鹿市医郷壇

兼題「心配(せわ)」


(377) 永徳 天真 選




紫南支部 紫原ぢごろ

心配を焼た患者が癒っ旨か焼酎
(心配をえた 患者がゆなっ うまかしょちゅ)

(唱)飲んみゃい顔も誠まこて穏やか
(唱)(のんみゃいつらも 誠まこて穏やか)

 医師は怪我や病気の患者を診察し、適切な治療を行っていますが、怪我や病気もその種類や程度が様々で、中には人命に関わるものもあるでしょう。
 そんな重症の患者を常に心配しながら、誠心誠意の治療によって回復してくると、喜びも一入だろうと思います。
 安堵の実感がうまく表現されています。




清滝支部 鮫島爺児医

保証人印鑑ぬ押てかあ心配な事
(保証人 はんぬちてかあ 心配なこっ)

(唱)悪る考ぐれば寝いもならんじ
(唱)(わるかんぐれば ねいもならんじ)

 保証人とは、ある人の身元や債務などを保証する人のことで、世の中では保証人を立てなければならないことも多いです。その中でも金銭に関する場合は、万一の時は責任を取る保証人が、泣かされることもあるので心配は尽きません。
 保証人になる場合は、相当な覚悟が必要であり、安易に判はつかないことです。




城山古狸庵

墓参い心配をかけたち丁寧洗ろっ
(はかまえい 心配をかけたち てねあろっ)

(唱)来たかち墓ん主も喜くっ
(唱)(来たかち墓ん ぬしもよろくっ)

 親でしょうか、恩師でしょうか。それとも友人でしょうか、墓の主は生前至らぬ本人に、心配りをしてくれて温かく見守ってくれていたのでしょう。
 墓を訪れ、近況を報告したり、過去のことを思い出したりして、墓の主に語りかけながら墓の掃除をしている様子が目に浮かんでくる、心の込められた句です。


 五客一席 伊敷支部 矢上 垂穗

嬉し心配夢ん三億使ことらじ
(うれし心配 夢んさんおっ つことらじ)

(唱)正夢じゃれば言うこちゃ無かて
(唱)(正夢じゃれば ゆうこちゃなかて)


 五客二席 武岡 志郎

何よすっか判らん国に側は心配
(なよすっか わからんくんに はたは心配)

(唱)相当な横柄と全で同等じゃっ
(唱)(じょじょなよんごと まっでずっじゃっ)


 五客三席 城山古狸庵

残業で遅か娘むいめい父と親とは心配
(残業で 遅か娘い 父親は心配)

(唱)夜道ちゃ危ねで迎め行っこっ
(唱)(よみちゃあっねで むかめいっこっ)


 五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ

心配を焼た子が一番に親を看っ
(心配をえた 子がいっばんに 親をみっ)

(唱)迷惑分の恩返しじゃろ
(唱)(迷惑分の 恩返しじゃろ)


 五客五席 清滝支部 鮫島爺児医

爺婆いな心配な孫ほど可愛かこっ
(じばばいな 心配な孫ほど むぞかこっ)

(唱)出来は悪りどんやさし心根
(唱)(でけはわりどん やさし心根)


   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

癌手術時間が長げち心配な家族
(癌手術 時間がなげち 心配なけね)

心配な事何時帰るいか拉致ん家族
(心配なこっ いつもどるいか 拉致んけね)

菅総理心配事ちゃ多えが辞任たせじ
(菅総理 心配ごちゃうえが やむたせじ)


武岡 志郎

初めっの使け母子とめ心配なこっ
(はいめっの つけおやことめ 心配なこっ)

飲んだ度何でん呉れっ妻は心配
(飲んだたび ないでんくれっ かかは心配)


紫南支部 紫原ぢごろ

心配なこっ四島尖閣我が領土
(心配なこっ よんとせんかっ 我が領土)


伊敷支部 矢上 垂穗

天賞を貰ろたは良かが次が心配
(天賞を もろたはよかが つっが心配)


川内つばめ

騒し世い他人ん心配すっ人間いなれ
(せわしよい ひとん心配すっ ひといなれ)


霧島 木林

先か見えん新し事業は心配なこっ
(さかみえん あたらしじぎょは 心配なこっ)



 薩摩郷句鑑賞 45

恋敵きおせろが山ん棒が狂っ
(こいがたき おせろが山ん ぼがくるっ)
               山下須奈穂

 「おせろが山」というのは棒踊りの別称。棒踊りの唄は、「おせろが山」で始まるからである。この踊りは、春祭り、お田植祭り、秋祭りなどに奉納される勇壮な踊りであるが、呼吸が合わないと、棒をくらうようなことになってしまう。
 四人から六人一組で踊るが、その中に恋敵がいたために、むらむらと敵意がわいたのであろう。合わなくなった棒が、恋敵の向こう脛あたりを払ったのかも知れない。


洗れやっめ御馳走が無かでいっき済ん
(あれやっめ ごっそがなかで いっき済ん)
               有川 南北

 「洗れやっめ」というのは、食後の食器などを洗うことである。飽食時代と言われるほど、食生活が豊かになってきた今、若し昔のように油脂でよごれた食器を、木灰などで洗うとしたら、それこそ「洗れやっめ」も大変だろう。今は洗剤はあるし、食器洗い機があるし、老いた人々の目には、ぜいたくな世の中かも知れない。ところでこの句、そういうこととは逆に、御馳走がないので、「洗れやっめ」がすぐ終ってしまうと、おどけているところがおかしい。


腸が出てんまだ抗こ薩摩鶏
(ぞぞわたが 出てんまだむこ けんかどい)
               中村 雲海

 この頃はほとんど見かけないが、蹴爪に特殊な剣をくくり付けて戦わせる鹿児島の闘鶏は、「一の太刀を疑わず、二の太刀は負け」とする示現流的で、いかにも薩摩の気風の出たやり方である。
 俗に喧嘩鶏と言われるくらい、薩摩鶏の闘争心は激しく、ぞぞわた(千尋わたとも言う)を引きずりながらでも戦う。残酷と言えば残酷だが、精悼な薩摩鶏の戦いに、武の国の人々は血を沸かしたのであろうか。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋


薩 摩 郷 句 募 集

◎4 号
題 吟 「 損(そん)」
締 切 平成23年3月7日(月)
◎5 号
題 吟 「 丁寧(てね)」
締 切 平成23年4月5日(火)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
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