五客五席 城山古狸庵
夫婦喧嘩三日も続じた黙秘権
(夫婦喧嘩 三日もつじた 黙秘権)
(唱)我慢比べで通夜ん如っあっ
(唱)(我慢比べで つやんごっあっ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
夫婦喧嘩子が泣っ出けっ丸る治っ
(夫婦喧嘩 子がなっでけっ まるいたっ)
夫婦喧嘩目が覚めた時きゃ隣い居っ
(夫婦喧嘩 目が覚めたときゃ とないおっ)
仲良夫婦女房が先き逝っ可哀想し亭主
(仲良夫婦 かかがさきいっ ぐらしとと)
仲良ゆせにゃ慰謝料が高し将来きゃ苦労
(なかゆせにゃ いしゃりょがたこし さきゃ苦労)
霧島 木林
夫婦暮らし凄ぜ憧るい独身者
(夫婦ぐらし わぜあこがるい ひといもん)
夫婦ん誓け近頃らいっき反故いなっ
(夫婦んちけ このごらいっき ほごいなっ)
銀金ち夫婦ん歴史は高価こけなっ
(銀金ち 夫婦ん歴史は たこけなっ)
城山古狸庵
グルメ言が夫婦でメタボん仲間めなっ
(グルメちゅが 夫婦でメタボん なかめなっ)
作句教室
薩摩郷句の実際の作品を元に、その意味合いをできるだけ変えずに、共通語で五・七・五で、次のように表現してみました(一部字余りあり)。これを方言で表現するとどのように変わるのか、原句と比較してみて下さい。※が原句
家族揃って空腹で行くバイキング
※家族揃っ空腹で行っバイキング
(けねそろっ すっぱらでいっ バイキング)
冷汗を掻いて詫びてる朝帰り
※冷汗を掻っ詫ぶ入るい朝帰い
(冷汗を けっわぶいるい あさもどい)
無駄だとは思うけど買う育毛剤
※無駄かもち思もどん買込だ育毛剤
(すだかもち おもどんけくだ いくもざい)
借金取り戻った後に塩を撒く
※借金取い戻った後てな塩を撒っ
(おっかとい 戻ったあてな 塩をめっ)
晩酌のムードを愚痴がぶちこわし
※晩酌んムードを愚痴がうっ壊えっ
(だいやめん ムードをぐぜが うっくえっ)
このように作句では、破調句(字余りや字足らず)にならないように、そして方言を十分生かすようにすることが大事です。そして、方言によるリズムの良い表現になるよう、心掛けることも忘れてはなりません。
薩摩郷句鑑賞 64
倹し女房寒みなら寝れち炬燵つ切っ
(つましかか さみなら寝れち こたつ切っ)
安藤孟宗竹
寒い時に寝床にもぐり込んでしまうことを「薪取(たっもんと)い」などという。起きていて火を焚かなければ、薪の節約になるから、結局薪取りに行ったのと同じことになるからだろう。
円高差益があっても、すぐ灯油や電気料金の値下げがあるわけではないし、頼みの減税もない。一方では軒並みに値上げラッシュときているから、家計をあずかる主婦にしてみれば、「つましごろ」と言われようが「かんちん」と言われようが、節約する以外に手立てはあるまい。
雪化粧ん性根は燃えちょい桜島
(ゆっげしょん ねしゅはもえちょい 桜島)
柿元棕格緒
桜島が真っ白い雪をかむって、静かなたたずまいを見せているのを見て、「表面は雪化粧をして、美しい姿をしているが、胸の内には燃えたぎる激しいものを秘めているのだ」と、擬人法で詠んだ句である。いっこうに活動がおさまりそうにない桜島、昨年は、「ドカ灰」という言葉が生まれるほど火山灰を降らしたが、今日はその桜島の爆発記念日。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎3 号
題 吟 「 逆(ぎゃっ)」
締 切 平成25年2月5日(火)
◎4 号
題 吟 「 寄付(きふ)」
締 切 平成25年3月5日(火)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
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