天
大崎町 植村聴診器
雷も機嫌が悪り態の温暖化
(かんなれも 機嫌がわりふの 温暖化)
(唱)天誅ございち凄ぜ音で鳴っ
(てんちゅございち わぜ音でなっ)
今年の梅雨は雨もよく降り、七月には珍しい台風も、日本列島を縦断して猛威を振るいました。二酸化炭素の影響による地球の環境破壊や温暖化など、自然のサイクルが少しずつズレてきています。
この異常事態に対して、「雷が機嫌が悪い」と擬人化して捉え、その怒りを詠まれています。目の付け所がよかったです。
地
錦江支部 城山古狸庵
何よ言てん横杵ん機嫌は変わりゃせじ
(なよゆてん よんごん機嫌は かわりゃせじ)
(唱)噂通いの筋金入いじゃ
(うわさどおいの すじがねいいじゃ)
身近にいる周囲の人を見渡すと、一人や二人このような横杵(よんご)がいるようです。
マイペースの横(よん)ごは、傍が何を言っても我が道を行くの精神です。骨のある横(よん)ごをよく観察して、うまく捉えています。
しかし横(よん)ごも人の子、美人から話かけられたりすれば、意外と機嫌も変わるのかもしれません。
人
清滝支部 鮫島爺児医
利口な女房亭主ん機嫌取や慣れたもん
(じくなかか ととんごっとや なれたもん)
(唱)掌ん中け転ろじょい亭主
(てのはらんなけ ころじょいとのじょ)
夫の長所も短所も知りつくして、夫婦の主導権も握っているような妻の姿が目に浮かんできます。
何か頼み事があるのか、それとも何か欲しい物があるのか、亭主の機嫌を良くさせてから話を切り出すつもりです。
亭主操縦法のノウハウをいかんなく発揮している奥さんには、感服でした。
五客一席 伊敷支部 矢上 垂穗
御機嫌を伺げ通すも定年ずい
(ごっげんを うかげとおすも てねんずい)
(唱)今更言めちも少と辛抱
(いまさらゆめち もちっとしんぼ)
五客二席 武岡 志郎
長崎の機嫌を悪るした余計な口
(ながさっの 機嫌をわるした よけなくっ)
(唱)誠て考げん無か事つ吐えっ
(まこてかんげん なかこつかえっ)
五客三席 清滝支部 鮫島爺児医
横杵大工機嫌つ損のえば家は歪ん
(よんごでっ ごつそこのえば えはゆがん)
(唱)余計な事つ言とはし睨られっ
(よけなこつゆと はしねぎられっ)
五客四席 錦江支部 城山古狸庵
ちょっしもた機嫌の悪り時き借い相談
(ちょっしもた 機嫌のわりとき かいそだん)
(唱)しがめっ顔じゃ出直せんなあ
(しがめっつらじゃ でなおせんなあ)
五客五席 紫南支部 紫原ぢごろ
帰い道御機嫌取いの折ゆば買っ
(もどいみっ ごっげんといの おゆばこっ)
(唱)特上寿司い女房も喜くっ
(特上寿司い かかもよろくっ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
久振い孫が来た言て機嫌の良爺
(さしかぶい 孫が来たちゅて 機嫌のえじ)
利口な孫爺ん機嫌取ろち肩を揉ん
(じくな孫 じん機嫌とろち肩をもん)
頼ん事ちゃ機嫌が良か無や聞かん親父
(たのんごちゃ 機嫌がよかねや きかんとと)
上野支部 吉野なでしこ
内方ん機嫌損ねんちプレゼント
(うっかたん 機嫌そこねんち プレゼント)
亭主どんの機嫌見い見いで歩ろっ方
(てしどんの 機嫌みいみいで さろっかた)
青年どんな機嫌取い方いバッグ持っ
(にせどんな ごっといかたい バッグもっ)
紫南支部 紫原ぢごろ
機嫌を見っ車を買かち打っ出せっ
(機嫌をみっ くいまをこかち うっだせっ)
機嫌を見っ彼女ん話す親父じしっ
(機嫌をみっ 彼女んはなす おやじしっ)
大崎町 植村聴診器
ボーナス日機嫌の良女房ん顔を見っ
(ボーナス日 機嫌のえかかん つらをみっ)
国民が全部機嫌悪り久間相
(国民が ずるっごっわり きゅうまそう)
錦江支部 城山古狸庵
孫が来っ横杵ん機嫌が良うしなっ
(孫がきっ よんごん機嫌が ゆうしなっ)
武岡 志郎
泣て寝た児機嫌が良なった夢ん中
(ねて寝たこ 機嫌がゆなった 夢ん中)
作句教室
兼題は方言で「機嫌(ごっ)」、都城さつま方言辞典(瀬戸山計佐儀著)では、ゴキゲンの下略転訛と解説があります。ことばの使い方の例としては、機嫌(ごっ)が悪(わ)り、機嫌(ごっ)が良(よ)か、機嫌次第(ごっしで)じゃ、機嫌取(ごっと)い疲(だ)れたなどが浮かびますが、作句では苦労をさせられる難題だったかもしれません。
また国語辞典を見ると分かりますが、機嫌と御機嫌の意味はそれぞれ異なります。投句の中にありましたが、「機嫌(ごっ)な亭主(とと)」では不十分な表現となり、例えば「機嫌(ごっ)の良(よ)か亭主(とと)」とか、「機嫌(ごっ)が悪(わ)り亭主(とと)」とかの表現でないと意味が通じないのではないかと考えます。
兼題については、そのことばの意味を分かっていても、今一度辞典を引いて調べることが大事だろうと思います。
数年前の南日本薩摩狂句大会で、同じ兼題が出された時の入選作品を紹介しますので、作句の参考にして下さい。
機嫌の悪り火箸が燠ゆ突っ崩えっ
(機嫌のわり ひばしがおきゆ つっくえっ)
岩ア美知代
機嫌の悪り包丁い俎板あヒイヒ言っ
(機嫌のわり ほちょいまねたあ ヒイヒゆっ)
上籠 若菜
社長ん機嫌秘書い聞てかあノックしっ
(しゃちょん機嫌 秘書いきてかあ ノックしっ)
深道 好之
薩摩郷句鑑賞 6
下手な網み魚は頭をうっぽげっ
(へたなあみ いおはびんたを うっぽげっ)
坂口 鉄心
なんでも同じだろうけれども、投網もそうで、慣れた人ののを見ていると、実に簡単そうに見えるし、自由自在に投げているように見える。ところが、いざ自分でやってみると、なかなか投げられるものではない。この句の主人公も実は初心者で、きっと網がうまくひろがらず、おもりがかたまって水中に落ちたのであろう。おかげで、魚が頭をうっぽげた(穴をあけられた)とはまことに滑稽。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎10 号
題 吟 「 札(ふだ) 」
締 切 平成19年9月5日(水) ◎11 号
題 吟 「 素性(すじょ) 」
締 切 平成19年10月5日(金)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
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