天
武岡 志郎
口軽りて真実の話しゃしやならじ
(くっがりて 真実のはなしゃ しやならじ)
(唱)一度非道で目い遭うたで用心
(唱)(いっどひでめい おうたでゆじん)
上五の「口軽(くっが)りて」とは、「口の軽い人に」という意味で、俗に言うお喋りのことですが、こんな人に、ここだけの話や秘密を話したら、たちまち噂となり、時には尾鰭が付けられて真実を捩曲げられることもあるでしょう。
大事な話をする時は、相手をよく見て判断しなさいと、人生訓のようです。
地
清滝支部 鮫島爺児医
末期癌真実ちゃ言えんじ笑るっ診っ
(末期癌 まこちゃゆえんじ わるっみっ)
(唱)大丈夫じゃがち言うとが精一杯
(唱)(だいじょっじゃがち ゆうとがせっぺ)
どうも体の調子がおかしいと来られた患者の検査結果が、最悪の末期癌でした。
定期的に健康診断を受けていたのかどうか、また何らかの兆候があったはずだろうにと、悔やまれてしかたがありません。
医師は本人には癌告知をしないと判断して、その真実が言えないことに葛藤しながら、笑顔で懸命に対応しています。
人
上町支部 吉野なでしこ
裁判で真実一っが判らんじ
(裁判で 真実ひとっが わからんじ)
(唱)糸口ちゃ何処か有ろそなもんに
(唱)(いとぐちゃどっか あろそなもんに)
裁判に関する報道を見ていて感じることは、なぜ真実が明らかにならないのかという疑問です。また被告人の嘘の供述に振り回されたり、検察と弁護側双方の争いによる長期の裁判や冤罪判決といった問題もあり、裁判の難しさを感じます。
奇しくも裁判員制度がスタートする時、裁判について考えさせられる作品でした。
五客一席 錦江支部 城山古狸庵
献金の真実ちゃ秘書しか知たんこっ
(献金の まこちゃ秘書しか したんこっ)
(唱)闇せえ葬むらるそな真相
(唱)(やんせえほうむ らるそなしんそ)
五客二席 上町支部 吉野なでしこ
オフレコは聞いた言わんち無か真実
(オフレコは 聞いたいわんち なか真実)
(唱)都合ん悪り事ちゃノーコメントち
(唱)(つごんわりこちゃ ノーコメントち)
五客三席 大崎町 植村聴診器
世界一つ狙ろた野球が真実ちなっ
(世界いつ ねろた野球が まこちなっ)
(唱)侍日本が見せつけた意地
(唱)(さむれにほんが 見せつけた意地)
五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ
イチローを真実の侍じゃち褒めっ
(イチローを 真実のさむれ じゃちほめっ)
(唱)一振い決めた千両役者
(唱)(ひとふい決めた せんりょうやっしゃ)
五客五席 川内つばめ
真実けな北朝鮮のすっ事ちゃ気がしれん
(真実けな きたのすっこちゃ 気がしれん)
(唱)時代錯誤も甚だしこっ
(唱)(じだいさっごも はなはだしこっ)
秀 逸
紫南支部 紫原ぢごろ
癌患者じぇ真実つ告げかてひと悩ん
(かんじぇ まこつつげかて ひとなやん)
オレオレち真実じゃろそな非道か罠
(オレオレち 真実じゃろそな ひどかわな)
郷句で天賞真実じゃろかち目を擦っ
(くでてんしょ 真実じゃろかち 目をこすっ)
錦江支部 城山古狸庵
永田町ん真実ちゃ有ろそな無かろそな
(ながたちょん まこちゃあろそな なかろそな)
人工衛星ち言たどん真実ちゃ弾道弾
(えいせいち ゆたどんまこちゃ だんどだん)
清滝支部 鮫島爺児医
衛星は知らん真実つば送っ来っ
(衛星は しらんまこつば おくっきっ)
政治犯真実ちゅ言わんじ虚勢ゆ張っ
(政治犯 まこちゅゆわんじ きょせゆはっ)
大崎町 植村聴診器
電話口ち真実じゃ思もた詐欺ん罠
(電話ぐち 真実じゃともた 詐欺ん罠)
議員秘書嘘を真実ち白を切っ
(議員秘書 嘘を真実ち しらをきっ)
伊敷支部 矢上 垂穗
イチローの腹もまくじい真実野球
(イチローの 腹もまくじい まこっやきゅ)
秘書どんにゃ偶い邪魔じない真実事
(秘書どんにゃ たまいまじない まこっごっ)
伊敷支部 谷山五郎猫
検察よ真実の悪人を焙い出せ
(けんさっよ 真実のわるを あぶいだせ)
こげな顔じゃっどん真実ちゃ優し心根
(こげなつら じゃっどんまこちゃ やさしねしゅ)
上町支部 吉野なでしこ
ちょっしもた真実の愛ち夫婦いなっ
(ちょっしもた 真実の愛ち みといなっ)
武岡 志郎
国政を担た真実が献金に翳ん
(国政を にのた真実が ぜにかすん)
作句教室
ある郷句の句会の模様を紹介します。
句会では、出席者が課題で作った作品を投句し、用紙に清書した作品を貼り出して、係がその作品を読み上げ、その中から秀句と思う作品を互いに選んで投票し、その得点で作品の評価を競います。
今回は、課題が「痛(い)て」と「靴(くっ)」で、出席者が11名、自作品を除く10作品の中から3句を選ぶ互選の結果、その中の高得点句と点数が入らなかった0点句を比較してみたいと思います。
痛て言えば生きちょっでよち手荒れ医者
(いてちゅえば いきちょっでよち てあれ医者)
泣た幼児を母親ん抱っこで痛とは無し
(ねたちびを かかんだっこで いとはのし)
靴つ美事つ磨げっ呉れちょい定年日
(くつみごつ みげっくれちょい 定年日)
新か靴をはいめっ履んでちょっしもた
(にかくっを はいめっふんで ちょっしもた)
各課題の前者が8点と6点で、後者が0点句でしたが、高得点句は作者の気持ちが作品の中に詠み込まれていて、この郷句味が評価されたのではないかと思います。評価の鍵は、郷句味の共感です。
薩摩郷句鑑賞 27
ころべ取い道の土手どま掘い崩えっ
(ころべ取い みっのずべどま 掘いくえっ)
渡辺ハルエ
「ころべ」または「ごろべ」というのは「ツチグリ」のこと。土手などの土の中にある、ビー玉くらいのキノコの一種で、煮て食べるとなかなかおいしいものである。後には星状にはじけて、中から胞子が出てくる。
その「ころべ」を取るために、土手を掘りくずしてしまったというわけだが、「ころべ」を知らない人も多いかも知れない。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎7 号
題 吟 「 おてちき 」
締 切 平成21年6月5日(金) ◎8 号
題 吟 「 苦情(くじょ)」
締 切 平成21年7月6日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:t01-arimura@city.kagoshima.med.or.jp |
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