天
清滝支部 鮫島爺児医
安月給倹し女房ん腕で頼っ
(やすげっきゅ 倹しおかたん うでたよっ)
(唱)少ね小遣けで亭主も協力
(唱)(すっねこつけで とともきょうりょっ)
生活費の支出は、衣食住の他にも税、教育、医療など、様々でとても多いです。
その生計の基盤となるのは収入ですが、安い給料の中での、赤字を出さない遣り繰りは、また大変なものです。
その主役は、無駄遣いをしないで質素を旨とする倹しい妻であり、所帯繰(しょてぐ)いを安心して
任せられ、感謝されています。
地
原良 龍虹
倹しゅせち今は身い沁しん祖母ん教え
(倹しゅせち 今は身いしん ばん教え)
(唱)気付たや直き実践じゃいが
(唱)(きぢたやいっき 実践じゃいが)
今、社会ではエコや節電といった生活環境の見直しが、実践されています。
戦前戦後の貧しい時代を体験してきた人たちは、質素、倹約は当たり前のことで、その口癖だった倹しさの教えを、思い出しています。浪費や贅沢は、できる人とできない人がいますが、その加速について考える、いい機会かもしれません。
人
城山古狸庵
倹し青年履た靴下あ指が出っ
(倹しにせ へた靴下あ ゆっがでっ)
(唱)穴を縫ちょれば満点じゃて
(唱)(穴をぬちょれば 満点じゃて)
飲み会などの座敷での、人が集まる場面でしょうが、今どき珍しい光景です。
私も昔経験があり、通夜に行った時靴下の穴に気付いて、なんとか隠して座ったことを思い出しました。
惜(あった)れという気持も大切ですが、身だしなみで恥をかくことがないように、気を付けたいです。ほのぼのとした句です。
五客一席 上町支部 吉野なでしこ
倹しゅせっ安月給でマイホーム
(倹しゅせっ安月給でマイホーム)
(唱)周囲の衆共がそらけ驚っ
(唱)(ぐるいのしどが そらけたまがっ)
五客二席 城西 桃花
晩酌も倹しゅ仕送ゆ精一杯しっ
(だいやめも 倹しゅしおくゆ せっぺしっ)
(唱)足しすったっち子もアルバイト
(唱)(たしすったっち 子もアルバイト)
五客三席 武岡 志郎
娘んジャーじょ母親は普段着倹し繰い
(こんジャーじょ かかは普段着 倹しくい)
(唱)腹が窮かでゴムを緩めっ
(唱)(腹がきっかで ゴムをゆるめっ)
五客四席 霧島 木林
節電ち倹し暮らしで熱中症
(節電ち 倹し暮らしで ねっちゅうしょ)
(唱)体が一番で加減ぬせんな
(唱)(体がいっで 加減ぬせんな)
五客五席 紫南支部 紫原ぢごろ
度を過ぎた倹し交際は吝嗇ち見えっ
(度を過ぎた 倹しつっけは けちみえっ)
(唱)やっとかやっち見せた大て寄付
(唱)(やっとかやっち 見せたふて寄付)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
倹し祖母も孫にゃばったいけ負まけちょっ
(倹しばも 孫にゃばったい け負まけちょっ)
倹しどんけちじゃ無かとが良か女房
(倹しどん けちじゃなかとが よかおかた)
倹しゅしっそいでん借金な減いもせじ
(倹しゅしっ そいでんロンな へいもせじ)
原良 龍虹
安物買倹しつもいが金捨せ
(やすもんげ 倹しつもいが ぜんうっせ)
倹しゅすもやっぱい空ん貯金箱
(倹しゅすも やっぱいからん 貯金箱)
倹し家内新聞よっかチラす見っ
(倹しけね 新聞よっか チラすみっ)
城山古狸庵
使こ捨てを三度使こちょい倹し医者
(つこすてを 三度つこちょい 倹し医者)
倹しこっ硬貨が出っきた熨斗袋
(倹しこっ どろがでっきた 熨斗袋)
上町支部 吉野なでしこ
倹しこっ検尿テープ二ち割っ
(倹しこっ 検尿テープ ふたちわっ)
ドラ息子父母は倹して苦労知らず
(ドラ息子 おやは倹して くろしらず)
城西 桃花
エコ車倹し燃費ち道路ちょ威張っ
(エコぐいま 倹し燃費ち みちょいばっ)
夜祭いじゃ倹し光で舞うホタル
(よまついじゃ 倹し光で もうホタル)
紫南支部 紫原ぢごろ
節電で倹し昔を思め出せっ
(節電で 倹し昔を おめだせっ)
新所帯は倹し暮らしも苦いならじ
(しんじょては 倹し暮らしも くいならじ)
霧島 木林
日頃から倹し生活修行んごっ
(かねっから 倹しせいかっ しゅぎょんごっ)
伊敷支部 矢上 垂穗
蛍雪を思め出す倹し自然エネ
(蛍雪を おめだす倹し 自然エネ)
《雑 吟》
武岡 志郎
原発が絶対は無ち証明せっ
(げんぱっが 絶対は無ち いっかせっ)
涼し場所猫が居っ所け屈んみっ
(涼し場所 猫がおっとけ かごんみっ)
国技言ちゅが外国力士し頼い切っ
(国技ちゅが がいこっりきし たよいきっ)
作句教室
今月号の投句者数は、最近では最も多い九名で、誌面がとても賑やかでした。
それは、常連の郷句人に加えて、新人の方の投句が増えたことによるもので、大変嬉しく思っています。
薩摩郷句を読むのも楽しいですが、詠むのはもっと楽しいです。自分の作品が活字になって載る喜びは、その作者にしか味わうことはできません。
自分の思いを、鹿児島の方言を生かして、十七音字で表現する薩摩郷句を、まず作ってみることが、その第一歩です。
新人の方の字余り等は、添削をして載せていますので、安心して投句ができます。ぜひ、作句に挑戦してみて下さい。
薩摩郷句鑑賞 52
立話しょ聞こち台所ん水じょ止めっ
(たっばなしょ きこちおすえん みじょとめっ)
永徳 天真
台所で、野菜かなんか洗っていたのであろう。ところが、その前の道路で、近所の人が立ち話を始めたわけである。多分、噂話か陰口だったのだろうと思う。
耳を傾けていたのだが、水の音で聞き取りにくいので、水を止めて聞いているのである。立ち話をする方もする方だが、水まで止めて聞く方も聞く方で、思わず苦笑させられる句。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎11 号
題 吟 「 返事(へし)」
締 切 平成23年10月5日(水)
◎12 号
題 吟 「 噂(うわさ)」
締 切 平成23年11月7日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp |
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