倉敷から鹿児島に帰って宇宿で開業し,あっという間に9年目となりました。
昨年は,大所帯の紫南支部長を若輩者である私が仰せつかり,1年を通して医師会活動をさせて頂くことで,沢山のことを学ばせていただきました。
1年間の大役を終えてホッと油断しているところに,現在,紫南支部副支部長をされている,うすきクリニックの楊 宏慶先生よりお電話をいただきました。
「先生,次のリレー随筆を書いてもらえませんか? 紫南支部会員は書いてる人が少ないみたいなんです…(^_^;)」
紫南支部として…と言われると断る理由が見当たりません。楊先生の上手な作戦で,リレー随筆のたすきを受けることになりました。
そこで今までの諸先生方のリレー随筆を読み返してみると,皆さんの多才さ,趣味に対する深い造詣,また学術を追求する真摯な姿があり,私みたいなものが筆を取ってよいものかと改めて思いましたが,もともと“随:随に(まにまに)”という漢字は“成り行きに任せる”という意味のようなので,ここからは気楽に書かせていただきたいと思います。
ちなみに…
皆さんは開業医の激務をこなしながら仕事中1日何歩くらい歩かれていますか?
私は,開業する前は,川崎医大附属病院皮膚科学講師として働いていました。
巨大な大学病院を,医局(5階)⇔外来(2階)⇔病棟(12階)⇔食堂(8階)⇔研究室(5階)⇔医学学生講義棟⇔リハビリ学生講義棟とあちこち行き来しながら,週に1回は医局の仲間とテニスをしていた頃の私は,かなり体力があったように思います。
ドイツ・デュッセルドルフに研究留学していた2年半は…
自宅のあるBagel strasseから研究所のあるAuf'm Hennekampまで,片道約7kmの道や中心部への道を,古道具屋でみつけた安い自転車を漕いで,ベンツやBMW・アウディといった高級車と同じ車道を併走して走り回っていたあの頃…私は確かに人生の中で一番スラッとしていました。
あんなに忙しく感じていた大学病院での職務より,開業した現在のほうが朝から晩まで診察室の椅子に座りっぱなし。今は,大学病院にいた時には考えられない数の患者さんを診察し,皮膚科の繁忙期である夏場は朝明るいうちから夜暗くなるまで,ずっとずーっと座りっぱなし。歩くといったら診察室から4つの処置室までと,2階の自宅の間の階段だけ。試しに買った最新版の歩数計は,1日仕事をしてもたったの1,500歩!!
おまけに,鹿児島に帰ってきたとたんに,夜遅くまで天文館で飲むわ食べるわ飲むわ…。
こりゃあ昔スキーで痛めた持病の腰痛もひどくなるわけだ。
もともと,体を動かすのは大好きな性分です。
中学からはバスケ部に所属して高校ではキャプテンに。大学ではウィンドサーフィン部,スキューバダイビング。社会人になると一時ゴルフに夢中になり,冬はスキーと常に体を動かしていました。妻と2人で毎週のように行った鳥取の大山スキー場。強行な日帰りスキーで,朝一番のリフトに乗り,2人でインカムつけてお互いのすべりを後ろからチェック。お互いに上達を目指したあの頃。
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写真 1 Zermatt(ツェルマット)
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写真 2 シャモニーを見下ろす
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写真 3 グリンデルワルト
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写真 4 氷河スキー
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新婚旅行は,雄大なマッターホルンの麓,美しいスイスの街Zermatt(写真1)。
そんな美しい街でも,私たち夫婦はガイドをつけて毎日合宿のように滑りまくり。
山頂からイタリア国境を越えて下りるチェルビニアへの最長滑走距離は約16km!!
このロングクルージングは爽快の一言です!!イタリアでひとしきり買い物してリュックサックに詰め込み,再び山頂に戻ってスイス側に戻る遠行スキーはさすがにヘトヘトになりましたが,スキーの思い出の中では最高の思い出のひとつです。
ドイツ留学中は冬になると体が疼き,フランスのトロワバレーやモンブランを望むシャモニー(写真2),アイガー北壁を望むスイスのグリンデルワルトへ(写真3)。
シャモニーでは“クラブメッド(後述)”に宿泊して優雅なスキーリゾートスタイルを満喫。ここでは氷河スキーを生まれて初めて体験しました!!山頂に着いたらまずガイドと命綱をつけて,数百メートル山の峰を歩きます。右に落ちても左に落ちても命を落とす横幅たった数メートルの峰を歩いて氷河に辿り着いたら,広大な氷の上を果てしなく果てしなく1日かけて滑り降ります。「カリカリッ」と音を立てて滑る氷河スキー(写真4)。氷の裂け目(クレバス)を避けながら,時々ガイドが立ち止まっては真っ青なクレバスの中を覗かせます。巨大なクレバスに落ちれば間違いなく命を落とすそうですが,ガイドの後を付いて延々と氷の上を滑る氷河スキーは格別なスキーのひとつです。
スイスのグリンデルワルトでは,登山列車を乗り継いで,一気に標高3,454mのユングフラウヨッホへ。麓の街では雨が降っていてガッカリしていても,車窓から見える雨は標高が高くなるに連れて目の前で大粒の雪へと変わっていきます。山頂のスキー場に着いた頃は全てが雪景色で,アイガー・メンヒ・ユングフラウのアルプス三山が私たちを待ち受けてくれています。
ヨーロッパアルプス:全てが夢のような時間です。
雪の無い鹿児島に帰ってきた我が家の冬の最大イベントは,毎年正月に行く“Club Med Sahoro(北海道)”。クラブメッド(地中海クラブ)はヨーロッパを拠点として,全世界のリゾートに宿泊施設を構える一大ホテルチェーンです。日本では北海道のサホロと石垣島にあります。ここに宿泊すると,ビュッフェスタイルの毎日の食事もタダ。食事のときに飲むジュースもビールもワインも全てタダ。夜のバーで飲むカクテルもタダ。毎日行われるショーも,スキースクールもスノーボードスクールも,子供を預かってくれる託児所も,子供のスキースクールも…etc. そう,全てがinclusiveなのです。ここに全国から集まるスキー大好きな家族は皆がパワフルで,飲んでも食べても翌日のスキーではかっとびます。
我が家も例にもれず,4人それぞれが毎日,それぞれの技術にあわせたスキークラスに入ります。初め小学2年生だった長男は,子供クラスの初級から中級・上級クラスへ,とんとん拍子にステップアップし,高校1年生となった今や父親と同じ大人の上級クラスです。息子にはまだまだ技術的に負けないものの,あと数年もすれば間違いなく私を追い抜いていくでしょう。ひょっとすると,いま小学校3年生の娘も…。
このままではいけない!
食べるわ飲むわ…ではいけない!!
1日1,500歩…ではいけない!!!
改心した私は,いつでもどこでも最新版の歩数計をポケットに忍ばせながら,1日最低10,000歩の目標を定めました。
朝は妻と一緒に紫原の山?を上って片道2kmのドイツパン屋さんへのウォーキング。
昼休みに時間があれば近くのジムに行ってマシントレーニング。
週に2回はジムで“ボディパンプ”という筋肉系のスタジオトレーニング。
週1回は体の中心のインナーマッスルを鍛えてコアを安定させる“ピラティス”。
全てが,ライバルの子供たちにスキーで負けないために!
仕事が終わって10,000歩を超えていない日は,家の周りを3kmから5kmのランニング。
いつしか始まったこんな習慣。いつまで続くかと言いながら,ウォーキングに関しては始めて1年が経ちました。
ここまでしても,定期的に抑えきれない“食”と“飲”の欲求で,なかなか体重は減りませんが,心なしか最近は持病の腰痛が出なくなったような気がします。
からだ動かさなくちゃ…
| 次回は,まごころ内科クリニックの早川 仁先生のご執筆です。(編集委員会) |

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