天
上町支部 吉野なでしこ
脳天気悩んが無かち悩ん方
(脳天気 悩んがなかち 悩んかた)
(唱)そげな人生ゆ送ろごっあっ
(唱)(そげなじんせゆ おくろごっあっ)
同じような事象に対して、悩む人もいれば悩まない人もいます。その違いは、性格や育った環境かもしれません。
日常普通の人は、一つ二つの悩みを持っているものですが、この句のような人は羨ましい限りです。悩みという切実なテーマで、悩みを吹き飛ばすような、ユーモアのある捉え方がよかったです。
地
清滝支部 鮫島爺児医
毛が抜けっ悩んでみてんDNA
(毛が抜けっ 悩んでみてん ディーエヌエ)
(唱)育毛剤も捨せ金じゃっ
(唱)(育毛剤も うっせぜんじゃっ)
症状が目に見えて分かりやすいですが、それは突然に訪れ、多量の抜け毛の兆候に恐怖を覚え、深刻な悩みとなります。
自慢の黒髪が年々少なくなっていく様子は、切り替え毎の免許証写真を見ると一目瞭然です。単純なもので、遺伝や自然現象だと観念すれば、悩みも消え去ってしまうものです。
人
川内つばめ
悩んよかまずは一歩ち括い腹
(悩んよか まずは一歩ち くくい腹)
(唱)前へ前へち我が尻ゆ叩てっ
(唱)(前へ前へち わがしゆたてっ)
恋・仕事・人間関係・進路・病気に悩み、また抜け毛に悩みと、人生の中では大小様々な悩みを抱えて生きています。
悩んでいる間は、停滞中ですので何も前進はありません。この精神的苦痛から逃れるためには、この句のように気持ちを切り換え行動することです。自力で一つ一つ悩みを解消してほしいものです。
五客一席 城山古狸庵
誰せえも言えん悩んで不登校
(だいせえも ゆえん悩んで 不登校)
(唱)痛めた胸を考ぐっと辛れ
(唱)(痛めた胸を かんぐっとつれ)
五客二席 清滝支部 鮫島爺児医
末期癌隠そか言おか悩ん医者
(末期癌 かくそかゆおか 悩ん医者)
(唱)告知ちゃ使命ち腹をば括っ
(唱)(こくちゃ使命ち 腹をばくくっ)
五客三席 紫南支部 紫原ぢごろ
メタボ腹悩ん一方でグルメ通え
(メタボ腹 悩んいっぽで グルメがえ)
(唱)そげな事でな大事ちなろそな
(唱)(そげなこっでな うごちなろそな)
五客四席 上町支部 吉野なでしこ
太いめち悩んながらも手を出せっ
(ふといめち 悩んながらも 手をでせっ)
(唱)抑制や利かんこん卑し口
(唱)(よくせやきかん こんいやしくっ)
五客五席 川内つばめ
凄ぜ悩ん良うまとまらん鹿市医郷壇
(わぜ悩ん ゆうまとまらん いきょうだん)
(唱)多読多作で稽古も入っじゃろ
(唱)(たどったさっで けこもいっじゃろ)
秀 逸
城山古狸庵
句作いの悩んで昨夜は寝がならじ
(句作いの 悩んでゆべは ねがならじ)
悩んどま無かよな面で火の車
(悩んどま なかよなつらで 火のくいま)
振られてん恋の悩んな消えあせじ
(振られてん 恋の悩んな 消えあせじ)
清滝支部 鮫島爺児医
大て鼾き悩ん居っとに平然たん
(ふていびき 悩んじょっとに しれったん)
物忘れ悩んでみてんそんた年齢
(物忘れ 悩んでみてん そんたとし)
喜寿過ぎりゃ悩んな捨てっ元気出そ
(喜寿過ぎりゃ 悩んな捨てっ 元気だそ)
紫南支部 紫原ぢごろ
悩んどま無かよな顔で世を渡っ
(悩んどま なかよなつらで 世を渡っ)
悩んでんどうも成らんちケセラセラ
(悩んでん どうもならんち ケセラセラ)
上町支部 吉野なでしこ
ゴルフ焼けシミが増えたち悩ん方
(ゴルフ焼け シミが増えたち 悩んかた)
川内つばめ
年す取れば子い親仕事多け悩ん
(とすとれば 子い親しごっ うけ悩ん)
薩摩郷句鑑賞 62
珍客きな別ち新焼酎ん口つ開けっ
(ちんきゃきな べちしんじょちゅん くつあけっ)
木村 春駒
ぼつぼつ新焼酎ができる季節だが、焼酎好きな人々には、その風味がなんとも言えないものらしい。それだけに、客が来ても、おいそれと飲ませたくはない品なんだろうが、たまたま訪れた珍客に、そのとっておきの瓶の栓を抜いたというわけである。
外の客には出さない新焼酎を飲ませるところに、その客との関係も想像できるし、歓待する心情もよく分かる句である。
弥五郎どん縁台言おそな下駄を履ん
(やごろどん ばんこちゅおそな 下駄をふん)
安藤孟宗竹
今日は大隅岩川八幡のホゼ祭りであるが、浜下りの先導をつとめるのが有名な弥五郎どんである。身の丈およそ六メートル、梅染めの衣、長い大小を差した、魁偉な人形である。
その弥五郎どんを、木の車のついた台車にのせて引っぱるが、実際には下駄は履かせないで、草履と共に台車にくくりつけてある。大きいことは言うまでもない。
大法螺吹っ何ゆ尋ねてん容易す言っ
(うぎらふっ なゆたんねてん もやすゆっ)
日高 山伏
雑魚を釣って、大物を揚げたような話なら罪がないけれど、会ったこともない知事を親戚のように言ったり、煙草代にも事欠くくせに、銀行の大株主のような話をするようになると、法螺も鼻持ちならなくなるものである。
この句の場合は、多分後者ではないかと思う。「容易す言っ」は、簡単に答えるという意味ではなく、何を相談しても、いともたやすく解決できるような、すぐに片付けてやれるような、そんな大風呂敷をひろげるという意味である。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎新年号
題 吟 「 夫婦(みと)」
締 切 平成24年12月1日(土) ◎2 号
題 吟 「 湯気(ほけ)」
締 切 平成25年1月5日(土)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp |
 |