天
伊敷支部 矢上 垂穗
西郷どんもメタボじゃったか浴衣掛け
(せごどんも メタボじゃったか 浴衣がけ)
(唱)腹を突っ出っ犬と散歩し
(唱)(腹をつっでっ いんと散歩し)
鹿児島市にある西郷隆盛の銅像は、軍服姿で威厳がありますが、東京都の上野公園にある銅像は、着物姿で庶民的な西郷さんです。おおらかで、どっしりとしたイメージがある西郷さんは、着物姿がよく似合っています。恰幅のいい所を、メタボと促えた着眼がすばらしく、ユーモアのあるおだやかな句です。
地
錦江支部 城山古狸庵
娘ん浴衣て若け日ん妻を思め出せっ
(こんゆかて わけ日んかかを おめだせっ)
(唱)色気付っきっ眩いか娘
(唱)(色気ぢっきっ めはいかむいめ)
六月灯や夏祭り、花火大会などの機会に、若い女性は浴衣を着ることも多いです。娘の浴衣姿を見て、ふと妻の若かりし頃の浴衣姿が蘇ったのでしょう。
今の妻からは想像できないだろうが、たしかに初初しい時もあったと、青春の一ページを思い出し、少しだけ感傷的な気分になったのかもしれません。
人
紫南支部 紫原ぢごろ
糊の利た浴衣で孫と六月灯
(のいのきた 浴衣で孫と ろっがっど)
(唱)財布を忘れじ団扇も連っ
(唱)(ふぞを忘れじ うっばもてのっ)
七月になると毎晩県下のあちらこちらの神社やお寺などで六月灯が催されます。
灯籠が吊るされ、夜店が並び、涼みがてらの散歩や見物にと、沢山の人が集まってきます。暑い夜が続く頃なので、六月灯には涼しげな浴衣姿がよく似合っています。パリットした浴衣で、孫と一緒に出掛けて行く楽しい一時です。
五客一席 大崎町 植村聴診器
フルムーン浴衣ん妻い湯の香い
(フルムーン 浴衣んかかい 湯のかおい)
(唱)良か湯じゃったち頬を赤こ染めっ
(唱)(よかゆじゃったち ふをあこそめっ)
五客二席 上町支部 吉野なでしこ
浴衣がけ歩っ方いも気を使こっ
(浴衣がけ さろっかたいも 気をつこっ)
(唱)浴衣ん中は無防備じゃっで
(唱)(浴衣ん中は 無防備じゃっで)
五客三席 清滝支部 鮫島爺児医
浴衣にななんちゅはならん良か情緒
(浴衣にな なんちゅはならん よか情緒)
(唱)飾っちょらんでゆったいとしっ
(唱)(かざっちょらんで ゆったいとしっ)
五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ
糊の利た浴衣で頸ば擦い切っ
(のいのきた 浴衣でくっば こすいきっ)
(唱)ヒリヒリ痛し貼い絆創膏
(唱)(ヒリヒリいとし はいばんそうこ)
五客五席 伊敷支部 谷山五郎猫
浴衣娘が抱た猫ん子い悋気しっ
(ゆかたごが でた猫ん子い じんきしっ)
(唱)猫と交代出来い事なあ
(唱)(猫と交代 でくいこっなあ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
浴衣がけ家族中で揃っ六月燈
(浴衣がけ けねじゅでそろっ ろっがっど)
軽り浴衣て団扇が良似合お夕涼ん
(かりゆかて うっぱがゆにお ゆうすずん)
夜目遠目浴衣姿にゃあい色気
(よめとおめ 浴衣姿にゃ あい色気)
錦江支部 城山古狸庵
六月燈浴衣ん娘い目が集っ
(ろっがっど 浴衣んおごい 目がたかっ)
残い香を浴衣ん娘が撒て歩れっ
(のこいがを 浴衣んおごが めてされっ)
大崎町 植村聴診器
夏祭い娘は浴衣でデートしっ
(なっまつい おごは浴衣で デートしっ)
旅の宿ぞろびっ浴衣て狼狽ろっ
(たっの宿 ぞろびっゆかて ばたぐろっ)
上町支部 吉野なでしこ
夏祭いミニを脱っせえ浴衣着い
(なつまつい ミニをぬっせえ 浴衣きい)
孫達ちも浴衣を着せっひよこ釣い
(まごたちも 浴衣をきせっ ひよこつい)
紫南支部 紫原ぢごろ
風呂上がい浴衣どま脱っ晩酌し
(風呂上がい 浴衣どまにっ だいやめし)
六月灯年に一度ん浴衣がけ
(ろっがっど 年にいっどん 浴衣がけ)
伊敷支部 矢上 垂穗
驚ったミニん浴衣い似合おブーツ
(たまがった ミニん浴衣い におブーツ)
伊敷支部 谷山五郎猫
今はもう浴衣ん君は酌もせじ
(今はもう ゆかたんきみは しゃっもせじ)
作句教室
疲れもせじ夏休中川原で叫ろじょ孫
(だれもせじ やすんじゅこらで おろじょ孫)
作品の一例ですが、この句で気になる点が二つあります。
一つは「夏休中(やすんじゅ)」で、文字を見れば分かりますが、聞いただけでは、夏休みのこととは分かりません。このような文字で理解させる無理な当て字は、できるだけ避けた方がよいでしょう。
もう一つは「叫(お)ろじょ」で、共通語では「叫(さけ)んでいる」ですから、方言では、「叫(お)ろじょい」と言います。文字数の調整のために、実際の話しことばではない、このようなことばの縮め方はよくないと思います。他にも、「お金を貰らった」を方言では、「金(ぜん)ぬ貰(も)ろた」と言うのに、「金(ぜん)貰(も)ろた」と、助詞(を)抜きの作品が意外と多いです。気をつけたい点です。
少し推敲を加えた例が次の通りです。時には、ことばの省略も必要です。
疲れもせじ川原で叫ろじょい夏休ん
(だれもせじ こらでおろじょい なっやすん)
疲れもせじ今日も川原れ走い夏休ん
(だれもせじ きゅもこれはしい なっやすん)
夏休ん川原じゃ元気な孫ん声
(なっやすん こらじゃ元気な 孫ん声)
薩摩郷句鑑賞 17
小け笹せ色紙む下げっ孫ん見舞
(ちんけさせ いろがむさげっ 孫んみめ)
児玉金蜻蛉
幼稚園や小学校、あるいは各家庭で、今日は七夕飾りをするところが多いことだろう。笹のついた竹を立てて、思い思いの願いごとを書いて吊るす姿は、まことにほほえましいものである。
その七夕に、運悪く入院している孫のために、小さな竹の枝に飾りをつけ、病室のベッドにくくりつけてやったのであろう。孫への愛情が、ほのぼのと感じられる句である。
※三條風雲児「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎9 号
題 吟 「 相談(そだん) 」
締 切 平成20年8月5日(火) ◎10 号
題 吟 「 余(あまい) 」
締 切 平成20年9月5日(金)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp |
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