=== 新春随筆 ===

続タジン鍋 退路を断った「腹八分目」宣言



NHK鹿児島放送局長

          渡部 孝道

 去年の『鹿児島市医報』の新春随筆で「ヘルシーなタジン鍋で腹八分目」,「通勤コースを変えて歩く距離を2倍にする」ことを実践することで,健康数値の正常化を目指すとの決意を表明しました。その結果はどうだったのか。去年の秋の健康診断の結果を受け取り,そのデータ・数値を刮目しました。そして愕然としてしまいました。血糖値やHbA1c,悪玉コレステロール,さらに血圧の数値が会社に入って最悪の状態になっていたのです。血圧については今まで常に正常で気にしたこともありませんでしたが,下が100に達していました。
 もちろん去年1年間,決意表明通り,通勤距離は2倍にこそなりませんでしたが,歩くことと適度の運動を意識して生活をしてきました。タジン鍋で野菜を摂ることも心掛けました。しかしながら,何故そのような健康状態に陥ってしまったのか。原因ははっきりしています。運動量を上回るカロリーを摂っていたのです。夜の焼酎と食事,朝食時のご飯の量が体重を押し上げてしまいました。タジン鍋にも随分お世話になりましたが,野菜と一緒に必要以上の豚肉を入れてしまいました。要するに腹八分目を守ることが出来ませんでした。
 「とにかく体重を落とさなければ,本当に命にかかわってしまう」真剣にそう考える出来事が,去年の10月に起きました。私と同年齢の知人が,休日の朝ジョギングをしていた際に突然倒れたのです。心筋梗塞でした。一時心肺停止の状態が続き,4日間意識を失っていましたが,倒れた瞬間を目撃していた人達の機転で速やかに病院に搬送することが出来たことなど様々な幸運が重なり,奇跡的に生還しました。幸いなことに後遺症も出ず,今は仕事に完全復帰しています。本人は学生時代本格的な陸上選手で,以前から習慣的にジョギングをしており,倒れた日も前兆となるような体調不良などの自覚症状は全くなかったということです。しかし,今回の入院でコレステロールの数値が300を超えていたことがわかり,医師からは「倒れるべくして倒れた」と言われたそうです。
 私は,11月に知り合いの病院を訪ねました。人間ドックは受けていますが,健康改善のために自分から病院に出向いたのは初めてのことでした。お医者さんと相談した結果,当面血圧を下げる薬を飲むことにしました。それと併行して体重を落としていくことになりました。目標は体重を7s落として先ず当初の70sに戻すこと。そして,可能ならば更に3s,今よりも10s落とすことを目指すことになりました。そのための一日の摂取カロリーについても指導を受けました。
 充実した仕事をするためにも,山登りを楽しむにも,さらには生まれて初めて鹿児島で始めたゴルフを続けるにも,健康であることが大前提です。鹿児島は食べ物が美味しく,焼酎が食欲をそそるため,目標を実現・達成するには,自己管理力,節制する強い信念,そして何よりも継続する力が求められます。当たり前のことですが,実行することの難しさはこの1年間よくわかりました。しかし,鹿児島市内のお医者さんが読まれる『鹿児島市医報』で,2年連続決意表明したわけですから,実行出来なければ「自己管理能力のない人間,嘘つき」と評価されても仕方がないと思っています。
 「腹八分目で体重を落とす」,今年は退路を断った宣言です。




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