天
上町支部 吉野なでしこ
術後ん目皺が増えたちとんだ苦情
(じゅっごん目 しわが増えたち とんだ苦情)
(唱)冗談どん言て医者をからこっ
(唱)(わやっどんゆて 医者をからこっ)
医師と患者の信頼関係を深める上で、問診以外の会話も時には大事であり、それがコミュニケーションだと思います。
白内障の手術をして目が良く見えるようになって、鏡に写る皺の多さに驚かれたのでしょう。そのことを告げられても医師は苦笑いですが、このユーモアが郷句の恰好のネタとなりました。
地
大崎町 植村聴診器
イライラん苦情も言えんじ待っ病院
(イライラん 苦情もゆえんじ まっびょいん)
(唱)血圧ちゃ上がっ険し顔れなっ
(唱)(けつあちゃあがっ けわしつれなっ)
患者さんの多い病院では、診察の待ち時間は覚悟の上ですが、常連の患者は待つことにも慣れています。
診察時間は、病気や治療の内容で違いますが、医師のペースによる影響も大きいようです。たまに怒って帰る人もいますが、これは渋滞の時とよく似ていて、待つ患者の心理がよく詠まれています。
人
清滝支部 鮫島爺児医
苦情を言う姑も居らんじ寂し盆
(苦情をゆう かかも居おらんじ さびし盆)
(唱)今一度声を聞こごっあらい
(唱)(まいっど声を きこごっあらい)
身近な人が逝くなってしまえば、その人の優しさや偉大さに気付かされたり、後悔することも多いものです。
何かと口出しをして賑やかだっただけに、ぽっかり穴が開いたような気分の初盆ですが、仏壇や墓の前でいつでも語りかけることができます。
しみじみとした真実の句です。
五客一席 伊敷支部 矢上 垂穗
苦情一っいっ言てみたが気が重し
(苦情ひとっ いっちゅてみたが 気がおぶし)
(唱)時にゃ嫌われ事も言わんにゃ
(唱)(時にゃきらわれ ごっもゆわんにゃ)
五客二席 武岡 志郎
繁盛い店苦情を愛情ち糧いしっ
(はやい店 苦情をぼんのち かていしっ)
(唱)お客か神様思もえち家訓
(唱)(おきゃかかんさあ ともえち家訓)
五客三席 伊敷支部 谷山五郎猫
無理な苦情腹がきいわっどん笑るっ
(むいな苦情 腹がきいわっ どんわるっ)
(唱)物ん言方もなっちょらんない
(唱)(ものんゆかたも なっちょらんない)
五客四席 錦江支部 城山古狸庵
慣れた苦情役所は何もしよたせじ
(慣れた苦情 やっしょはないも しよたせじ)
(唱)感覚が少すずれっおいかも
(唱)(かんかっがちす ずれっおいかも)
五客五席 紫南支部 紫原ぢごろ
選挙前苦情は何でん引っ受けっ
(選挙前 苦情はないでん ひっうけっ)
(唱)貴重ね一票いないがち計算
(唱)(たしねいっぴゅい ないがちさんにょ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
祖父の苦情慣れた祖母様は笑るっ聞っ
(じいの苦情 慣れたばさまは わるっきっ)
仕事ちゃせじ苦情ん多え奴が何処けも居っ
(しごちゃせじ 苦情んうえとが どけもおっ)
苦情を言で背負わせられた好かん役
(苦情をゆで かるわせられた すかんやっ)
上町支部 吉野なでしこ
年度末道路工事にゃ皆ん苦情
(ねんどまっ 道路工事にゃ みなん苦情)
孫ん守甘かち子かあ厳か苦情
(孫んもい あまかち子かあ きっか苦情)
大崎町 植村聴診器
犬と猫苦情合戦の隣同士
(いんと猫 くじょがっせんの とないどし)
集落の苦情事つ年中仕出す奴
(しゅうらっの くじょごつねんじゅ しだすやっ)
武岡 志郎
小め苦情を盥回ししっ大となけっ
(こめ苦情を たれまわししっ ふとなけっ)
児童ん前でイチャモンの様な苦情を言っ
(こん前で イチャモンのよな 苦情をゆっ)
錦江支部 城山古狸庵
苦情を言け行た奴が役を負るっきっ
(苦情をゆけ いたとが役を かるっきっ)
二度三度注射い苦情を言わならじ
(二度三度 注射い苦情を ゆわならじ)
紫南支部 紫原ぢごろ
苦情ん度前向き検討言う役所
(苦情んかし 前向きけんと ちゅうやっしょ)
苦情ん多け党首討論品が無し
(苦情んうけ 党首討論 ひんがのし
伊敷支部 谷山五郎猫
プロ歌手を気取った風呂い苦情が来っ
(プロ歌手を 気取った風呂い 苦情がきっ)
作句教室
不適当なことばについて
ことばで表現する薩摩郷句では、様々なことばが使われていますが、その中に不適切なことばが使われていないかどうかについて考えてみたいと思います。
たまにテレビで「不適切なことばがありましたのでおわびします」と耳にすることがありますが、新聞や放送などの報道機関では、差別語や不快語などと言われる不適切なことばを使わないように、その用語が厳しく規制されています。
薩摩郷句でも、下品・卑猥・罵倒・嘲笑・差別といった内容の句は詠むに値しないと戒めていますし、当然不適切なことばを使うべきではないと思います。
ここに平成五年に出版された、さつま狂句テレビ版の中から作品を見てみます。
風か邪ぜ流行ばやい喜よろくだ藪や医ぼも熱ねつ出だせっ
(風か邪ぜ流行ばやい喜よろくだ藪や医ぼも熱ねつ出だせっ)
三さん十じゅ後ご家け嘘うそん兄きょ弟でどが泊とまい来きっ
(三さん十じゅ後ご家け嘘うそん兄きょ弟でどが泊とまい来きっ)
煤すすけ女房かけ精しょ霊ろあ二に号ご宅がへ先さき訪ことっ
(煤すすけ女房かけ精しょ霊ろあ二に号ご宅がへ先さき訪ことっ)
この中の「藪医者」「後家」「二号」などのことばは、現在報道機関では不適切なことばに該当していると思います。
十数年前には普通の感覚で詠まれていたことばですが、近年差別などの問題からことばに対する意識は変化しています。
不適切なことばの基準は定かではないですが、何気無く使っていることばが時には傷付けたり、不快にさせることも有るということを認識する必要があります。
ことばは生きていますので、作句での表現の際には、思いやりや節度を大事にするという心遣いを忘れてはならないと思います。
投句作品の中に「小役人」ということばがありましたので考えてみました。
薩 摩 郷 句 募 集
◎10 号
題 吟 「 胸(むね)」
締 切 平成21年9月7日(月)
◎11 号
題 吟 「 欠点(あら)」
締 切 平成21年10月5日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:t01-arimura@city.kagoshima.med.or.jp |
 |