=== 新春随筆 ===

グラスゴー,ロンドンそしてナイチンゲール博物館



鹿児島大学医学部保健学科
母性・小児看護学講座 教授 
                   吉留 厚子

 
写真 1 グラスゴーの街

写真 2 グラスゴー大学

写真 3 学会会場前

写真 4 ビッグベン

写真 5 セント・トーマス病院

写真 6 ナイチンゲール博物館入口


 2011年6月にイギリスのグラスゴーで開催された20TH WORLD CONGRESS FOR SEXUAL HEALTHで演題を発表しました。今回は,エミレーツ航空,ドバイ経由でグラスゴーまで移動したため,ドバイで5時間ほどトランジット時間がありました。ドバイ空港は24時間開港しているので,大勢の人で賑わっていましたが,残念ながら街を楽しむことができませんでした。エミレーツ航空は評価が高いことを知っていましたが,確かに評判どおりのサービスで,特に機内のエンターテインメントの設備は充実し,新作映画を楽しむことができました。6月は初夏の季節ですが,到着したグラスゴーはとても寒く,同行した友人2人は早速防寒用の衣類を購入したほどです。幸いに,私は十分な防寒具を用意していたので,旅行中は問題なく過ごすことができました(写真1,2)。
 日本人は数十人しか参加していない学会でしたので,同行した友人以外の日本の方と話すことはほとんどありませんでした。現在,日本の看護系大学が約200校に増加し,国内の学会は当然のこと,海外でも研究の成果を発表する人が増えてきているように感じます。環境が人を育てるといいますが,前任の大学では大学が開学した直後より教員は海外に出向いていました。海外で研究を発表することは通常のことと思わされるほどです。なかには,学部の卒業研究成果を卒業生に口頭で発表させたという話も聞いています。日本を知り,世界を知るためにも,若い看護職,看護教員には,目を開いて外の世界へ積極的に出向いて欲しいと願っています。グローバルな視点で看護を考える資質を持って欲しいと思います(写真3)。
 グラスゴーの街は小さく,落ち着いた雰囲気のある町並みでしたが,夕方6時頃にはお店が閉まるのには困りました。食事ができるレストランは開いていましたが,閉店していく店を見ながら移動していくのは寂しいものです。ホテルに到着し禁煙ルームをお願いしたのですが,何とホテル全体禁煙でした。後で気付いたのですが,公共の場全てが禁煙で,屋内にいる場合はとても快適に過ごすことができました。でも,道路を歩くと喫煙者が道端でぷかぷかしていたので,煙たい思いをさせられました。いずれ日本も公共の場全て禁煙になるのでしょう。
 ホテルで眠りについた真夜中に,緊急サイレンが鳴り響きました。私はとても驚き廊下に出てみると,中国人らしき人が私の顔を見てワーワーと何か話しかけてきたので,私のせいでこのサイレンが鳴っているのかと思いました。同行者の部屋をノックし,どうしようと思っていたところ,宿泊者の人達がホテルの外に出始めましたので,私達も後に続くことにしました。結局は誤報ということがわかりましたが,私達3人共,自分の部屋のサイレンが鳴っていて,サイレンの原因は自分達の部屋にあると思っていたのです。一人は,この音を止めようと部屋の警報機を何とかしようとしていたと話しました。夜中にサイレンを鳴らしたのは自分達と思ったのは,日本人の特質かなと思いました。他国の人はそうは思わないでしょう。
 ロンドンへ移動しナイチンゲール博物館へ行ってきました。看護の原点はナイチンゲールなので,是非一度は訪れたいと思っていました。テムズ川をはさみ,ビッグベンの向かい側にあるセント・トーマス病院の一角に博物館がありました(写真4,5,6)。ちょうど数人の小学生が先生に連れられて訪れていました。この地で,初めての看護学校が設立されたのを考えると歴史の重みを感じました。数十年前,私が学生の頃に,ナイチンゲールのことについて講義を受けたときはぴんとこなかったのですが,今,看護の原点はナイチンゲールであり,色あせることはないと思わされます。年齢を重ね,経験を重ねることによりわかることができたのかもしれません。「Nursing is an art ―Florence Nightingale」と書かれたマグネットを買い,研究室に貼っています。
 23年前にロンドンへ旅行に来ましたが,忘れていた記憶の断片を今回はつなぐことができました。歴史の重みを再認識させられたイギリスへの訪問でした。 


















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