=== 年頭のあいさつ ===
新 年 の ご 挨 拶 |
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あけましておめでとうございます。会員の皆さま、ご家族とともによい新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。
昨年は、規制緩和、市場原理を医療・福祉にまで持ち込もうとする国の低医療費政策によって、病院・診療所すべての医療機関で経営が悪化し、一方で、書類・院内会議の増加、患者の要求度の上昇、説明時間の延長等により、医師の勤務時間はますます増加しています。こうして急性期病院からの医師の立ち去りも始まりました。こうした多忙に加えて、卒後臨床研修制度の導入により、2年間新しい医師の導入が途絶えたことにより、医師不足が顕在化し、地域医療の崩壊が現実のものとなってきました。地域的には地方から、特に医師の給与の低い地方の公立病院では診療科の閉鎖に追い込まれたところも多いようです。大野病院産婦人科医師の刑事訴追に見られるように、産婦人科・小児科等、トラブルの多い診療科から医師が不足してきています。今年はさらに外科系の診療科の医師不足が進行することが予想されます。
ここまできた医療崩壊にはさすがのマスコミ等も、これが決して医療側のわがままでないことに気づかれたようで、昨年は読売新聞の特集記事をはじめ、多くの新聞・雑誌が問題のありどころをついた記事・論調を掲載するようになりました。まさに医療側にとっては長い間待った追い風です。
しかし、一方で、東京で見られた産婦の救急患者の診療拒否の問題に、閣僚の政治家が「医師のモラルの問題だ」と発言したり、「医師には社会的常識を欠くものが多い」という総理の発言、「診療報酬の多くは過剰請求」と発言する医療・福祉専門の評論家等々、まだ十分な理解までには至っていないようです。まだまだという感はありますが、今年はやっと見られた追い風を有効に使う一年であってほしいと思います。
そのためにはまずは、医政活動、ロビー活動でしょう。医系議員、医療に理解のある議員への働きかけが重要です。このロビー活動を直接に担っていただくのは日医の執行部ですが、西島参議院議員が力説されているように、地域の医師会で地域の議員に直接働きかけることが必要でしょう。もちろん、選挙活動も重要ですが、それ以上に日ごろ、医師会が積極的に議員と接触して、医療の本質、医療のあるべき姿、我々の国政への希望を述べて、議員の理解を得てほしいと西島先生は言っておられます。地味ではありますが、中央での日医幹部の活動に任せるのではなく、地域でやるべき、またできる活動だと思います。
もうひとつは、国民への直接の働きかけです。県医師会が続けておられるすこやか医療タウントークは大変有効な企画ですが、会員が各地域で行っておられる住民への講演、日ごろの診療の合間での雑談も有効な手段です。最終的には国民が納得し、政治家が動いてはじめて医療が変わるのでしょう。世界に冠たるわが国の医療制度が崩壊しないように、国民に納得してもらい、政治家を動かすために、せっかくの追い風の時に全員でがんばりたいと思います。
鹿児島市医師会は現在、多くの問題を抱えています。会員の共同利用施設としての医師会病院・臨床検査センターは、職員の努力により、会員の診療に大変役立つお手伝いができていると自負しています。しかし、医療がまだ経済的にどうにかなっていた創設のころと異なって、医療をめぐる環境が悪化し、その経営は必ずしも安泰ではありません。会員に利用され、会員に役立っているこれらの施設の永続のために、多くの会員に利用していただきたいと切望しています。会館建設、新公益法人制度への移行等、数年内に決定しなければならない問題もあります。鹿児島市から委託を受けて運営している夜間急病センターについては、特に小児科医の減少、高齢化によって深夜帯の出向医師の確保が困難になってきています。今後医師の減少が進めば他の診療科でも同じ問題が生じるかもしれません。医師不足が深刻化する中で、鹿児島の地域医療を考えるに当たって、一部の診療科では専門ごとの輪番制や医師の集約化等を考えねばならないときにきています。
会員の皆さんには、学校医、学校検診、診療報酬や介護保険の審査会への出向、医師会・行政等の委員への就任等々、大変なご苦労をおかけしています。地域医療に責任を持つ医師会として重要な任務とはいえ、医療事情が厳しくなったこの時期、これらの仕事に診療を休んで出ていただくのがいかに困難か、十分に認識しております。医師会は会員のための組織ですが、多くの会員にとって負っていただいている義務のほうが多いかもしれないと恐れてもいますが、なにとぞご協力いただきたいと思います。
新しい一年が会員、ご家族、施設、従業員の皆様にいい年になりますようお祈りいたします。

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