随筆・その他

ユ メ の ま さ ぐ り

西区・武岡支部
             脇丸 孝志

「A」…電子辞書「広辞苑」pw8000『SHARP』
1.睡眠中に持つ幻覚。普通目覚めた後に意識される。多く視覚的な性質を帯びるが、聴覚・味覚・運動感覚に関係するものもある。古今和歌集(恋)「思ひつつ寝(ぬ)ればや人の見えつらむ夢と知りせばさめざらましを」、「夢を見る」
2.はかない、頼みがたいもののたとえ。夢幻。古今和歌集(哀傷)「寝ても見ゆ寝でも見えけりおほかたはうつせみの世ぞゆめにはありける」、「夢の世」
3.空想的な願望。心の迷い。迷夢。「いたずらに夢を追う」
4.将来実現したい願い。理想。「海外雄飛が彼の夢だ」
「B」…南山堂・「医学大辞典」1990年2月1日第17版発行
 ≪英dream、独Traum。一般には夢は睡眠を妨げる邪魔者として扱われるが、学問的には意味深いものである。それには2つの研究方法がある。第1はフロイトが明らかにした精神分析、第2には精神生理学よりの解明である。精神分析では、夢は睡眠によって自我の抑圧力が緩み、その結果おきたイド活動に対する不安を夢によって和らげ、睡眠を守る機能をすると考えられている。そして夢は無意識への王道といわれるように精神分析の材料を提供する。夢はまた睡眠の精神生理学的研究で明らかにされつつある。逆説睡眠期(レム期)に夢を見るということがはじめて明らかにされたが、今日では確かに同期に夢が多いが<ノンレム期>でも僅かであるが夢を見ることが知られている。レム期は論理的思考は困難であるが、記憶に関係のある辺縁系の活動が盛んで、しかも大脳皮質機能は低下しているので、過去の記憶や抑圧された欲望が夢となって現れやすいと考えられる。睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠の2相に分けられる。レム睡眠(逆説睡眠、パラ睡眠、賦活睡眠、速波睡眠)では脳波はあたかも覚醒時のような低振幅速波パターンを呈し、抗重力筋の緊張が完全に消失し、自律機能はこの睡眠相では急速な眼球運動レムを伴うのでレム睡眠という名がつけられている。それに対して、他の睡眠相はノンレム睡眠と呼ばれている。脳波、筋電図、眼球運動、血圧、脈拍、呼吸、皮膚電気反応などのポリグラフによって、これらの睡眠相の判別は容易になる。レム睡眠はノンレム睡眠が1時間半から2時間くらいした後に出現し、一夜のうちに3乃至4回反復する。1回の睡眠時間の中でレム睡眠相の占める割合は新生児では約50%であるが成人では約20%である。レム睡眠時には夢を見ていることが多いとされている。覚醒させるにはノンレム睡眠時よりも強い刺激を必要とする。動物実験によるとレム睡眠時には海馬ではシータ波が認められる。また橋網様体では棘波が発生しこれが外側膝状体から後頭葉にかけて広がるという報告がありPGO波と呼ばれている。レム睡眠に関連する部位は橋の辺りにあると推測されているが、詳細な発生機序については不明である。いくつかの同義語はレム睡眠相で覚醒時脳波パターンが見られる事に由来する。≫とやら。
 さて、八十路を越えて以来眠れぬ夜が疎ましく思えて仕方のない日々が続いている。眠りと夢、夢のまた夢なり。そして明治が大方消え去り、大正も次第に遠ざかっていく。詮無い結末、ピンピンコロリ願望切なるを如何にせん、ススメススメ、ヘイタイススメか。完。


このサイトの文章、画像などを許可なく保存、転載する事を禁止します。
(C)Kagoshima City Medical Association 2009