鹿市医郷壇

兼題「焼酎(しょちゅ)」



(350) 永徳 天真 選


大崎町 植村聴診器

見合ん座じゃ少た飲ん言た大焼酎食れ
(みえん座じゃ ちったのんちゅた うじょちゅぐれ)

(唱)実ちゃ両方共め一斗甕じゃっ
(唱)(じちゃまんぼとめ いっとがめじゃっ)

 お見合いは結婚相手、すなわち人生の伴侶を探す出会いの場であり、お互い真剣です。面接をして、容姿や性格そして物の考え方や経済力などをチェックし、評価することになります。
 そんな見合いの席で酒の話題となりましたが、飲兵衛だと正直にも言えず、相手に嫌われないよう嘘も方便でした。




上町支部 吉野なでしこ

贈い方て味よっか名で焼酎選っ
(おくいかて あっよっかなで 焼酎えらっ)

(唱)相手が喜くっくるれば良かろ
(唱)(えてがよろくっ くるればよかろ)

 焼酎ブームはまだ継続のようで、市場には数多くの銘柄の焼酎が出回っています。味の評価の高い人気銘柄がブランド焼酎となり、中にはまぼろしの焼酎もあるぐらいです。
 焼酎王国鹿児島の焼酎を贈り物にする時は、悩むことなく箔が付く有名な焼酎で、間違いはなさそうです。




清滝支部 鮫島爺児医

焼酎好っが瓶ぬば懐れ抱っけ寝っ
(しょちゅずっが びんぬばつくれ でっけねっ)

(唱)女どん抱た夢を見ちょいか
(唱)(おなごどんでた 夢をみちょいか)

 この句から宴会や飲み会が目に浮かんできました。焼酎好きは、お湯割りを作ったり注いで回ったりと、焼酎瓶を手から離さない人もいるようです。
 楽しい美味しい焼酎に酔いしれて眠たくなり、とうとう一升瓶を抱いたまま寝てしまいました。その場面が生き生きと捉えられています。


 五客一席 大崎町 植村聴診器

甘藷焼酎銀座んバーで上座ぜ据っ
(かいもじょちゅ 銀座んバーで かんぜおっ)

(唱)味じゃ負けんち威風堂堂
(唱)(あっじゃまけんち 威風堂堂)


 五客二席 紫南支部 紫原ぢごろ

飲んごろが白か黒かち焼酎談義
(のんごろが 白か黒かち 焼酎談義)

(唱)相当い詳しで金も使こちょっ
(唱)(じょじょいくわしで ぜんもつこちょっ)


 五客三席 伊敷支部 谷山五郎猫

落花生で何杯でん飲ん大焼酎食れ
(だっきしょで なんべでんのん うじょつくれ)

(唱)食た食た灰皿れ山盛いの殻
(唱)(くたくたへざれ やまもいのから)


 五客四席 上町支部 吉野なでしこ

焼酎好っち肴は食わじ一気飲ん
(しょちゅずっち しおけはくわじ いっきのん)

(唱)料理も欲しかろ胃も可哀相しこっ
(唱)(じゅいもほしかろ 胃もぐらしこっ)


 五客五席 清滝支部 鮫島爺児医

焼酎好きな米騒動は蚊帳ん外
(しょちゅずきな 米騒動は かやんそと)

(唱)黴と麹は親類じゃが言っ
(唱)(かびとこうじは しんじじゃがちゅっ)


   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

芋焼酎も人気が出たや萬が付っ
(いもじょちゅも 人気がでたや まんがちっ)

晩酌ん焼酎と目刺で機嫌の良爺
(だいやめん 焼酎と目刺で ごっのえじ)

焼酎人気地元も薩摩芋が無ごっなっ
(焼酎人気 地元もいもが ねごっなっ)


紫南支部 紫原ぢごろ

焼酎ずいも日本製ち標示しっ
(焼酎ずいも 日本製ち 標示しっ)

飲んみろや黴米焼酎うっ捨んな
(のんみろや かびごめしょうちゅ うっすんな)


大崎町 植村聴診器

森伊蔵が手に入った言て奉っ
(もりいぞが 手にいったちゅて たてまつっ)


上町支部 吉野なでしこ

森伊蔵我は飲まんじオークション
(もりいぞう わがはのまんじ オークション)


伊敷支部 矢上 垂穗

焼酎焼け爺初孫ん如っ赤か顔
(しょちゅやけじ はっまごんごっ あかかつら)


 作句教室

 作句のしかたを、次のようなある事柄や場面を設定し、考えてみたいと思います。

設定一、
「この前の連休は東京に遊びに行った」
(方言化)
 こん前ん連休は遊(あそ)び行(い)た
(作品化)
 三連休妻と東京い遊び行っ
 さんれんきゅ かかととうきょい あそびいっ

 東京ずい疲れけ行たよな三連休
 とうきょずい だれけいたよな さんれんきゅ

 疲れ倒けっ仕事ちなならん連休明け
 だれとけっ しごちなならん れんきゅあけ

設定二、
「女房の買物は長くかかる」
(方言化)
 女房(かか)ん買物(けもん)な長(な)ごかかっ
(作品化)
 選い過ぎっ女房ん買物な長ごかかっ
 えいすぎっ かかんけもんな なごかかっ

 長し買物じゃいはっ友人と立話
 さしけもん じゃいはっどしと たっばなし

 長し買物亭主あ立腹けっ先き帰っ
 さしけもん ととあはらけっ さきもどっ

 郷句の味付けは大事であり、読み手に作者の気持ちが伝わることであって、それが表現されているかどうかということです。報告や説明句にならないよう、常に郷句味を考えて作句することが重要です。


 薩摩郷句鑑賞 21

掛けた衆は直きつん眠い満員車
(かけたしは いっきつんねい 満員車)
           坪山 喜楽

 バスにしろ、電車にしろ、満員車の中で座席に腰掛けている人は、たいてい眠っている。というよりは、眠ったふりをしていると言った方がよいのかも知れない。中には荷物を置いて、二人分占拠した図々しいものもいる。眠ったふりをしていれば、年寄りが乗ってこようが、幼児を抱いた母親が乗ってこようが、席を譲らずにすむという魂胆であろうか。

昆布好っじゃっどん見事てつるっ禿
(昆布ずっ じゃっどんみごて つるっぱげ)
           塚田 黒柱

 海草類を食べると、髪が白くならないとか、抜けるのを防げるとか、色つやが出るとか聞いたことがある。ところが若しそれが事実なら、髪がふさふさしているはずなのに、昆布好きな人が、なんとつるっ禿なのである。当てにならないものだと、内心苦笑しているのかも知れない。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋


薩 摩 郷 句 募 集

◎新年号
題 吟 「 明日(あした)」
締 切 平成20年12月5日(金)
◎2 号
題 吟 「 驚(たまが)っ 」
締 切 平成21年1月5日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp


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