随筆・その他

リレー随筆

我 が ル ー テ ィ ン ワ ー ク

東区・紫南支部
(うえの耳鼻咽喉科クリニック) 上野 員義
 久々の日耳鼻総会出席。代診をお願いせず,休診にしての出張,いつもとは違う元気なスタッフの声に見送られて出発。旅行中にでも依頼されたリレー随筆の内容を考えようと中部国際空港経由仙台行きの搭乗口付近で,なにげなく出発準備中のB737−500型機を眺めていた。
 小雨のなか,出発準備がほぼ整い,乗客の搭乗が始まる直前に機体の回りを,最終安全確認のためだろう,パイロットが,機体の前脚ギア(タイヤ)から,エンジン,翼,と右回りに機体を目視で確認していた。ハイテク化した機体で目視だけでは異常を見つけることは困難であろうが,最終責任者が,ルーティンワークとして見回ることで現場の緊張感の維持,パイロットとしての責任感の高揚に貢献しているのであろう。
 皆さんの仕事前のルーティンワークは何でしょう。朝礼でしょうか。私は,クリニック前の歩道にあるごみステーションと歩道の掃除です。全くゆかりの無い紫原の地に新規開業した我がクリニックの前は「不幸にも」ごみステーションであった。地域の新参者にとって,ごみステーションの移動は,町内会等いろいろ掛け合っても不可能。当院の近所はアパート・マンションが多く違反ゴミ出しがはびこり,我がクリニック前は紫原で一番汚いごみステーションだという張り紙が貼られてしまう始末だった。
 市役所にお願いしても,昼間に監視人がちょっと来る程度,私が違反ゴミ出しに気づいて注意をしても,一向に改善されない。「ゴミはゴミを呼ぶ。」そこで一念発起し,「紫原で一番きれいなゴミステーションを目指して」,毎朝,診療開始前にゴミステーションの掃除をすることに決意,併せて金属のゴミバサミを持って歩道の掃除も始めた。時に,違法ゴミを期日まで,院内で保管することもある。
 効果は次第に現れ,現在,違反ゴミはゼロではないが,だいぶ少なくなり,ゴミステーションもきれいになってきた。しかし,今でも夜間の違反ゴミだし常習者(隣のマンションのヤンキー夫婦達)との戦いは続いている。
 毎朝ゴミバサミを持って,診療開始前の8:15頃にゴミステーション,歩道,院内駐車場,建物裏と出発機のパイロットのようにチェックしながら,ゴミ拾いしている。「不幸」だと思っていたゴミステーションのおかげで,「幸い」しっかり,我がルーティンワークとして定着し,気持ちよく朝の挨拶をしながら,患者さんを迎えられるようになった。時に「先生ですか!」と驚かれることも度々だが,その際は,「楽しみながらやっていますよ。」と答えることにしている。
 開業して9年目,開業してよかったことの一つとして,朝の掃除のように,自分の意志,責任でルーティンワークを決められ,習慣化できるものを持てたことである。ルーティンワークとして朝の掃除をするようになり,地域に溶け込め,仕事も軌道に乗ったような気がする。まさに「災いを転じて福となす。」である。
 最近は,仕事の締めもルーティンワーク化している。それはスタッフが帰った後の男子トイレの床の掃除です。男性はだれでも自覚されていると思いますが,男子トイレの床は,どうしても多少の「おこぼれ」があり汚れやすいものです。スタッフもちゃんと掃除をしてくれていますが,男性の責任として最後もう一回男性トイレの床をふき,クリニックの鍵を閉めるようにしている。
 最後に,仕事同様,大事にしているゴルフに話が飛ぶが,ゴルフにおいてもプレショット(パット)・ルーティンを意識・集中するようになってから,スイング,パットも上向いてきたように感じる。親友で,ゴルフのライバルでもあるN先生は,「前戯」と評されるが。
 


次号は、伊敷台内科の山田誠一郎先生のご執筆です。(編集委員会)




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