随筆・その他
機上人,徒然なるままに
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東区・紫南支部
(上ノ町・加治屋クリニック) 上ノ町 仁 |
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皆さんも飛行機に乗った際いろいろなトラブルやラッキーに遭遇したことがあると思いますが,徒然なるままに私の経験を書き綴ってみます。
−ぞっとする話−
其の1
それは平成9年のこと。東京で勉強会があり帰路羽田から鹿児島へ順調なフライトであった。鹿児島空港への着陸態勢に入り高度が下がり眼下に滑走路が見えてきた時,自分のお尻がふわっと上がったかと思うや否や急にエンジンパワー全開,体に絶叫マシンのGを感じるくらいの勢いで急上昇し機体は雲の上へと駆け上がった。なんと着陸態勢中に後ろから強風が襲い掛かり機体が急降下し,ややもすると滑走路に衝突の危険があったらしい。そのあと強風が止むまで鹿児島上空喜入方面を旋回し,約30分後に無事着陸した。あのとき急上昇できず機体ごと滑走路に叩きつけられていたらと想像するとぞっとした。
其の2
それは平成17年のこと。家族で夏休みにハワイ旅行に行った。福岡発ホノルル行きである。旅行は楽しく何も問題なく飛行機にまつわるトラブルもなかったが,その1週間後の平成17年8月12日に先週乗った飛行機が福岡空港を離陸約1分後にエンジンから大きな火を噴いた。報道によると,離陸直後下から突き上げるような「ドーン」という音とともに,窓から赤い光が流れていくのが見え,左側エンジンが大きな赤い火を噴き機内ではどよめきが起きたという。出火したエンジンを止め,残りのエンジンで機体は無事福岡空港へ帰還したそうだが,ちょうど我々も1週間前左側エンジンが見える所に座っており,この出来事がその時だったらと想像するとぞっとした。
−プレミアムシート−
其の1
それは平成21年のこと。東京から鹿児島へ帰る飛行機の中でたまたまプレミアムシートで夜だったため,調子にのってお酒を飲みすぎた。アルコールによる少々の尿意はあったものの,「着陸してからトイレに行こう」という甘い考えがそのあとの悲劇の始まりだった。
いつものとおり着陸態勢に入りシートベルト着用サインが点灯,そのまま無事着陸するものと思っていたら,想定外の天候不良による鹿児島上空の旋回となった。初めは少々の尿意だったが,時が経つにつれどんどんどんどん尿意が押し寄せて膀胱が張ってきた。「もうだめだ,ただ旋回しているだけだからトイレに行かせてくれ〜」と心の中で叫んでみたが,もちろんCA(Cabin Attendant)には届かない。しかも,シートベルト着用サイン点灯中に席を立とうものならCAから機長に連絡され,地上に降りてから迷惑行為で警察に連行されるかもしれない。いっそ嘔吐袋にしようかとまで考えるも世間体と理性がまだあった。シートベルトをやや緩め対応するも,あぶら汗と伴にだんだん顔が青ざめていくのがわかった。膀胱を風船にたとえると巨大化しもう破裂寸前!手に汗が滴る!気が遠くなる!腎臓まで張って痛い感じ!神様仏様キリストさま〜!!…とその時,機内のアナウンスが着陸態勢を告げ,ここは最後の我慢のしどころでようやく着陸した。安堵感で尿漏れを起こしそうだったがそこはぐっとこらえて,早くトイレに駆け込みたかったが,膀胱過充満の関係上腰をかがめゆっくりとしかし確実に直線的にトイレに向かい用を足した。本当〜に助かった。
それ以来この教訓を生かし,アルコールの量はそのままでもいいが離陸前,飛行中,着陸直前にはたとえ尿意がなくとも必ずトイレに行くことを習慣化したのは言うまでもない。
其の2
それは平成22年のこと。東京から鹿児島へ帰る飛行機の中でたまたまプレミアムシートだったが昼だったため,お酒は普通に飲んでいた。自分の席は1列目左窓側から3席目であった。通路をはさみその列の左窓側に,さりげなく今風に小奇麗に着飾り帽子を深めにかぶり美味そうにサンドイッチをほおばる青年がいた。どこかで見た顔だと思い何回かちら見をしていると,なんと「嵐の大野くん」ではないか。明るく無邪気にかつ真剣に隣に座るマネージャーと打ち合わせをしていた。感じのいい好青年であった。帰宅して娘に自慢げに話をすると,「へえ〜そう」で終わった。娘は「嵐」のファンではないらしい。
其の3
それは平成23年のこと。東京から鹿児島へ帰る飛行機の中でたまたまプレミアムシートだったが朝だったため,お酒は控えめに飲んでいた。自分の席は2列目右窓側であった。出発直前,最後にサングラスをかけた筋骨隆々の輩が堂々と入ってきた。彼が元ジャイアンツの桑田真澄氏であることは瞬時に判明した。彼は1列目右窓側,そう自分の前の席に座った。ちょうどその日,鹿児島で桑田氏の講演があったのだ。フライトは順調で,鹿児島空港に近づき着陸態勢に入る前になんと自分の席の窓から桜島が見えた。通常国分側から着陸の際,桜島は飛行機の左側の窓から見えるはずだが,何故か今日は右側の窓からみえた!その位置関係と必要性を理解するのに少々時間がかかったが,「そうか,なるほど機長から桑田氏への桜島観覧飛行のサービスだ!!」と自分なりの解を得た…が,残念ながらその時桑田氏は飛行機の窓の遮光板を閉めて寝ていた。私も彼を起こさなかった。そのことを機長は知る由もない!!
大のジャイアンツファンである私は到着後声を掛けるべきか少々の葛藤があったが,欲望が勝りここで話さなければ一生話す機会はないと思い立ち,到着後ロビーで,「桑田さん,昔からファンでした。今日の講演がんばってください」と声を掛けると,「ありがとう」と桑田氏から手を差し伸べ握手をしてくれた。やった〜大感激〜!!で,その右手はまだ洗っていない…のは嘘です。
以上,徒然なるままの文章で失敬しました。おわり。
| 次号は,島田ひふ科の島田辰彦先生のご執筆です。(編集委員会) |

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