天
上町支部 吉野なでしこ
旨め酒も燗の加減でまずなけっ
(うめ酒も かんの加減で まずなけっ)
(唱)こいじゃ名酒も泣っかぶいじゃろ
(唱)(こいじゃ名酒も なっかぶいじゃろ)
酒の美味しい季節となりました。ロックやお湯割りの焼酎と違って、日本酒は燗つけが重要です。人肌の燗とも言われますが、美味しい酒も燗つけ次第で微妙に味が変わるようです。
その燗つけの加減が悪くて、まずい酒になったとぼやいている、酒好きの気持ちがよく詠まれています。
地
錦江支部 城山古狸庵
子供じゃち加減ぬしたや投げられっ
(子供じゃち 加減ぬしたや 投げられっ)
(唱)今一度勝負ち入れ込だ気合い
(唱)(もいっどしょっち いれくだ気合い)
「どら相撲(すも)どん取(と)ろかい」「一丁(いっちょ)揉(も)んやろかい」と、子供を相手にしたのでしょう。
腕に自身有りで、手加減をして適当にあしらうつもりが、子供は本気も本気で、ちょっとした油断から見事に投げられてしまいました。思いの他強くなっている子供に感心しながら、もう若くないかと、力の衰えを感じたのかもしれません。
人
武岡 志郎
手加減ぬ知たじいじめん原因てなけっ
(手加減ぬ したじいじめん もてなけっ)
(唱)情操教育か必要じゃらい
(唱)(じょうそきょういか 必要じゃらい)
昔も子供の時は、弱い者を相手に冗談を言ったり、ちょっかいを出していましたが、相手がいやな顔をしたり、泣いたりする時は、それ以上相手を困らせてはいけないと、その加減を知っていたような気がします。相手の心の痛みが分からない、恥や正義を知らない子供たちが増えている今の時代をなげいているようです。
五客一席 紫南支部 紫原ぢごろ
接待が加減ぬ超えっ汚職沙汰
(接待が加減ぬこえっ おしょっざた)
(唱)金に負けたか泥沼め入っ
(唱)(ぜんに負けたか どろぬめはいっ)
五客二席 大崎町 植村聴診器
姑御ん機嫌加減も大概なといなれっ
(しゅとんごっ 加減もてげな といなれっ)
(唱)はいはいち言て褒め上手の嫁
(唱)(はいはいちゆて ほめじょしの嫁)
五客三席 武岡 志郎
爺の仕事ちゃ燗の加減見三が日
(じのしごちゃ かんのかげんみ さんがにっ)
(唱)庄助どんで飲んかぎい飲ん
(唱)(庄助どんで のんかぎいのん)
五客四席 上町支部 吉野なでしこ
薬やいやぶも名医も匙加減
(くすいやい やぶも名医も さじ加減)
(唱)勘と年季で微妙い差が出っ
(唱)(勘と年季で びみょい差がでっ)
五客五席 清滝支部 鮫島爺児医
パター打ち力加減の奥義は無し
(パターうち 力加減の こつはのし)
(唱)練習練習で体で身い付っ
(唱)(れんしゅれんしゅで からでみいちっ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
食う事ちな加減な知らん肥満婆
(くうこちな 加減なしらん だんべばば)
手加減ぬすれば負けない勝負事
(手加減ぬ すればまけない 勝負ごっ)
あら釣いにゃ加減ぬせんと切るい糸
(あらついにゃ 加減ぬせんと きるい糸)
格闘技加減ぬせんで凄ぜ人気
(格闘技 加減ぬせんで わぜ人気)
紫南支部 紫原ぢごろ
良か加減交際ちょったが罠ね嵌っ
(よか加減 つっきょちょったが わねうたっ)
六四の焼酎ん加減でひと談義
(六四の しょちゅん加減で ひと談義)
晩酌ん温か加減で夜が更けっ
(だいやめん ぬるか加減で 夜が更けっ)
錦江支部 城山古狸庵
今ん子は加減ぬ知たじ人を刺っ
(今ん子は 加減ぬしたじ 人をせっ)
猛稽古加減が過ぎっけ死ませっ
(かわいがい 加減がすぎっ け死ませっ)
大崎町 植村聴診器
指先で水ず加減した羽釜飯
(いっさっで みず加減した 羽釜飯)
多か孫い加減が厳っかお年玉
(うか孫い 加減がきっか お年玉)
伊敷支部 矢上 垂穗
加減言が減っこちゃ無かろ税負担
(加減ちゅが へっこちゃなかろ 税負担)
上町支部 吉野なでしこ
甕壺ち加減ぬしいし猪口で飲ん
(かめつぼち 加減ぬしいし ちょこでのん)
武岡 志郎
加減も無強要たゴルフあ女房ずい
(加減もね せずたゴルフあ おかたずい)
雑 吟
荒田支部 荒田案山子
ちょっしもたやかんの蓋が踊い出っ
(ちょっしもた やかんの蓋が おどいでっ)
寒むけなっ引張っ出たなあ女房ん服
(さむけなっ そびっでたなあ かかんふっ)
作句教室
薩摩郷句では、日常生活の中での身近な夫婦喧嘩がよく題材になります。これを郷句にするには、客観的に見たり、見方や目線を変えることが一つのポイントとなります。次に紹介しますのは、様々な夫婦喧嘩を実にうまく促えた作品です。
目の付け所を学んでいただければと思います。
夫婦喧嘩おてつき言たやすかっなっ
(みとげんか おてつきゆたや すかっなっ)
夫婦喧嘩原因はち言えば金のこっ
(夫婦喧嘩 もとはちゆえば ぜんのこっ)
夫婦喧嘩女房も脛をば蹴っ戻でっ
(夫婦喧嘩 かかもすねをば けっもでっ)
夫婦喧嘩晩の肴で返報取い
(夫婦喧嘩 ばんのしおけで へんぽとい)
夫婦喧嘩面当て猫が叩かれっ
(夫婦喧嘩 つらあて猫が たたかれっ)
夫婦喧嘩出れち言うはっ妻が土地
(夫婦喧嘩 でれちゆうはっ かかがじだ)
夫婦喧嘩どっちも悪りち子供が叱っ
(夫婦喧嘩 どっちもわりち こどががっ)
夫婦喧嘩け使こかもしれん箒くば買っ
(みとげんけ つこかもしれん ほくばこっ)
他人でんこげんなあいめ夫婦喧嘩
(他人でん こげんなあいめ 夫婦喧嘩)
父頑張れ一度どま勝て夫婦喧嘩
(ちゃんきばれ いっどどまかて 夫婦喧嘩)
薩摩郷句鑑賞 11
佐多岬天の境かあ初日が昇っ
(さたっみさっ 天のさけかあ ひがのぼっ)
古藤 雪尾
高千穂の峰とか、佐多岬などで、初日の出を拝む人々は毎年少なくない。このような大自然の中に立って初日を拝む気持ちは、身の引きしまるような荘厳なものである。
佐多岬に立つと、後ろには錦江湾をはさんで薩摩富士が麗婆を見せ、天気がよければ、遠く南には屋久・種子の島も見える。東は洋々たる太平洋で、その水平線から日が昇るのであるが、「水平線」とか、「空と海の境」などと言わずに、「天の境」と言ったところがすばらしい。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎3 号
題 吟 「 点(てん) 」
締 切 平成20年2月5日(火) ◎4 号
題 吟 「 薬(くすい) 」
締 切 平成20年3月5日(水)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp |
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