天
城山古狸庵
友達が逝っ次ぎゃ俺じゃろち覚悟しっ
(友達がいっ つぎゃおいじゃろち かっごしっ)
(唱)まだまだ元気目標は百歳じゃ
(唱)(まだまだ元気 もくひょはひゃっじゃ)
親族や友人、知人といった身近な人の死に直面すると、誰もが命について考えさせられますし、また葬儀では僧侶から、命の尊さについての法話もお聞きしますが、やがて、日常に流されてしまいます。
年をとった同世代の友達の死を見送る時、今は元気であっても、俺もそろそろかと不安が心を過るという真実味の句です。
地
清滝支部 鮫島爺児医
郷句作いも頑張い友達かあ貰ろ元気
(くづくいも きばい友達かあ もろ元気)
(唱)負けちゃならんち頭を捻っ
(唱)(負けちゃならんち びんたをひねっ)
他の趣味の世界も同じでしょうが、薩摩郷句の魅力に引きつけられて、句作りに励む郷句人は互いに仲間です。
作品作りには生みの苦しみがあり、それだけに出来上がった作品には喜びがあります。発表されたそれぞれの個性的な作品に触れて、さらに良い作品作りをと、自らを奮起させているのでしょう。
人
武岡 志郎
同っ部屋直き友達しない煙草者
(ひとっ部屋 いっきどしない たばこのん)
(唱)気兼ねどませじ吸う限い吸っ
(唱)(気兼ねどませじ すうかぎいすっ)
喫煙者にはまことに肩身が狭いご時世ではありますが、やめられない、とめられないの愛煙家は、全く気にする様子もなく、もくもくと煙をふかしています。
他人同士でも、煙草が縁で、煙草談義に花を咲かせたり、楽しい会話でコミュニケーションがはかれたという、いい結果も出たようです。
五客一席 伊敷支部 矢上 垂穗
定年後仕事の外ん友達が欲し
(定年後 しごっのほかん 友達がほし)
(唱)世界ゆ広ぐい新たな出合い
(唱)(せかゆひろぐい 新たな出合い)
五客二席 城山古狸庵
友達言うが俺だまねけん逢ばっかい
(友達ちゅうが おいだまねけん おばっかい)
(唱)頼られちょっで有難て事じゃ
(唱)(たよられちょっで あいがてこっじゃ)
五客三席 武岡 志郎
友達じゃれば酔漢を叱い叱い連れ帰っ
(友達じゃれば とらをがいがい つれもどっ)
(唱)宅配便に頼んも出来じ
(唱)(宅配便に たのんもでけじ)
五客四席 上町支部 吉野なでしこ
還暦もけ忘れた態の女友達
(かんれっも けわすれたふの おなご友達)
(唱)気持っが若けで艶々しちょっ
(唱)(きもっがわけで つやつやしちょっ)
五客五席 清滝支部 鮫島爺児医
喧嘩友達逝たち聞いたや淋しこっ
(喧嘩友達 いたち聞いたや さびしこっ)
(唱)胸ねぽっかいと 穴が開た如っ
(唱)(むねぽっかいと 穴がえたごっ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
淋んのし飲み屋い行けば友達が待っ
(とぜんのし 飲み屋い行けば 友達が待っ)
チリん地下友達が居ったで耐えられっ
(チリん地下 友達がおったで 耐えられっ)
良か友達も選挙いなれば仲間割れ
(よか友達も 選挙いなれば 仲間割れ)
城山古狸庵
森伊蔵を飲もちし居れば友達が来っ
(もりいぞを のもちしおれば 友達がきっ)
待っけじ友達が来い前へ独酌
(まっけじ 友達がくいまへ ひといじゃっ)
友達が来っ寝巻く着替えっ飲んけ出っ
(友達がきっ ねまく着替えっ のんけでっ)
上町支部 吉野なでしこ
久振い会てん分かった幼な友達
(さしかぶい おてん分かった 幼な友達)
女友達話も弾ん午前様
(おなご友達 話もはずん ごぜんさあ)
紫南支部 紫原ぢごろ
君ち言た友達が偉ろなっ御前様
(わいちゆた 友達がえろなっ おまんさあ)
伊敷支部 矢上 垂穗
人気者何か持っちょいそいは友達
(人気もん ないかもっちょい そいは友達)
薩摩郷句鑑賞 46
木田馬八幡馬場を揺いくえっ
(きだうんま はっまんばばを ゆいくえっ)
柿元棕梠緒
今日は鹿児島神宮の初午祭である。初午祭というが、ほんとは馬頭観音の縁日に行われる祭りで、「馬踊い(うんまおどい)」でにぎわう。
福俵や、柳の繭の餅(めのもっ)それにポンパチをさした飾鞍をつけた馬が、三味や太鼓に合わせて躍る。
この鹿児島神宮(国分八幡)に奉納される馬踊りは、木田の馬が必ず先頭に踊ることになっているようである。下五で、馬の踊りぶりが目に浮かんでくる。
茶柱を拝ごで入試ん子を送っ
(ちゃばしたを おごで入試ん 子を送っ)
中原 天狗
今日から、国公立大学の二次試験、また十日からは公立高校の入学試験が始まる。受験生諸君の緊張した顔が目に浮かんでくるようだ。
その大事な朝、茶柱が立ったので、「これは縁起がよいぞ。どうか合格しますように」と、家を出て行く子の後ろ姿を、祈るような気持ちで、見送る親の心がにじみ出た句。
ただ、ここで、進学を諦めて職に就く生徒たちのために、親もだが、特に学校では温かい目をかけてやることを忘れないでほしいなと思う。
真い受けた冗談き吠えでた曲尺
(まいうけた わやきほえでた ばんじょがね)
長 どんじ
曲尺(短尺・曲尺)のことを、「ばんじょがね」というが、転じて、四角四面で、融通のきかない、堅苦しい人のことをいう。この句の場合は、その人である。
道を曲がる時も、直角に曲がるような堅苦しい人に、冗談でも言おうものなら、それを真に受けて怒り出すかも知れない。冗談も言えない、ユーモアも分からないような人とは、誠につきあいにくいものである。ちょっぴり皮肉もあるし、苦笑させるおかしさもある。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎5 号
題 吟 「 丁寧(てね)」
締 切 平成23年4月5日(火) ◎6 号
題 吟 「 味(あっ)」
締 切 平成23年5月6日(金)
◇選 者 永徳 天真
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鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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