2012年京都･福岡の紅葉狩り：京都国際会館･九大病院の医学会･同門会参加
と国立九州博物館･福岡市美術館参観，博多都ホテル医学部クラス会へ
東区・紫南支部 有馬 榮德 |
筆者にとって傘寿を前にした2012年は忙しいながら充実した1年でした。海外では6月の上海の太平洋小児外科学会議，8月，内モンゴル日中医学会議・医療事情・中国四大美人の一人，王昭君陵墓を含む史跡文物等の視察，交流など。国内は鳥取温泉学会三佛寺宿坊シンポジウムでの国宝投入堂遥拝を果たして感動。諸医学会・勉強会にも参加。常勤，非常勤の仕事も勤め，ただ今のところ体調も良好です。最近では11月13日からの第40回日本救急医学会総会・学術集会（京都，筆者専門医），同17日は古巣の福岡を一日中駆け巡り，第17回日本心療内科学会総会・学術大会（九大医学部百年講堂・同窓会館 筆者会員），九大麻酔・蘇生学教室開講50周年記念会（同コラボステ－ションⅠほか 筆者同門会OB会員）にも参加。夕には鹿児島県立大学医学部昭和33年卒，‘燦々会’クラス会（博多都ホテル）に出席。その合間に九州国立博物館（太宰府市）のベルリン国立美術館展《真珠の首飾りの少女》ほか福岡市美術館の大英博物館 古代エジプト展“世界最長37mの『死者の書』《グリーンフィールド・パピルス》”等を拝観する感動も味わいました。いずれも勤務の都合上，慣れた夜行バス往復で鹿児島発大阪東梅田経由京都行，福岡博多駅バスセンター往復のとんぼ返り強行軍ながら，順調に進行，成果は大でした。旅や会参加の所感を記します。
Ⅰ．紅葉の国立京都国際会館での第40回日本救急医学会総会・学術集会（筆者専門医）
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| 写真 1 京都日本救急医学会･特別講演，抄録集より |
この間，中休みに紅葉・黄葉が周囲の樹間に映える池面を眼前にした赤絨毯敷きの臨時茶台に腰掛けて美味しい京菓子付きの抹茶お点前を和装令夫人方によるサービスで振舞われ，古都京都ならではの風流も味わうことができました。
学会3日間中初日のみ出席のため，残念ながら最終日11月15日の特別講演（SL）3「iPS細胞研究の進展」山中伸弥教授（2012年のノーベル医学生理学賞受賞者）は拝聴できませんでしたがその抄録の一部と第1日午後，興味深く拝聴した菅原大僧正の特別講演（SL）1「宗教と医療」を略記します（写真1）。
1.「iPS細胞研究の進展」
京都大学iPS細胞研究所所長
京都大学物質－細胞統合システム拠点教授
山中伸弥
①人工多能性幹細胞（iPS細胞）は，胚性幹細胞（ES細胞）に類似するが倫理的問題が少ない。遺伝的背景や移植免疫にかかわるHLAタイプ等個性の明らかにされているさまざまな個人から樹立可能等の利点。
②このためHLAホモ接合体ドナーから構築したヒトiPS細胞バンクは将来細胞移植療法など再生医療への応用が期待され，患者由来の疾患特異的iPS細胞は病態解明，新薬探索，毒性評価など創薬開発への利用が注目されている。しかし一方移植時の腫瘍化の懸念，ES細胞と比較した多様性などから実用化には解決すべき点が多く，初期化のメカニズムもまだ未解明の部分が多い。
③iPS細胞は繊維芽細胞のほか，肝，胃上皮，神経，歯髄，末梢血，臍帯血などさまざまな由来の体細胞から樹立できる。
④細胞への因子導入方法もレトロウイルスのほか，アデノウイルス，センダイウイルス，プラスミド，トランスポドン等，種々のベクターによる遺伝子導入や，組み換えタンパク質，合成mRNAを用いた方法も報告されている。
⑤我々はエピソーマルベクターを用いることで，ゲノムへの挿入がない遺伝子導入系を構築し，従来の樹立法より安全かつ高効率にiPS細胞を樹立する方法を開発した。最近では，c-Mycの代替因子を検索する過程で原がん性が弱いL-Mycや，さらにはGlislという受精卵で特異的に発現している遺伝子を見出し，これを用いることで，iPS細胞の樹立の効率，品質を向上させることに成功した。
また，化合物によりiPS細胞樹立効率を促進し得ることも明らかになりつつある。
⑥iPS細胞はES細胞とくらべ潜在的に極めて多様性に富み，in vitroでの特定の臓器や細胞への分化指向性における誘導効率や腫瘍形成傾向などの特性が異なることが確認されつつあるので，iPSの臨床応用に際しては，最も適切な由来細胞，樹立方法および得られたiPS細胞株の評価方法を決定する必要がある。これら諸問題に対して，ゲノム解析や，メチローム，ヒストン修飾，インプリンティングなどのエピゲノム解析の重要性が増している。
⑦さらに，単一の細胞から樹立したiPS細胞におけるサブクローンにも不均一性が認められることにも留意する必要がある。
⑧今後も核初期化機構に関する理解をさらに深めることが，均一かつ完全に初期化されたiPS細胞の開発につながると期待される。
2.「宗教と医療」
三十三間堂本坊・妙法院門跡門主
天台宗勧学院院長 大僧正
早稲田大学名誉教授・文学博士 菅原信海
日本への医術の伝来は，562年に智聡が，薬書を持って入朝したことに始まると説かれ，「日本書記」，「養老律令」，「法華経」，「如来寿量品」，「本草綱目」，「道教」，「伊予国風土記」逸文など多種の文献・資料を引用された。日本では8世紀初頭に整備された『養老律令』の職員令の中の典薬寮の条に，薬師（くすし）・医博士と並んで呪術を行って病を払う能力を持つ呪禁師・呪禁博士の設置が定められ，古くは醫は「」とも表記された。医薬・療法の歴史・意義などを文献・史料等から解説。古い時代の行基・法蓮・道鏡・最澄・空海・栄西などの高僧たちは，多く唐に留学，仏教だけでなく，科学的な知識，医学（祈祷・護摩・呪術・薬草）などのほか，建築，架橋や港湾の施設についての知識も多く身につけて帰国している。
特に目立つのは，温泉の発見や呪術による医療活動，さらに最澄・栄西らの持ち帰った薬草としての茶の栽培などが目立っている。病気治療には，温泉は欠かせない。日本では，古い時代から温泉の記事が文献にみられる。天皇や皇子らの温泉行で，その当時名の知れたところは，道後温泉や有馬温泉があり，また牟婁（白浜）温泉がある。『日本書紀』には舒明・斉明・孝徳らの天皇の幸した記録が記されており，また，聖徳太子が，湯治のため道後温泉に滞在したことが『伊予国風土記』逸文にみえるなど，興味深く拝聴。
帰路は明るいうちにJR京都駅まで平安神宮の大鳥居をくぐる市営バスで京の寺や紅葉を観賞。10年ほど前，医学部クラス会で一泊，紅葉真っ盛りの有名寺社を観光バスで参詣巡遊した感動を想起します。京都-大阪間はJR，東梅田からの近鉄長距離夜行バスで鹿児島へ。14日朝から通常の勤務でした。
Ⅱ．福岡の馬出九大病院：第17回日本心療内科学会と九大麻酔・蘇生学教室開講50周年記念会出席，太宰府市九州国立博物館・福岡市立美術館参観から博多都ホテルの医学部クラス会へ
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| 写真 2 福岡日本心療内科学会･会長講演抄録より |
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| 写真 3 九大麻酔･蘇生学教室開講50周年記念誌･筆者祝文抄 |
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| 写真 4 九大麻酔･蘇生学教室同門会報第23号･筆者寄稿文抄 |
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| 写真 5 筆者（前列右端）の九大麻酔科・中央手術 部助手時代，阿蘇医局旅行中 （九州大学麻酔・蘇生学教室 開講50周年記念誌・ 教室写真より，1965年5月） |
1. 第17回日本心療内科学会（筆者会員）出席
会場は例年九大麻酔･蘇生学教室同門会が開催される九大医学部百年講堂で開催（写真2）。
鹿児島出身の九大心療内科学教室教授 久保千春氏が会長。ちなみに愚息，有馬潤一はラサール中・高を出て，九大医学部卒，同教授の門下生。現在首都近郊の病院勤務中です。1961年に九大に精神身体医学研究施設が設置され，1963年に講座となり，附属病院に心療内科が開設されたのが日本における心療内科学のはじまりですが，この施設を創設された池見酉次郎先生は筆者の母校鹿児島県立加治木高等学校（旧制加治木中学校）の先輩。筆者は九大病院助手在籍中（1964-）から同大教授だった先輩のご活躍ぶりは拝見していましたが，筆者が本学会に入会したのは精神科の病院勤務中で現在も勉強中です。
2．九州大学麻酔･蘇生学教室開講50周年記念会
総会，講演発表会（九州大学コラボステーションⅠ）に出席，鹿児島出身の外 寿美夫現教授ほか同門，教室職員の方々とお会いしましたが，西鉄グランドホテルの記念講演・懇親会はクラス会と重なり今回は出会できませんでした。50周年記念誌と同門会報には一篇ずつ‘寄稿文’（写真3），‘会員の辞’（写真4）を寄稿，記念誌‘50年の歩み’には筆者の九大病院助手時代の写真‘1965年昭和40年医局旅行 ［5月/阿蘇］，p108’（写真5）ほか数葉の懐かしい写真を掲載していただきました。
3. 太宰府・九州国立博物館のベルリン国立美術館展『真珠の首飾りの少女』ほか・学べるヨーロッパ美術の40年
光の天才画家ヨハネス・フェルメールの数少ない現存名作の多くが上野の国立博物館で展示された2010年の8月，医学会出席の合間に観賞してこれまでにない感動を覚え，翌日再度入館してじっくり鑑賞し，購入して持ち帰った解説画集をみていましたが，今回は初めてみるベルリン国立博物館収蔵の傑作を鹿児島から近い九州太宰府の国立九州博物館（2007年開館）でみることができ，幸いでした。ほか15世紀から18世紀までにわたるヨーロッパの美術の精華，絵画，彫刻，素描作品107点が閲覧できました。
過去2回ベルリンを訪れながら，国立美術館に目を向ける機会が無かった自分を恥じています。ドイツは過去に日本，イタリアと共に三国同盟を結んでおり，世界大戦では我が国同様，激しい戦禍に遭った国であります。特に破壊のひどかったベルリンの美術館で，よくこれだけのヨーロッパの名画などの文化遺産が保存できたものだと感嘆するとともに，喜んでおります。
4．大英博物館 古代エジプト展－『死者の書』で読みとく来世への旅・「グリーンフィールド・パピルス」・福岡市博物館
日本で初めての公開という37m世界最長の『死者の書』（グリーンフィールド・パピルス）の96片に裁断，右から左に連続展示されたガラス張りの現物を間近にみて，その精細な絵や文字，美術品としても優れた3700年も前の古代の美しさに感動しました。
永遠の生命を求めた古代エジプト人の来世感，即ち現世を全うした後，冥界の旅を経て来世で復活すると信じていたといい，さまざまな試練が待つその旅路において，死者を守るためにしたためられた呪文集が『死者の書』，いわば来世への旅のガイドブックで，美しい文字や挿絵で彩られた『死者の書』は主にパピルスの巻物として死者に捧げられました。
筆者が大英博物館を訪れたUCLA（カリフォルニア大学）外科留学時代はこの種の展示や収納品があるとは全く気付きませんでした。
『死者の書』は紀元前1700年頃（第2中間期初め）に出現したといわれ，古代エジプト人の寿命が35歳程度で人生のサイクルが自然の営みの永遠のサイクルのように来世で再生・復活し，永遠の生命を得ると信じていました。
これらの展示品をよりよく理解し堪能するために，入館前のホームページによる展示品の写真，案内，説明文などの検索，コピー，下調べが大変役に立ち，展示物等説明用の有料インターホンの聞き取りとともによりよく理解しつつ鑑賞することができました。閲覧後，全展示品の写真・解説付きの解説画集の購入・閲読でさらに理解を深めることもできました。
本稿にこれらの展示品の理解のために挿入したかった写真の転載は禁止されていますが，一部の展示品や説明など各展覧会の案内ホームページで簡単に検索，閲覧できます。
5．鹿児島県立大学医学部昭和33年卒「三三会」博多クラス会・博多都ホテル出席
《前言》毎年秋の開催で通常は地元の鹿児島市のホテル，ときに県外の東京，京都，門司・下関などでも開催してきました。
筆者がお世話した会は，2004年11月，2泊3日の日程で筆者が岩手県水沢市の老人保健施設長在職中に東北の紅葉狩りクラス会をお世話しました。初日は一昨年世界遺産に登録された平泉中尊寺・藤原金色堂，毛越寺や胆沢ダムなど巡遊，花巻温泉郷の天皇，皇族方も利用される温泉センターの湯槽まで総檜造りの高級旅館「佳松園」にまず一泊，銘酒と胆沢牛の焼肉，名産の松茸などの名産珍味を賞味。食後の二次会も同系列隣のホテルで盛会。翌朝旅館横の朝市で松茸や胆沢牛などのご当地名産をお土産に買い求め，バスは早めに出発。岩手県を南下，安達太良山系の高原道に入り，途中雲海と紅葉の織り成す美景に圧倒されつつ裏磐梯，五色沼などを経由して日暮れ時にホテル到着。予定していた夕食後の二次会は長路のバスの疲れもあって中止。翌朝は雨模様の中，猪苗代湖北岸の名蹟・野口英世記念館を訪問，日本の世界的名医の生涯に思いを馳せ，さらに磐梯山を望む地ビール店で休息を取ってお開きとなりました。
《2012年11月17日の博多都ホテル・三三会博多クラス会》
夫人連れを含む24人が参加。記念撮影（写真6 筆者第2列左から2人目）の後，筆者が鳥取三徳山・三佛寺の知人住職・米田良中和尚からホテル宛に送っていただくよう依頼した生ビール類似の寺ビールで乾杯し，談笑・歓談・交歓して各自の近況も披露。宴は盛り上がっていく中，筆者は中座して夜行バスで帰路につきました。
2013年11月は母校の所在地・鹿児島市で卒後55周年･傘寿の祝賀会が予定されております。
今年が良い年でありますように。皆様方のご健勝を祈念申しあげます。
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| 写真 6 博多都ホテルでの医学部クラス会記念写真（卒後54年） |
(C)Kagoshima City Medical Association 2013