随筆・その他

か く こ そ 認 知 症 微 笑 ま し

西区・武岡支部      脇丸 孝志
 この9月初めマーガレット・ヒルダ・サッチャー氏の朝日新聞記事がフト目に留まった。彼女は1925年生、1975年イギリス保守党首、政治家、英国初めての女性首相。強硬な外交とマネタリズムに基づく経済政策を推進。当時、鉄の女と呼ばれたこの人は現在、脳疾患を契機に第一線を退き、以後次第に認知症に陥っているという。さて、現在83歳鰥夫歴20有余年を閲した私の、日めくりの中で気付いた諸現象を列記して置こう。
(イ)シャツ類、上着などは、頭突っ込み式より、前あきボタンかチャック式のほうが宜しい。そしてゆったり加減のサイズが着脱に便利で快適に感じる。ほんとは着物、浴衣が寛げて好きだが、病気入院時以外着る暇なし。洗濯始末が面倒だ。
(ロ)加齢に伴って年々寒暖に敏感となり、冬場は小の排泄が近くなってちびってしまうのでパンツよりも褌が寧ろ適している様に思う。それも七色褌が日替りメニューで気分が変り、楽しみも加わって殊更愛用している按配は黄赤青緑橙紫白黒の順繰り一週間。
(ハ)ズボンの着脱が幾分不自由になり、立位での着脱は支えが必要。ないとよろけてしまう。先年患った脳梗塞の後遺症も一因か。階段、特に降りが苦手、慎重の上に慎重になる。
(ニ)アシユビの爪切り、極めて不自由、寧ろ困難。腰が良く曲がらぬ。十数年前、受けた腰椎手術以来漸増悪。風呂上がりを逃さぬ腰痛体操も時に忘れて仕舞う位だ。
(ホ)家の中で手に持つ品物をちょいと置き忘れ多く、探し回る時間の浪費がとても勿体無い。身の回り品の定位置をハッキリと決めている筈だがそれすら守らぬ有様。
(ヘ)前後共括約筋の筋力減退は自然の摂理、大小の排泄を我慢しないこと。過活動性膀胱なるものであれば厄介だなあ。眠れぬ夜が疎ましい。やがて秋の夜長、読書に挑戦。もってこいの逸品、ニコンのライト付きルーペ4Dを手許に。
(ト)気付いた用件はすぐメモしておき、早めに済ませる。紐付きメモ帳必携かも。
(チ) 車の運転は必要最小限に留め、往復1q位の用事は歩いて足す。健康第一。
(リ)状況変化への対応の遅れ著しく、手抜かり多し。頭のめぐり悪く脳硬化現象著明。
(ヌ)旅立ちへの準備万端整えつつある積りだが、あれも、これもと、想うばかりで、なかなか前に進まぬもどかしさ。急がなくていいさユックリで。一番後から行けばいいんだ。来世までも仕事を続ける気なのか。好きにしたまえ。
(結び)顧れば鰥夫爺、喜寿にして何と富士山頂を踏覇し、傘寿を越えてコースに白球を追う。全て古希からの手習い。夢にさえ思わなかった高齢老残の身なれど、後進の枷ならぬ支えにでもと、気分だけは終身現役、今の瞬間こそ我が人生の煌き時と居直り、専心これ日捲り真っ最中。さはさりながら現状は既述の如き態たらく、穴があったら入りたい按配。以上10か条の妄言、平に宥怒を乞う。
 「付」童謡・・・(サッちゃん)『サッチャンはね、サッチャーと言うんだほんとはね、だけど強いばあちゃんだったから自分のことをサッチンと呼ぶんだよ珍しいね、サッチャン』


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