鹿市医郷壇

兼題「薬(くすい)」

(343) 永徳 天真 選




紫南支部 紫原ぢごろ

晩酌ん焼酎い敵ぬよな薬や無し
(だいやめん しょちゅいかぬよな くすやのし)

(唱)適量じゃっで体で良とかも
(唱)(適量じゃっで からでえとかも)

 晩飯の時習慣的に飲酒する晩酌(だいやめ)をする人は多く、鹿児島ではやはり焼酎が主流でしょう。奥さんが用意した酒の肴(しおけ)や副食物(かてもん)と一緒に飲む焼酎は、一日の疲れを癒して安眠できます。そんな活力の源となっている焼酎を、どんな薬も敵わないと、ずばり言い切った所がよかったです。




荒田支部 荒田案山子

あいこいち下知い従ごっ薬飲ん
(あいこいち げちいしたごっ 薬のん)

(唱)面倒でどんかあ我が事じゃらい
(唱)(めんでどんかあ わがこつじゃらい)

 薬は医師の処方箋で飲み方も指示があり、飲む回数や分量、そして食前・食後・食間と飲む時間帯などがあります。
 中には、他の病気も抱えていて、何種類も薬を貰っている人もいますが、それらの薬をきちんと飲むことは一仕事だろうと思います。病気を治すためには、指示通り正しく薬を飲むことが肝腎です。




錦江支部 城山古狸庵

薄し頭髪て生えよ伸びれち高価け薬
(うしびんて おえよのびれち たけ薬)

(唱)捨せ金ちゅは覚悟ん上で
(唱)(うっせぜんちゅは かっごん上で)

 髪の豊富な人には、髪が薄くなってきた人の気持ちは、知る由も無いでしょうが、薄くなってきたからといっても、まだ望みを捨てた訳でも無く、あわよくば復活を願って、薬用養毛剤・育毛剤に期待をしています。その薬が高価であればなおさらのことで、中七に気持ちが十分表現されています。


 五客一席 紫南支部 紫原ぢごろ

あばてんね薬ゆ形見にはっ逝たっ
(あばてんね くすゆかたんに はっちたっ)

(唱)役きな立たんじ薬も無念
(唱)(ききなたたんじ 薬も無念)


 五客二席 荒田支部 荒田案山子

若返い薬や無かかち女房い聞っ
(わかがえい くすやなかかち かかい聞っ)

(唱)気持が若けでそげなた不要
(唱)(きもっがわけで そげなたいらん)


 五客三席 上町支部 吉野なでしこ

苦げ薬効っから苦げち飲ませかた
(にげ薬 きっからにげち のませかた)

(唱)飲まんな痛か注射じゃっどち
(唱)(飲まんないたか 注射じゃっどち)


 五客四席 武岡 志郎

メタボ腹れ痩せ薬や無ち叱われっ
(メタボばれ やせぐすやねち くろわれっ)

(唱)栄養過多と運動不足
(唱)(栄養過多と 運動ぶそっ)


 五客五席 清滝支部 鮫島爺児医

良薬も加減仕様じゃ毒きしなっ
(りょうやっも 加減仕様じゃ どきしなっ)

(唱)間違げが無ごっ正しか処方
(唱)(まっげがねごっ ただしか処方)


   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

長生っの薬や焼酎言っ毎晩飲っ
(ながいっの くすやこいちゅっ めばんやっ)

小め頃ん怪我や喧嘩は薬いなっ
(こめ頃ん 怪我や喧嘩は くすいなっ)

凄ぜ名医薬や飲まんて効た如あっ
(わぜ名医 くすやのまんて きたごあっ)


大崎町 植村聴診器

抗癌の薬と連ので看病をしっ
(抗癌の 薬とてので かびょをしっ)

篤姫んドラマが娘いな薬いなっ
(篤姫ん ドラマがこいな くすいなっ)

婆が病ん正露丸ぬち騒動を言っ
(ばばがやん せいろがんぬち そどをゆっ)


錦江支部 城山古狸庵

食いごっ貰ろた薬は捨てられっ
(たもいごっ もろた薬は 捨てられっ)

通販の秘薬も効かん呆か亭主
(通販の 秘薬も効かん ぼえかとと)

メタボ女房けドイツ薬も効ちゃくれじ
(メタボかけ ドイツぐすいも きちゃくれじ)


武岡 志郎

久振い運動で膏薬き世話いなっ
(さしかぶい うんどでこやき 世話いなっ)

多か病気め薬いも大概な詳しゅなっ
(うかやんめ くすいもてげな くわしゅなっ)

傷薬ゆ木強い母親は準備通えっ
(きずぐすゆ ぼっけいかかは しこどえっ)


紫南支部 紫原ぢごろ

ボケでけっ薬や飲んだか女房い尋っ
(ボケでけっ くすや飲んだか かかいきっ)

病が増えっ溜めた薬が山ん如っ
(びょがふえっ ためた薬が 山んごっ)


伊敷支部 矢上 垂穗

ボツリヌス薄めりゃ皺を取い薬
(ボツリヌス 薄めりゃしわを とい薬)

アイピエス万能薬ち夢が湧っ
(アイピエス ばんのぐすいち 夢がわっ)


伊敷支部 谷山五郎猫

野良猫を拾るて高こ付っ薬代
(野良猫を ふるてたこつっ 薬代)

紅顔も五十過ぎたや薬漬け
(こうがんも 五十過ぎたや くすいづけ)


上町支部 吉野なでしこ

粉薬喉頸の先きひっかかっ
(こなぐすい のどくっのさき ひっかかっ)


荒田支部 荒田案山子

眼をつぶっ苦か薬を鵜呑みしっ
(眼をつぶっ にがか薬を ぐのみしっ)


 作句教室
 今月の兼題の「薬」は、医療の現場で直接係りがありますので、現実味のある作品が多かったようです。薬の捉え方は、医師と患者とでは立場が違いますので同じではないですが、作品は両者の立場で捉えた様様な薬が出てきました。
 薩摩郷句では、物事を捉えるときには、一視点からだけでなく、立場を変えるなどしていろんな角度で捉え、視点を広げることが大事になります。作品が読み手に感動を与えるのは、着眼が大きく影響します。作句では、平凡な着眼にとどまらないように、視野を広げる努力も必要だろうと思います。


 薩摩郷句鑑賞 14

定年の靴ちゃ玄関で欠伸ぶしっ
(定年の くちゃふんごんで あくぶしっ)
                津曲とっこ

 四月一日付けの異動によっていろんな職場で、多くの人々が送られたり、迎えられたり、あわただしい数日が続いた。
 ところが、定年退職した人々は、今まで出かけていた時刻がきても、もう靴をはく必要はないわけである。ほっとした気持ちと、寂しさが交錯していることであろう。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋

薩 摩 郷 句 募 集
◎6 号
題 吟 「 気力(あや) 」
締 切 平成20年5月2日(金)
◎7 号
題 吟 「 浴衣(ゆかた) 」
締 切 平成20年6月5日(木)

◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp


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