=== 新春随筆 ===

干支の辰年に因んでの年頭雑感
−竜のデザインとブータン国王のメッセージ−



西区・武岡支部
              松下 敏夫

写真 1 豫園の龍壁

写真 2 天后宮の屋根の装飾

写真 3 統一会堂の絨毯

 2012年は干支の辰年,辰は「漢書」律暦志によると『振』(しん「ふるう」「ととのう」の意味)で,草木の形が整った状態を表しており,後に,覚え易くするために神話上の動物の竜(龍)が割り当てられたという。広辞苑には,竜は「想像上の動物。中国で神霊視される鱗虫の長,鳳・麟・亀とともに四瑞の1つ,よく雲を起こして雨を呼ぶという」などと記載されている。

今年の年賀状のデザイン
 干支の動物は,年賀状のデザインに付き物だが,私は例年,旅行などの折にカメラで収めた干支に因んだ写真を加工し,出来るだけ挿入することにしている。
 今年の候補の1つは,上海で人気の観光スポット豫園で見掛けたものであった。豫園は,16世紀時代に造営された江南様式の名園で,約2万uという広大な敷地内には,大小の楼閣が建ち,様々な形の巨石や太湖石などが配されている。これらの楼閣の中には,壁上部に「龍壁」と呼ばれる龍の装飾を配したものがある。頭は蛇,角は鹿,眼は兎,口はロバ,歯は馬,爪は鷹,体は蛇,鱗は魚に似ており,口には玉を咥えている(写真1)。
 次の候補は,ベトナム・ホーチミン市にある天后宮で見掛けたものであった。天后宮は,1760年に建設されたベトナム最古の華人(華僑)の道教寺の1つで,航海安全や漁業の守護神(女神)を祭っている。正門の屋根は,見事な陶磁器類のレリーフや彫像の装飾であしらわれており,その中には,竜の模様も見受けられた(写真2)。
 もう1つの候補は,同じくホーチミン市の統一会堂で見掛けたものである。それは,会堂内部の絨毯の模様であった (写真3)。
 なお,この建物は,フランスによる植民地時代の1868年に建設が始められ,南ベトナム時代には大統領官邸として使用されていたもので,1975年4月30日に北ベトナム軍が突入して首都サイゴンが陥落,現在の「統一会堂」と改名・保存され,事実上の博物館として一般公開され,一部は国際会議などに使用されている。
 以上の3つの候補では,天后宮の竜が最もよいのではないかと思い,今年は,これをトリミングしたものを採用することにした。

感動的なブータン国王の来日メッセージ
 昨年11月に来日した人口約70万の小さな国ブータンのワンチュク国王は,周知のごとく,3.11東日本大震災で大きく傷ついた日本国民に熱烈な励ましのエールを送り,大きな感動を与えた。特に,国会での演説とともに,被災した福島県相馬市の桜丘小学校での子供たちへ向けてのこの国の国旗に挿入されている竜の物語を引用したエールの報道は,誠に感動的で示唆に富むものであった。
 いわく,「竜は私たち一人一人の人格の中にいる。そして自分の経験を食べて成長し,年を重ねれば重ねるほど強くなる。私たちは,常に自分の竜をコントロールしないといけない」と。

東日本大震災の経験に学ぶ
 ところで,兎角『のど元過ぎれば熱さを忘れる』になりがちな昨今,失敗学や危険学が重要視されている。
 昨年の東日本大震災に伴う福島第一原発事故の経験から,私たちは一体何を学んだであろうか? 原子力エネルギーにどう向き合うべきか? これまでのライフスタイルを反省しなくてよいのか? 真の生活の豊かさとは何なのか?……等々。
 今年は,ブータン国王の竜の話にも因み,過去の貴重な経験に十分学び,もっともっと賢く行動したいものである。



このサイトの文章、画像などを許可なく保存、転載する事を禁止します。
(C)Kagoshima City Medical Association 2012