鹿市医郷壇

兼題「札」(ふだ)

(337) 永徳 天真 選




武岡 志郎

出した度びカス札ん様な農水相
(出したたび カス札んよな のうすいしょ)

(唱)煙い巻た態で頭を下げっ
(唱)(けむいめたふで びんたをさげっ)

 安倍総理の衝撃的な辞任には、日本国中が揺らぎました。辞任前に詠まれたこの作品のカス札も、辞任の要因の一つだったことを思うと、すでに主役のいなくなった今となっては、むなしさだけが残ります。批判の声が多い中に同情の声もありました。国民は強いリーダーを望み、日本の再建に期待をしています。




紫南支部 紫原ぢごろ

入んな言う立て札ん先かよか釣い場
(いんなちゅう 立て札んさか よかついば)

(唱)他ん穴場を探けんこてな
(唱)(ほかん穴場を みしけんこてな)

 以前から立て札があったのか、後から柵ができ立て札が立ったのかは定かではないですが、そこの場所で釣りをしたことがあるのでしょう。立て札が立つ理由は、釣り人のマナーが悪かったり、危険な箇所であったり、大事な施設だったりする時です。穴場と分かっているだけに、その立て札が腹立たしいのでしょう。




大崎町 植村聴診器

桁間違げ値札いレジで大恥ずけっ
(けたまっげ 値札いレジで うはずけっ)

(唱)あんまい安しち少す思たどん
(唱)(あんまいやしち ちすおもたどん)

 特価品の掘り出し物と思って、にこにこ顔でレジに並んだのでしょう。支払う段になって「えっ」と声を発したかもしれません。なんと、○を一つ見落としていた勘違いに、他の人の目線が痛く、赤面でした。勝手な思い込みをした自分が恥ずかしく、そして商品を戻しに行く途中も、情け無い気持ちだったことでしょう。



 五客一席 武岡 志郎

虫の名を名札で太太と自由研究
(虫の名を なふでふとぶと じゆけんきゅ)

(唱)虫よっかいも名札が目立っ
(唱)(虫よっかいも 名札がめだっ)


 五客二席 錦江支部 城山古狸庵

切い札ん筈の総理が当てならじ
(きいふだん はっの総理が あてならじ)

(唱)先が無思もたや案の定辞任
(唱)(さがねともたや あんのじゅ辞任)


 五客三席 大崎町 植村聴診器

立小便すんな言う立札で放尿っちゃっ
(たっしべん すんなちゅうふで しゃくっちゃっ)

(唱)てしけはしけいくろわん奴じゃ
(唱)(てしけはしけい くろわんわろじゃ)


 五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ

背中いな値札付たまま気が付かじ
(背中いな 値札ちたまま きがつかじ)

(唱)家ち帰っかあこらちょっしもた
(唱)(うちもどっかあ こらちょっしもた)


 五客五席 清滝支部 鮫島爺児医

同窓会名札を見い見語い出っ
(どうそかい 名札をみいみ かたいでっ)

(唱)誰様けえち聞っ訳けいかじ
(唱)(だいさあけえち きっわけいかじ)


秀  逸

錦江支部 城山古狸庵

札付の横綱ね太か灸つすえっ
(ふだつっの よこづねふとか えつすえっ)

札止めん日が来っじゃろか大相撲
(札止めん 日がくっじゃろか 大相撲)

玉ん輿札付娘がしおらしゅし
(たまんこし ふだつっおごが しおらしゅし)


清滝支部 鮫島爺児医

禁煙の札ん目ん前へ有い灰皿
(禁煙の 札んめんまへ あいへざら)

札付の悪童が頑張って教師しなっ
(ふだつっの わるがきばって きょうしなっ)

札嫌れん爺あ籤じゅ当てっ機嫌が良し
(ふだぎれん じあくじゅあてっ ごっがゆし)


武岡 志郎

赤札をまだ値切っ女房け距離ば取っ
(赤札を まだねぎっかけ 距離ばとっ)

好っな服く値札が二番手い替えっ
(すっなふく 値札が二番 手いかえっ)


上町支部 吉野なでしこ

瓜二っ名札は要らんゆうぎ会
(ういふたっ 名札はいらん ゆうぎ会)

犬散歩札を立ててん見いもせじ
(いん散歩 札をたててん みいもせじ)


伊敷支部 矢上 垂穗

杖ん札で住所電話を確っ書っ
(杖んふで 住所電話を じかっけっ)

新札つば揃えっ結納日柄佳し
(しんさつば そろえっゆいの ひがらよし)


大崎町 植村聴診器

ピッカピカ一年坊の胸ね名札
(ピッカピカ いっねんぼいの むね名札)


紫南支部 紫原ぢごろ

入んなち立て札見れば入ろごたっ
(はいんなち 立て札見れば いろごたっ)


作句教室

 薩摩郷句を詠む場合、雑吟と課題吟の大きく二つに分けられます。他にも分類すると、季節吟や時事吟などもあります。
 薩摩郷句の句会ではほとんどの場合が、課題吟です。その理由は同一課題の下に作句することにより、詩想や表現技巧の比較検討ができるという利点があるということです。
 そこで、その課題をどう捉えるかということですが、例えば「猫」という題が出て、猫背、猫舌、猫糞(ねこばば)などを詠んでも、猫という字はついていますが猫そのものでないので、これらは「猫」という課題から外れているものとして、除外されます。
 課題吟の作句の時は、この点も十分留意してほしい所です。


薩摩郷句鑑賞 8

曲ぎい方てせしこ分校ん運動会
(まぎいかて せしこぶんこん うんどかい)
佃  夢酔

 時あたかも運動会シーズン。おそらく日曜日は、あちこちで運動会が開かれることだろう。
 ミニ校あたりの小さな運動会は、一周しても百メートルもないようなトラックが多い。力まかせに走ると、カーブを曲るのが大変である。「まぎい」は「曲がること」であり、「せしこ」は「あわてる」こと。


犬と猫小路ず変えたやまた出会っ
(いんとねこ こしゅずかえたや またでよっ)
今釜 三岳

 「犬と猫」というのは、「犬猿の仲」と同じ意味である。その不仲な人と、小さい路で出会いそうになったのである。どうも顔を会わせたくないものだから、逸早く横筋へ入ったのであろう。
 やれやれと思って、ひょいと前を見ると、相手もその筋へ避けていたのである。おそらく用もない店の中へ入って、相手をやり過ごしたのであろう。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋



薩 摩 郷 句 募 集

◎12 号
題 吟 「 鍵(かっ) 」
締 切 平成19年11月5日
◎新年号
題 吟 「 加減(かげん)」
締 切 平成19年12月5日
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp


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