編集後記

 1年があっという間に過ぎ師走になりました。日本の政治的,経済的,国際的な安定感がないためか,何か危なっかしい宙に浮いたような1年であった気がします。日本漢字能力検定協会が12月10日に恒例の「今年の漢字」を発表しますが,現時点の私の予想は「高」または「降」ではないかと思います。「高」は史上まれにみる猛暑で,キャベツが高くなった,というような短絡的なものではなく,高齢化社会,円高など「高」の付くニュースや話題が多かった気がします。また「降」は現在の日本経済や国際的な地位が下降気味であることなど,右肩下がりである現在の日本の状態を象徴する漢字だと思います。やや暗い話になりましたが,明るい話題としては南アフリカワールドカップでの侍ジャパンの活躍,夢の微粒子を運んで帰ってきた「はやぶさ」,チリ鉱山事故の奇跡的救出などがありました。本誌が皆様のお手元に届くころには,正解が出ています。
 大浪の池の尾根を伝って登る韓国岳は,冬には行ったことがありません。薄化粧の高千穂峰の風景から,凛とした冷たい空気が感じられる誌上ギャラリーです。龍馬もあの高千穂峰に登ったのですね。
 鹿児島大学呼吸器内科学講座教授に御就任された井上博雅先生より,ご挨拶をいただきました。気管支喘息やCOPDの死亡率の高い南九州ですので,先生の御活躍や,御指導を会員一同期待しております。
 1年を振り返ってということで,各医会会長の先生方から御投稿をいただきました。各医会の共通点としては,勤務医不足,救急医不足で,二次三次医療の受け入れや,夜間救急の問題が深刻化していることです。各医会で努力されているようですが,最後はマンパワーの様です。若い人材を鹿児島に引き留めるよう,我々も努力しましょう。今村先生の韓国会話編は,韓国旅行での即戦力になりそうです。また本会各部門よりの1年を振り返ってでは,新公益法人制度移行,検査センターが何よりも大きな問題となっています。公益法人申請と検査センターは切り離して議論出来ないことで,急を要することでもあります。本誌にも,各理事より報告をいただいていますので,会員の方々には是非目を通していただいて,各区会,支部会で御検討いただければと思います。
 宗教上の理由による輸血拒否患者の手術についての検討を基先生より御報告いただきました。ヘモグロビン2.5g/dlでの血管造影・動脈塞栓術は,術者にとっても強いストレスだったと思います。小児の場合は親権の問題や,医療虐待の問題も絡み,難しい判断を迫られることもあるようです。武元先生より漢方薬による嚥下反射時間の短縮の学術報告をいただきました。誤嚥性肺炎の予防に効果があるとの報告でした。
 鮫島先生より夏の虫,蚊,蚤,虱についての随筆をいただきました。このいずれも病気の媒体であり,医者としては良く知っておくべきものでしょうが,最近はあまり見かけなくなったのも事実です。しかし,最近の女児は髪を伸ばす子も多く,保育園や幼稚園で毛虱が流行ることもあり,髪の毛に付着した卵だけは何度も見ました。診察の後は,気のせいか体が痒くなったりします。安達先生より五分間坐禅の随筆を投稿いただきました。テレビ番組で坐禅により副交感神経が優位になると検証していましたが,ゼンナーと関係しているのかもしれません。リレー随筆は市来先生より娘さんに翻弄される姿と,暑さと甘いものに弱いという真実を赤裸々に紹介していただきました。私もメタボの仲間ですから心配要りません。
 平成22年度救急医療先進地視察の報告がありましたが,鹿児島県のように県域が広く,医師が遍在する場合,高度救命救急センターへの搬送を迅速に行うことが不可欠で,愛知医科大学や岐阜大学の取り組みは参考になると思われます。医学生の多くが救急に興味を持っていることを考えると,鹿児島県にも高度救命救急センターとドクターヘリ事業が早期に実現することを期待します。
 鹿市医郷壇の兼題は「後悔(くけ)」でした。口は災いのもと,天の句のように話し過ぎない方がよさそうです。今回はここまでとします。少し気が早いですが,皆さん良いお年を。

                                    (編集委員 伊地知 修
                                          


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