天
城山古狸庵
手の茶碗隣ゆ見い見い廻せかた
(手の茶碗 隣ゆ見い見い 廻せかた)
(唱)飲んだ茶の味じゃ覚えちゃおらじ
(唱)(飲んだ茶のあじゃ おぼえちゃおらじ)
茶道は、茶の湯によって精神を修養し礼法を究める道ですが、一般の人も気軽に参加できる、お茶を楽しむ茶会もあちこちで催されています。
その茶の湯に初めて出席し、たてられた抹茶をいただく作法を、隣の人を真似て、無事に口に運ぶことができました。緊張感が漂う、ほのぼのとした句です。
地
紫南支部 紫原ぢごろ
金メダル茶碗片手い踊い出っ
(金メダル 茶碗片手い おどいでっ)
(唱)貰ろた感動い出っくい涙
(唱)(もろたかんどい でっくいなんだ)
ロンドンオリンピックは、メダルラッシュで、多くの選手の活躍に日本中が沸きました。
色には関係なく、それぞれが手にしたメダルにはドラマがあり、感動を与えてくれました。テレビを見ながら応援し、まさにその瞬間を捉えている、喜びいっぱいの句です。
人
原良 龍虹
茶碗ぬば投げた親父いけ驚っ
(茶碗ぬば 投げたおやじい けたまがっ)
(唱)まこて難し夫婦関係
(唱)(まこてむっかし 夫婦関係)
食事中の団欒の空気が急変、張り詰めた異様な事態になりました。
夫婦間の災いの口が引き金となって、普段は穏やかな父親が理性を失い、茶碗を投げてしまいました。運悪く、そこには子供もいて、それを見て只々呆然です。
これも現実ですが、決して褒められることではありません。
五客一席 清滝支部 鮫島爺児医
茶柱が茶碗に浮かっ運を貰ろっ
(ちゃばしたが 茶碗にうかっ ふをもろっ)
(唱)湯を注がんな只ん固て茎
(唱)(湯をそそがんな ただんかてくっ)
五客二席 紫南支部 紫原ぢごろ
リハビリが効けっ茶碗ぬじっ握っ
(リハビリが きけっ茶碗ぬ じっにぎっ)
(唱)麻痺と懸命い戦こたお陰
(唱)(麻痺とけんめい たたこたお陰)
五客三席 上町支部 吉野なでしこ
気い入った茶碗で飲めば違ごた味っ
(気い入った 茶碗で飲めば ちごたあっ)
(唱)番茶じゃっどん玉露い化けっ
(唱)(番茶じゃっどん 玉露いばけっ)
五客四席 城山古狸庵
偽物ち知たじ茶碗ぬ床け飾っ
(まげもんち したじ茶碗ぬ とけかざっ)
(唱)眺めちゃニタッ知らぬが仏
(唱)(ながめちゃニタッ 知らぬが仏)
五客五席 原良 龍虹
夫婦茶碗今じゃ水屋ん奥き眠っ
(みと茶碗 今じゃみずやん おきねぶっ)
(唱)仲良ゆ食卓き揃ろこちゃも無か
(唱)(なかゆしょくたき そろこちゃもなか)
秀 逸
城山古狸庵
罅茶碗丁寧い使えば長ご持てっ
(ひっぢゃわん てねいつこえば なごもてっ)
茶碗でな間しゃき合わせん寮ん青年
(茶碗でな ましゃきおわせん 寮んにせ)
上町支部 吉野なでしこ
増えた客茶碗が足らじ買け走っ
(増えたきゃっ 茶碗がたらじ こけはしっ)
高価け茶碗そろいと運っ並べ方
(たけ茶碗 そろいとはこっ 並べ方)
紫南支部 紫原ぢごろ
こいもエコ茶碗な不要ん握飯
(こいもエコ 茶碗ないらん にぎいめし)
夫婦茶碗波乱万丈ん五十年
(めおとわん はらんばんじょん 五十年)
原良 龍虹
食とは最後大好物の茶碗蒸し
(くとはしめ だいこうぶっの 茶碗蒸し)
茶碗よか丼が良か伸っ盛い
(茶碗よか どんぶいがよか ぬっざかい)
清滝支部 鮫島爺児医
良か茶碗傷が有ってん大事じ使こっ
(よか茶碗 きしがあってん でじつこっ)
良か茶碗料理の味迄引っ立てっ
(よか茶碗 じゅいのあっずい ひっ立てっ)
薩摩郷句鑑賞 61
茶碗皿山盛い浸けっ遊っ癖
(茶碗皿 やまもいつけっ あすっ癖)
篠原キミエ
「男やもめにウジがわく」という諺があるが、自炊をしている独身男性の中には、使っただけずつ茶碗は流しの水につけ、なくなれば、使うだけずつ洗うという不精者もいるものである。
しかしこの句の場合は、どうも主婦のようである。食事の後片付けもしないで、茶碗や皿は水につけたまま、隣近所だとか、街のあたりに出て行くのであろう。それが、一日や二日でなく、いつものことなのである。
金が無や歩ん方ずいずん垂れっ
(ぜんがねや あゆんかたずい ずんだれっ)
下野 話志
「人間は、三十歳を超えたら、自分の顔に責任を持て」という言葉を聞いたことがあるが、確かに、その人の考え方や仕事なりが、顔つきに表れるものだと言えそうである。
生活に追われ、金銭的な苦労ばかりしていれば、あるいは歩き方にも疲れが表れるかも知れない。それを「ずんだれた」(しまりがないこと、だらしないこと)と言ったわけである。これは、あるいは自分自身に対する一つの自嘲かも知れない。
二代目あ古狸かあ馬鹿けされっ
(二代目あ ふいだぬっかあ ばけされっ)
寒川 敏子
自分の汗と努力で、会社なり店なりを築き上げた初代は、隅から隅までよく分かっているし、苦労してきただけに、人使いもうまかったのであろう。
ところが、その親の後を継いだ二代目は、初代のころから働いてきた「せなはげ」から見れば、文字どおりまだ「ひよこ」なのである。表面はハイハイと言っていても、実はなめているのである。そういう古参たちが、心からついていくようになるには、修業が必要だろう。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎12 号
題 吟 「 毎日(めにっ)」
締 切 平成24年11月5日(月) ◎新年号
題 吟 「 夫婦(みと)」
締 切 平成24年12月1日(土)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
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