鹿市医郷壇

兼題「後悔(くけ)」


(375) 永徳 天真 選




 武岡 志郎

思たこちゃ言わんな済まん口に後悔
(おもたこちゃ ゆわんなすまん くっに後悔)

(唱)布団の中で考げちゃ眠れじ
(唱)(布団の中で かんげちゃねれじ)

 思ったことは言うべきでしょうが、 相手がいることですから、 言うタイミングや、 その言い様への気遣いが大事です。
 よくあるケースは、 飲み過ぎて滑らかになった口が、 つい余計なことまで言ってしまって、 場の雰囲気を気まずくすることです。一度だけではない後悔のようですが、 相手への思いやりが第一です。




伊敷支部 矢上 垂穗

如何すか後悔ん塊肥満奴
(いけんすか 後悔んかたまい だんべわろ)

(唱)医者しぇ警告ばしっ貰ろおかい
(唱)(いしぇけいこくば しっもろおかい)

 肥満とは、 体が並みはずれて太ることで、 特異な病気でない限り、 その原因は、 明らかに食事量でしょう。痩せの大食いは、 体質的な例外として、 一般的には、 食べれば食べる程太ります。運動など、 適度なエネルギーの消費をしなければ、 太る一方です。つい食べ過ぎてしまう、 その葛藤が、 中七でよく表現されています。




 城山古狸庵

振り返りゃ俺が人生や後悔だらけ
(ふりかえりゃ おいがじんせや 後悔だらけ)

(唱)今かあじゃいが道ちゃ真っ直ぐじゃ
(唱)(今かあじゃいが みちゃまっすぐじゃ)

 プラス思考で物事を考える人や、 夢や目標に向かって一生懸命努力している人は、「我が人生に悔いは無し」でしょう。
 しかし、 多くの凡人は心が弱く、 いろいろなことに悩み、 そして反省しながら人生の荒波を乗り越えていきます。ああすれば、 こうすればよかったと、 後悔することも、 また人生なのかもしれません。


 五客一席 清滝支部 鮫島爺児医

切符をば切られっからじゃ遅か後悔
(切符をば 切られっからじゃ おそか後悔)

(唱)事故どんすれば大変なこっ
(唱)(事故どんすれば 大変なこっ)


 五客二席 紫南支部 紫原ぢごろ

飲ん過ぎっ痛か頭で後悔をしっ
(のんすぎっ いたかびんたで 後悔をしっ)

(唱)年中んこっじゃ考げもんじゃが
(唱)(ねんじゅんこっじゃ かんげもんじゃが)


 五客三席 城山古狸庵

勝敗を分けたパターに止まん後悔
(勝敗を 分けたパターに やまん後悔)

(唱)弱か心臓で思め切っ打てじ
(唱)(よわかしんぞで おめきっうてじ)


 五客四席 霧島 木林

近道を通っ車を擦っ後悔
(ちかみっを とおっくいまを こすっ後悔)

(唱)あいややったが凄ぜ音がしっ
(唱)あいややったが わぜ音がしっ


 五客五席 武岡 志郎

痩すっ気で買た服かまっで入らじ後悔
(やすっ気で こたふかまっで いらじ後悔)

(唱)こん調子じゃれば捨せ金かも
(唱)(こんちょしじゃれば うっせぜんかも)


   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

医者んなっ難儀は多えが後悔は無し
(医者んなっ なんぎはうえが 後悔はのし)

頼まれっ印鑑ぬ捺てかあ後悔をしっ
(たのまれっ はんぬちてかあ 後悔をしっ)

後悔してん本音は言わん議員さん
(後悔してん 本音は言わん 議員さん)


紫南支部 紫原ぢごろ

メタボ腹食過ぎた後で後悔をしっ
(メタボ腹 くすぎたあとで 後悔をしっ)

マニフェスト拡げ過ぎたが後悔ん原因
(マニフェスト ひろげすぎたが 後悔んもと)

ちんがらっ株が暴落歯痒い後悔
(ちんがらっ かっがぼうらっ はがい後悔)


 霧島 木林

兄弟喧嘩言おごたいごっ言っ後悔し
(きょで喧嘩 ゆおごたいごっ ゆっ後悔し)

何事もやいこちゃやって後悔せんな
(ないごっも やいこちゃやって 後悔せんな)


 城山古狸庵

あん時い判ぬ捺たとが大か後悔
(あん時い 判ぬちたとが ふとか後悔)



 作句教室

 先月号に続きまして、 健康や病気、 医療に関する作品を紹介します。

作品その三

見舞ん御礼退院したち字が躍っ
(みめんごれ 退院したち 字がおどっ)
             樋口 一風


ち忘れっ孫い叱られっ薬飲ん
(ち忘れっ 孫いがられっ くすいのん)
             久永 時盛


認知症んテレビを見ちょっ我ん心配
(にんちしょん テレビをみちょっ わがんせわ)
             樋渡草団子


見舞客もちんちん減った長げ入院
(みめきゃっも ちんちんへった なげにゅいん)
             福山 吉連


流行風邪飲ん平は焼酎で嗽ゆしっ
(はやいかぜ のんべはしょつで うがゆしっ)
             松下 青雲


認知症ん姑と戦ん介護嫁
(にんちしょん しゅとといっさん 介護嫁)
             松元 清流


よいなこっ介護で返す親ん恩
(よいなこっ 介護でもどす 親ん恩)
             満留 ぐみ


素顔に病気じゃ無かち余計な心配
(スッピンに やんめじゃねかち よけなせわ)
             諸木 小春


肌持っが良なっ看病もゆるっなっ
(はだもっが ゆなっかんびょも ゆるっなっ)
             諸木 美舟


医者どんも数ぜ損のた美人の脈
(医者どんも かんぜそこのた シャンのみゃっ)
             山田 竜生


退院日晩酌を先き医者い聞っ
(退院日 だいやめをさき 医者いきっ)
             弓場 正己


脈くば取い医者い家族中ん目が縋っ
(みゃくばとい 医者いけねじゅん 目がすがっ)

胃カメラが中途で止まればびくっしっ
(胃カメラが つとでとまれば びくっしっ)
             吉岡 道場


他人ん衆にゃ出張ち嘘で痔ん手術
(ひとんしにゃ しゅっちょち嘘で 痔んしゅじゅっ)
             米元 年輪



 薩摩郷句鑑賞 43

自在鉤も下ろししゃげんな湯が沸かじ
(じぜかっも おろししゃげんな 湯が沸かじ)
             川崎 門球

 鹿児島の言葉には、 面白い言葉がある。鉄瓶にがよく当たるように、 自在鉤の鉤を下ろすことを、「おろししゃぐっ」という。
 「下ろして上げる」という意味ではない。「下ろして差し上げる」というていねいな言い方でもなさそうである。多分「下ろして下げる」という意味であろう。
 それはともかくとして、 茶を飲んでいけと口では言いながら、 湯を沸かそうとしていない人への、 皮肉がきいている。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋


薩 摩 郷 句 募 集

◎2 号
題 吟 「 心配(せわ)」
締 切 平成23年1月5日(水)
◎3 号
題 吟 「 友達(どし)」
締 切 平成23年2月7日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp
ホームページ:http://www.city.kagoshima.med.or.jp/


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