随筆・その他

リレー随筆

『日       課』

南区・谷山支部
(児玉整形外科クリニック) 児玉 太郎

 私の朝は家の近くの遮断機の音で始まる。指宿枕崎線の始発列車が5時15分にカンカンカンという警報の音とともに通り過ぎていく。この音が私の目覚まし代わりだ。ボーとしながら布団を跳ねのける。まずは布団に寝たまま、腰痛体操を始める。徐々に目が覚めていく。10分して起き上がる。トイレに行き、服を着替えると、車に乗り込む。今の時期はまだまだ寒い。ラジオは朝の健康の時間であり、いろいろなテーマごとにその分野の専門医の話が聞ける。なるほどというものが多く、毎日の診療の役に立っている。
 向かう先はゴルフ練習場だ。5時45分にドアが開く。同じように朝早く来る人達と、おはようございますと挨拶を交わす。いつもの9番打席に立つ。何も考えずにひたすら80球打つ。パターの練習をすると、6時15分に家に帰る。帰りのラジオはワールドレポートの時間であり、今の世界の動きがわかる。
 風呂に入り、食事をとると7時にクリニックへ出かける。今日の予定を考えながら6分歩く。病棟へ行き、夜勤の看護師から報告を受けると、回診を始める。とは言っても診察をするわけでもなく、患者さんの顔を見て、おはようと声をかけ、調子はどうですかと聞くだけだ。でも毎日見ていると、それぞれの患者さんの表情の変化がわかるようになってくる。あれおかしいぞと思うといろいろ聞いてみる。すると患者さんの悩みや状態の変化が見えてくる。この朝の回診は整形外科に入局した時に、テニス部の先輩に言われ続けてきたものだ。20分ほどで終わると、病棟で今日の指示や書類を書き、その後は外来で前日のカルテの整理や書類を書く。あっという間に8時30分の診療開始を迎える。後は自分の思う通りにはならない時間が過ぎていく。気がつけば18時を過ぎ、診療が終わる。もうへとへとだ。何もする気が起きない。病棟へ行き、報告を受けるとさっさと家に帰る。ビールと刺身が待っていて、何も考えない時間が過ぎていく。20時を過ぎると歯を磨き、家の誰よりも早く床に就く。
 月曜日から土曜日まで特に用事がなければ、同じ日課が繰り返される。しかしこれが繰り返されている間は、すこぶる体調が良い。
 日課とは生活のリズムであり、自分に合うように徐々に変わっていき、何年もかけて自然と身に付いていくもののようだ。私には今の日課があっており、今後も診療を続けていく限り、少しずつ変わりながら続けていくであろう。
 それにしてもゴルフの打ちっぱなしはストレス解消のためにやっているため、何も考えずに打っており、何年たってもうまくならない。困ったものだ。

次回は、産婦人科・麻酔科堂園クリニックの堂園光一郎先生のご執筆です。(編集委員会)




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