鹿市医郷壇

兼題「相談(そだん)」

(348) 永徳 天真 選




錦江支部 城山古狸庵

若者なパソコン相手い相談しっ
(わけもんな パソコンえてい 相談しっ)

(唱)身近い誰か居ろそなもんに
(唱)(身近いだいか おろそなもんに)

 日常生活の中では様々な相談事がありますが、パソコンに相談するという着眼が見事でした。パソコンに向き合う若者には、その情報量や互いの情報交流はとても魅力的でしょう。しかし、パソコンを介した事件もあり危険も潜んでいます。
 人間関係が少しずつ変化し、歪んでいる現代社会を警鐘しているかのようです。




清滝支部 鮫島爺児医

相談しっ決めてん揉むい遺産分け
(相談しっ きめてんもむい 遺産分け)

(唱)兄弟ん仲をば欲が裂かせっ
(唱)(きょでん仲をば よっがせかせっ)

 財産があればこその悩みですが、できるなら円満解決です。頭の痛い相続税のことも考えて、財産リストとのにらめっこが続きます。くじで決める訳にもいかず、なんとか苦労して配分も決まりです。
 しかし、後から当事者外の人の口出しで、揉めてしまうことも多いようです。
 人間の欲が心を迷わす典型です。




大崎町 植村聴診器

相談なし長男は嫁が家一諸ち住ん
(相談なし すよは嫁がえ ひとちすん)

(唱)寝耳み水言はこん事じゃいが
(唱)(ねみみみっちゅはこんこっじゃいが)

 長男が家の跡取りと確信していた親の複雑な思いがよく出ています。
 一時的かもしれませんが、一言の相談もなく、嫁の言うがままの長男に、親はすでに諦めているのかもしれません。
 家のことそして先祖様のこともありますので、真意の話し合いです。長男でなくても誰かがしっかり跡取りとなります。



 五客一席 伊敷支部 矢上 垂穗

煩し奴相談したとが騒動ん元
(やじょろして 相談したとが そどんもと)

(唱)そらちんがらっ混ぜくいたくっ
(唱)(そらちんがらっ まぜくいたくっ)


 五客二席 清滝支部 鮫島爺児医

借金相談女房け聞てからち上手も逃げっ
(かい相談 かけきてからち うもにげっ)

(唱)諦めじまた来た面ん皮
(唱)(あきらめじまた 来たつらんかわ)


 五客三席 錦江支部 城山古狸庵

相談しけ来た時きゃ話しゅ決めっあっ
(相談しけ きたときゃはなしゅ きめっあっ)

(唱)そげん頼いもされちゃおらん態
(唱)(そげんたよいも されちゃおらんふ)


 五客四席 大崎町 植村聴診器

まだ童子相談も出来じ逝たいじめ
(まだこどん 相談もでけじ いたいじめ)

(唱)ごめんごめんち詫びいしか無し
(唱)(ごめんごめんち わびいしかのし)


 五客五席 伊敷支部 谷山五郎猫

相談すい相手がおらんじ猫い聞っ
(相談すい 相手がおらんじ 猫い聞っ)

(唱)うて合わんどちニャーち一声
(唱)(うておわんどち ニャーちひとこえ)


   秀  逸

紫南支部 紫原ぢごろ

やせ薬や無やち相談ぬすいメタボ
(やせぐすや ねやち相談ぬ すいメタボ)

就職の相談に連立だ袖ん下
(しゅうしょっの 相談にてのだ そでんした)

金儲けん相談ち来った大概が法螺
(ぜんもけん 相談ちくった てげが法螺)

耳の遠え奴と相談なやい難くし
(みんのとえ やっと相談な やいにくし)


錦江支部 城山古狸庵

相談言が話の長か女客
(相談ちゅが 話のながか おなごきゃっ)

子が孕けっ双方ん親いすい相談
(子がでけっ まんぼん親い すい相談)


清滝支部 鮫島爺児医

土俵上で相談なしたが取い直し
(どひょうじょで 相談なしたが といなおし)

機嫌次第で天と地の差ん相談事
(ごっしでで 天と地の差ん そだんごっ)


上町支部 吉野なでしこ

年金の天引か私い無か相談
(年金の てんびかあたい なか相談)

先き分くい相談ぬして買宝籤
(さきわくい 相談ぬしてこ たからくし)


大崎町 植村聴診器

相談が相談にならん拉致事件
(そうだんが そだんにならん 拉致事件)


伊敷支部 矢上 垂穗

ニセ教育相談にゃ要らん商品券
(ニセきょいっ 相談にゃいらん しょひんけん)


伊敷支部 谷山五郎猫

就職の相談な若者も真面目めしっ
(しゅうしょっの 相談なにせも まじめしっ)


 作句教室
 今月の投句作品には、字余りの句や、方言のことば使いに無理がある句がありましたので、何句か作品の訂正をいたしました。
 字余りについては、五・七・五の基本を壊す訳にはいきませんので、作句の時には指を折り、文字数を数えながら、ことばの配置を変えたり、別なことばに変えたりして、字余りの句を作らないように努力することが肝腎です。
 無理なことば使いについては、就職前を「しゅしょっまえ」と読ませるのは無理があるようです。日常会話の中では、就職のことを「しゅしょっ」とは言わないので、やはり「しゅうしょっまえ」が方言としては正しいでしょう。
 同じように、分ける相談を「分(わ)く相談(そだん)」は無理があり、やはり「分(わ)くい相談(そだん)」が方言としては正しいでしょう。
 これも基本ですが、字数を合わすために、使われていないことばに縮めることのないよう、正しい方言での表記を常に頭におくことが、大事だろうと思います。


 薩摩郷句鑑賞 19

境争け目面も見せん仲けしなっ
(さけいさけ めつらも見せん なけしなっ)
               鈴木 芳子

 「めつら」というのは、「顔」というような意味であるが、かと言って、単に「顔を見せない仲」というだけでもないのでややこしい。この句の場合、「顔を合わそうともしない仲」というように解すべきだろう。
 宅地か、田畑や山林かは分からないが、境界のことでトラブルがあって、それ以来、隣にいながら行き来もしなくなったのである。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋




薩 摩 郷 句 募 集

◎11 号
題 吟 「 焼酎(しょちゅ) 」
締 切 平成20年10月6日(月)
◎12 号
題 吟 「 命(いのっ) 」
締 切 平成20年11月5日(水)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp


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