編集後記

 政治的にも経済的にも迷走を続ける日本ですが,今年の台風第15号はかなりの迷走台風でした。9月13日に発生し,暴風域を持たぬまま沖縄近海で停滞,一旦南下し,狭いながらも暴風域を作った後にいきなり40ヘクトパスカル気圧を下げ北西へ,関東方面へ向かって猛ダッシュを遂げました。各地で大雨をもたらし,被災地では仮設住宅が浸水するという悲劇も生みました。
 台風が迷走する理由の一つに「藤原の効果」というものがあるのだそうです。『2つ以上の台風(今回の場合16号)が接近して存在する場合に,台風がそれらの中間点のある点のまわりで相対的に低気圧性の回転運動をすること』と気象庁のホームページでは説明されています。それに加えて今年は偏西風が北に蛇行しているため,台風を流す上空の風が弱いのも停滞を生んだ理由のようです。最近は鹿児島県本土には台風がやってこなくなりました。嘗ては『台風銀座』という言葉があった記憶がありますが,景気が悪いと台風さえ来てくれないのかもしれません。
 今月の「誌上ギャラリー」はコスモス風景です。山肌と思われる傾斜地一面に色づいています。小国コスモス村は残念ながら3年ほど前に閉園したとのことですが,コスモスは放っておいても種が落ち,また自生すると思われます。中に入ることは出来ないのでしょうが,Google Earth的に見ると今年も一面に花を咲かせているのが見えたりして。
 「論説と話題」では,本年6月30日に開催されました,日本医師会第95回定時総会での日本医師会 横倉義武副会長の特別講演「日本医師会の医療政策」が18ページに亘って掲載されています。東日本大震災の特徴として,津波被害における死体検案チームの必要性,亜急性期の医療活動としてのJMATの長期的派遣活動が挙げられています。阪神淡路大震災の教訓としてDMATを充実させてきた我が国ですが,地震災害の形態が変わることで新たな教訓を得てしまいました。あれから半年が過ぎましたが,災害に対応するための日本医師会の要望・提言が,当時の防災担当大臣であった松本龍氏になされており,後の辞任会見を思い出すと,短いながらも時の流れの速さを感じました。ほかDPC制導入後の問題,医療の市場原理主義化への危惧,医師の養成および質の保証などについて述べられていますが,日本の医療制度も迷走しているようです。
 「学術」のコーナーでは糖尿病の診療内科的アプローチと題して瀧井先生よりご寄稿いただきました。摂食障害を併発した1型糖尿病についてのお話は,研修医時代にわずかに経験しただけの心療内科ではありますが,さぞ大変だろうと推察されました。またアミラーゼを産生する多発性骨髄腫(そんなのあるんだ!?),緊急手術で救命し得た激症の急性小脳炎など貴重な症例呈示ありがとうございました。
 「鹿市医図書室」のコーナーでは植松先生が内田麟太郎氏の詩集を紹介されています。平仮名で書かれた「ぼくたちは」という詩からは,あいだみつお氏風の印象を持ちましたが,内田氏のホームページをみて驚きました。自己紹介と称し,「父は桃太郎。母はかぐや姫。妹は性別不詳…」などなど,「絵詞作家(えことばさっか)を自称する容姿は小柄なおじさん」だそうです。まぁ一言でいえば「へんなおじさん」風でしょうか。一度ホームページをご覧あれ。
 「鹿市医郷壇」のテーマは「旅」でした。九州新幹線全線開通から半年が経過し,「福岡まで近くなったなー」と思いつつ,行けていません。旅に一番必要なものは,心の余裕と時間だなとつくづく思います。でも旅は行くまでが一番楽しいもの。今度行く時のことを思い浮かべて,楽しむことにします。

                                    (編集委員 山口 剛司
                                                                                                        

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