鹿市医郷壇

兼題「明日(あした)」


(352) 永徳 天真 選




荒田支部 荒田案山子

八十八歳明日は無かど気張らんな
(はちじゅはっ 明日はなかど きばらんな)

(唱)そん意気じゃれば百歳ずや生きろ
(唱)(そんいっじゃれば ひゃっずやいきろ)

 普通の人は、たまに葬儀に参列した時などに死について考えることはあっても、日常の中では、老いても寿命とか死を身近に考えることはないだろうと思います。
 平均寿命を越えた喜寿を迎えて、健康に感謝し、これからの残りの人生を大切にしなければと、自分自身への叱咤激励の思いが込められているようです。




伊敷支部 谷山五郎猫

明日はち名医ち思っ三十年
(明日はち 名医ちおもっ さんじゅねん)

(唱)人ん為めないこいが天職
(唱)(人んためない こいがてんしょっ)

 名医とはすぐれた医者のことで、本人が名医と名乗ることはないでしょうが、患者や他の医者から評価された人が名医だろうと思います。医学書や研究発表などで知識を学び、医療の実践の中で、常に自問自答しながら、医学の探究を怠らない姿勢が伝わってきます。名医への道程は、なかなか険しいようです。




伊敷支部 矢上 垂穗

国民の心配な明日を知らん首相
(国民の せわな明日を しらんしゅしょ)

(唱)大丈夫かよち支持率ちゃ正直
(唱)(だいじょっかよち しじりちゃしょちっ)

 不況を象徴する大企業のトヨタやソニーでのリストラのニュースは衝撃的でした。この不安定な経済の影響で、国民の雇用への不安や生活への不安は、切実な問題となってきています。どうなる日本と国民は思っているのに、舵取り役の麻生首相は、国民との感覚のズレが顕著で、それに対する批判となっています。


 五客一席 大崎町 植村聴診器

女房ん機嫌明日はよかろボーナス日
(かかんごっ 明日はよかろ ボーナス日)

(唱)鯛の刺身どん準備っ待っちょっ
(唱)(てのさしんどん しこっまっちょっ)


 五客二席 錦江支部 城山古狸庵

借金相談明日又来ち戻されっ
(かいそだん 明日またけち もどされっ)

(唱)明日行ってん同し事じゃろ
(唱)(明日いってん おなしこっじゃろ)


 五客三席 上町支部 吉野なでしこ

辛れ仕事明日があっち遊っ方
(つれしごっ 明日があっち あすっかた)

(唱)後かあごいと付けがくっじゃろ
(唱)(あとかあごいと つけがくっじゃろ)


 五客四席 清滝支部 鮫島爺児医

明日かあ嫁い行っ娘い心配な父親
(明日かあ 嫁いいっこい せわなとと)

(唱)そいに比べっ母親どま平然
(唱)(そいにくらべっ かかどましれっ)


 五客五席 紫南支部 紫原ぢごろ

休肝日明日明日ち日延べしっ
(休肝日 明日明日ち ひのべしっ)

(唱)飲まにゃどもこも寝付っが悪りち
(唱)(のまにゃどもこも ねつっがわりち)



秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

朝ドラは見たか場面でまた明日
(朝ドラは みたか場面で また明日)

明日でな駄目じゃち急す詐欺電話
(明日でな 駄目じゃちせかす 詐欺電話)

締切いが明日てなっから書っ原稿
(しめきいが あしてなっから かっげんこ)


錦江支部 城山古狸庵

明日出す宿題い家内中で取っ掛かっ
(明日だす しゅくだいけねで とっかかっ)

明日迄の借金が戻せん歳の暮
(あすずいの ぜんがもどせん 歳の暮)


大崎町 植村聴診器

禁煙な明日からじゃち毎日吸っ
(禁煙な 明日からじゃち めにっすっ)


上町支部 吉野なでしこ

痛て注射明日明日ち延ばし方
(いて注射 明日明日ち のばしかた)


紫南支部 紫原ぢごろ

安し饅頭賞味期限が明日ずい
(やしまんじゅ 賞味期限が 明日ずい)


荒田支部 荒田案山子

すごちゃ無ち明日い延べた締切い日
(すごちゃねち 明日いのべた しめきいび)


伊敷支部 矢上 垂穗

締切いが明日で急っ句を捻っ
(締切いが 明日でいそっ 句をひねっ)



 作句教室

  大て欠伸明日決まっち寝られんじ
  (ふてあくっ 明日きまっち ねられんじ)

  明日どま勝とち右手を振い挙げっ
  (明日どまかとち みってをふいあげっ)

 この二つの句の共通する問題点は、決まるとか勝とうと言うのが何なのか、作者には分かっていても読み手には伝わってこないのではないかと思います。読み手にも分かるように、具体的な事柄を表現することが大事だろうと思います。

  明日かあ早起散歩ち今日も朝寝
  (明日かあ 早起散歩ち きゅも朝寝)

  禁煙は明日から言て今日も吸っ
  (禁煙は 明日からちゅて 今日もすっ)

 この二つの句は明日の課題に対して今日も表現されています。このように課題と対比する言葉が入ると、課題が強調されなくなってしまいますので、注意すべき点だと思います。
 また一句目の中七に「早起散歩ち」とありますが、早起(そうき)という造語が問題だろうと思います。造語は一般の人には分かり難いので使わない方がよいと思います。「早朝(そうちょ)散歩ち」でよいかもしれません。


 薩摩郷句鑑賞 23

朝寝ごろ初日を見ろちちゃんこねっ
(あさねごろ 初日を見ろち ちゃんこねっ)
            津留見酎児
 「仰向く」ことを「おなっ」というが、それに強意の接頭語をつけて「ちゃんこなっ」と言う。
 初日は初日でも、稜線や水平線から昇る初日ではない。「ちゃんこなっ」のだから、もう頭の上にきている初日である。誇張した表現で朝寝坊をユーモラスに皮肉っている。

賽銭が少ねかったか凶を引っ
(さいせんが すっねかったか 凶をひっ)
            下本地狂二
 除夜の鐘が鳴り終らないうちから初詣の人々が押しかける。無病息災を祈り、開運を願うのは人情の常であろう。
 山ほどのお願いをしながら、十円玉くらいしか投げ入れないので神仏も、「そう都合よくは参らぬぞよ」と、おみくじに凶をお出しになったのである。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋



薩 摩 郷 句 募 集

◎3 号
題 吟 「 大概(てげ) 」
締 切 平成21年2月5日(木)
◎4 号
題 吟 「 写真(しゃしん) 」
締 切 平成21年3月5日(木)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp


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