=== 新春随筆 ===

「 世 界 糖 尿 病 デ ー 」に よ せ て

鹿児島県栄養士会会長

     立川 倶子
 新春のお慶びを申しあげます。
 現在、糖尿病を世界の成人人口の約5〜6%が抱えており、2025年には3億8,000万人(2007年より64.7%増)に達すると予想されています。
 特にアジア、中東、アフリカ、南アメリカでは2倍になると試算されており、我が国でも40歳以上の3人に1人が糖尿病または糖尿病予備群であることが、平成18年国民健康・栄養調査速報で発表されました。また、AIDSと同数程度の死者をも出しており、糖尿病が進行することで発病する合併症などによる間接的死亡率を合算すると更に多くなります。
 このような状況を踏まえ、国際連合(国連)は、IDF(国際糖尿病連合:現在約150カ国が加盟)が要請してきた「糖尿病の全世界的脅威を認知する決議」を2006年12月20日に国連総会議で採択しました。同時に11月14日を「世界糖尿病デー」に指定し、世界各地で糖尿病の予防、治療、療養を喚起する啓発運動を推進することを呼びかけました。11月14日は国連及び主要国で様々なイベントが開催されました。ちなみに11月14日はインスリン発見者でノーベル医学賞を受賞したバンティング博士の誕生日です。我が国でも、(社)日本糖尿病学会、(社)日本糖尿病協会が中心となって、国民の方々に呼びかけ、活動の輪を広げました。最大イベントとして、東京で記念シンポジウムを開催、更に11月14日、東京タワーをこの運動のシンボルカラーであるブルーにライトアップするイベントが開催されました。日本の各地でも、松江城、岐阜城、通天閣、大船観音寺、鎌倉大仏、鶴岡八幡本殿、長谷寺観音堂、山口県の「ゆめ風車」等がライトアップされ、鹿児島県でも「鹿児島県糖尿病対策推進会議」として11月14日、JR鹿児島中央駅の観覧車をブルーに染め上げました。
 このブルーライトアップ活動は海外でもニューヨークのエンパイアステートビルを始め、ロンドン、スイス、アフリカ、オーストラリア、中国など、約70カ所の名所が一斉にライトアップされ「世界糖尿病デー」をアピールいたしました。
 また、日本糖尿病協会鹿児島県支部では、11月8日〜14日まで鹿児島中央駅の大型テレビで「世界糖尿病デー」に関する広報用DVDを毎日9時から23時まで1日に30回(但し14日は70回)放映、糖尿病の啓発活動を展開いたしました。
 恒例の全国糖尿病週間(11月12日〜18日)行事も「糖尿病の正しい知識と自己管理」をテーマに「糖尿病体験談を聴く会」・「糖尿病予防講演会」・「歩いて学ぶ糖尿病ウォークラリー」など、「世界糖尿病デー」を中心に多くの参加者を集めて有意義に開催されました。
 特に、鹿児島市・鹿児島市医師会主催の「糖尿病予防講演会」には開会2時間前から足を運ばれる市民もあり、毎年のレギュラーメンバーなども多く、熱心に最後まで聴講される参加者で今年も無事に終了いたしました。ただ、治療中の方で栄養食事指導を受けていない方の多いことが気になりました。
 鹿児島市医師会では1974年から管理栄養士を医師会の成人病センターに派遣するシステムができていました。現在は医師会病院糖尿病外来に移行し継続されています。毎月、第1及び第3火曜日午後、管理栄養士不在の医師会員施設から紹介のあった糖尿病患者さんに、日本糖尿病学会から派遣された専門医により、診断並びに療養指導を行い、鹿児島県栄養士会から日本糖尿病協会鹿児島県支部栄養部会所属の管理栄養士を派遣して、栄養食事指導を実施いたしております。まさに、全国にさきがけて先見性あるシステムを実施された鹿児島市医師会に敬意を表します。ぜひ、このシステムを会員の先生方が活用されて、発病初期から患者さんに栄養食事指導を受けていただくことで、食事療法の正しい知識をマスターしていただき、より良い自己管理に努めていただきたいと思います。この糖尿病対策の重要なマンパワーとして、私共、栄養士会員一同研鑚に努めて参ります。
 本年も何卒、よろしくご指導賜りますようお願い申しあげます。





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