鹿市医郷壇
兼題「河豚」(ちゃんぷっ)


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 清滝支部 鮫島爺児医

河豚ん料理高価け値段ん割りな味じゃ忘れ
ふぐんずい たけねんわりな あじゃわすれ

キス釣いな河豚は邪魔なっ捨てられっ
キス釣いな ふぐはまじなっ 捨てられっ

河豚きな毒があっでち昔しゃ捨て
ちゃんぷきな どっがあっでち むかしゃすて

河豚ん焼酎飲ん時きゃ美味どん足しゅとられ
ふぐんしょちゅ のんときゃえどん あしゅとられ

河豚の腹見っ肥満者ニッ笑っ
ちゃんぷっの はらみっだんべ ニッわるっ

河豚料理は板前ん腕ん見せ所い
ふぐずいは いたばんうでん みせどこい


 上町支部 吉野なでしこ

孫二人河豚ん大皿をたいらげっ
まごふたい ふぐんうざらを たいらげっ

薄か河豚模様が見ゆっちギを言かた
うすかふぐ もよがみゆっち ギをゆかた

河豚ち聞っ別腹でまた食もい方
ふぐちきっ べっばらでまた たもいかた


 紫南支部 紫原ぢごろ

少子化でチャンプッ腹が褒められっ
少子化で チャンプッ腹が 褒められっ

ふぐ食かて救急先も頭にいれ
ふぐ食かて かけこんざっも びんてにいれ

ふぐ刺身ごそっち取たや睨られっ
ふぐ刺身 ごそっち取たや ねぎられっ

ひっかぶい河豚んのんかて鯖どんくっ
ひっかぶい 河豚んのんかて 鯖どんくっ

手料理ん河豚くたばっかいあん世ゆっ
手料理ん 河豚くたばっかい あん世ゆっ


 大崎町 植村聴診器

河豚御馳走凄い美味せしびれきっ
河豚ごっそ わざいうんませ しびれきっ

河豚か十ヶ月腹態の家ん親父
ちゃんぷっか とつっばらふの やどんちゃん

河豚い似たメタボリックを医者が叱っ
ふぐい似た メタボリックを 医者ががっ


 錦江支部 城山古狸庵

河豚んごつ女房がふくれた夫婦喧嘩
河豚んごつ かかがふくれた みと喧嘩

河豚は食なち人せにゃ止めっ我は食う
河豚はくなち 人せにゃとめっ わがは食う

け死もごちゃ無かどん旨まか河豚ん肝
け死もごちゃ 無かどんうんまか 河豚んきも


 姶良郡 大久保直義

チャンプッち云われた男が社長けなっ
チャンプッち いわれたおとこが しゃちょけなっ

新幹線下関ずい河豚食もい
しんかんせん しものせっずい ふぐたもい

チャンプッの腹をこすって腹かせっ
チャンプッの はらをこすって はらかせっ

忘年会チャンプッ料理で打っちゃげっ
ぼうねんかい チャンプッりょうりで うっちゃげっ

チャンプッがゴム風船のごっ腹けちょっ
チャンプッが ゴム風船のごっ 腹けちょっ

河豚料理他人が食てから手をつけっ
ふぐりょうり ひとがくてから てをつけっ

河豚料理年に一度がよかとこい
ふぐりょうり ねんにいっどが よかとこい

腹かっごろ河豚よか早えどち嫌われっ
はらかっごろ ふぐよかはえどち きらわれっ

河豚料理免許はあっかち聞いてみっ
ふぐりょうり めんきょはあっかち きいてみっ

河豚料理口が痺れっ青けなっ
ふぐりょうり くっがしびれっ あおけなっ

五千円河豚か命か胸算用
ごせんえん ふぐかいのっか むなさんによ

河豚と猿太平洋を股ぐら相撲を取い
ふぐとさる うみをまたぐら すもをとい


三條風雲児先生を悼む

 鹿市医郷壇の選者を第三十八巻(平成十一年)から快くお引き受けくださっておられました、三條風雲児先生が十一月十六日に亡くなられました。享年七十八歳です。先生の薩摩郷句「渋柿会」や、川柳での先駆的なご活動はあまりにも有名であり、ここでご紹介するまでもございません。選者として戴けたことは鹿市医郷壇の語り継がれる誉になることでしょう。
 先生は薩摩狂句を鹿児島の郷土文芸として誇れるものにしたいと、あえて薩摩郷句と称しておられます。そのお考えで、昭和五十三年七月から始まった鹿市医「狂壇」も先生が選者となられてからは「郷壇」へと替わっています。そのときのご挨拶を引用します。
 薩摩郷句とは、「世態人情等に取材して、それに穿ち味、滑稽味、皮肉味などを加え、鹿児島の方言で表現する、郷土色豊かな十七音字の詩」で句品の高きものであるべき、と述べられておられます。
 先生の唱や評は実に心和むものでありました。一客二席がせいぜいでした私としましては、天の唱を戴いた方々への憧憬と、もっと早くたくさん学び投句しておれば、との後悔もございますが、適わぬ夢となりました。ご冥福をお祈りいたします。
 なお、本誌四十三巻第十号から三回にわたる先生の「薩摩郷句入門」を鹿市医のホームページで読むことができます。
 突然の訃報でございました。第十一号の兼題「河豚」(ちゃんぷっ)にお寄せ下さっていました句は、唱が頂けませんでした。吟者ご本人にお許しを戴いたものはそのまま掲載させていただきました。また、これまでの七年間のお題を並べて追悼させていただきます。
 なお、今後の鹿市医郷壇あるいは狂壇につきましては、早急に再開するよう編集委員会は努力しておりますがしばらくお休みです。

    編集委員長 宇根 文穗


三條風雲児先生 題吟集

平成十一年  十号 脈(みゃっ)
   〃    十一号 色艷(いろひっ)
   〃    十二号 晩酌(だれやめ)
平成十二年  一号 豆腐(おかべ)
   〃     二号 的(まと)
   〃     三号 気疲れ(きだれ)
   〃     四号 診断(みたて)
   〃     五号 無理(むい)
   〃     六号 車(くいま)
   〃     七号 近所(きんじょ)
   〃     八号 裸(はだか)
   〃     九号 法螺(ほら)
   〃     十号 苦笑れ(にがわれ)
   〃    十一号 見合(みえ)
   〃    十二号 歳暮(せぼ)
平成十三年  一号 挨拶(えさっ)
   〃     二号 税(ぜい)
   〃     三号 御礼(ごれ)
   〃     四号 夢(ゆめ)
   〃     五号 男(おとこ・おっこ)
   〃     六号 嘘(うそ・はら)
   〃     七号 祝(ゆえ)
   〃     八号 氷
   〃     九号 仮病(けびょ)
   〃     十号 虫
   〃    十一号 霜
   〃    十二号 毛布(もうふ・けっと)
平成十四年  一号 風邪
   〃     二号 馬踊り(うまおどい)
   〃     三号 灸(えつ・やいと)
   〃     四号 花見(はなん)
   〃     五号 筍(たけんこ)
   〃     六号 梅雨(ながし)
   〃     七号 夕立(さだっ)
   〃     八号 花火(ひやなっ)
   〃     九号 台風(うかぜ)
   〃     十号 露(ち)
   〃    十一号 茸(なば)
   〃    十二号 雑炊(ずし)
平成十五年  一号 年賀状(ねんがじょ)
   〃     二号 注射(ちゅうしゃ)
   〃     三号 目刺(めざし)
   〃     四号 湯治(とつ)
   〃     五号 粽(まつ)
   〃     六号 梅干し(うめぼし)
   〃     七号 帽子(ぼし)
   〃     八号 日傘(パラソル)
   〃     九号 昼寝(ひんね)
   〃     十号 枝豆(えだまめ)
   〃    十一号 秋刀魚(さんま)
   〃    十二号 新米(にかこめ)
平成十六年  一号 初日(はつひ)
   〃     二号 入試(にゅうし)
   〃     三号 鶴(つい)
   〃     四号 花粉症(かふんしょ)
   〃     五号 矢(や)
   〃     六号 闇(やみ)
   〃     七号 雷(かんなれ)
   〃     八号 中元(ちゅうげん)
   〃     九号 甘藷(かいも・からいも)
   〃     十号 鮎(あい)
   〃    十一号 七五三(しちごさん)
   〃    十二号 湯ざめ
平成十七年  一号 寒稽古(かんげこ)
   〃     二号 針(はい)
   〃     三号 職(しょっ)
   〃     四号 呑気(のんき)
   〃     五号 バラ(薔薇)
   〃     六号 鰻(うなっ)
   〃     七号 六月灯(ろっがっど)
   〃     八号 団扇(うっば)
   〃     九号 勝負(しょっ)
   〃     十号 孫(まご)
   〃    十一号 そば(蕎麦・そばきぃ)
   〃    十二号 炬燵(こたっ)
平成十八年  一号 数の子(かしのこ)
   〃     二号 雪(ゆっ)
   〃     三号 卒業(そつぎょ)
   〃     四号 流行(はやい)
   〃     五号 傘焼っ(かさやっ)
   〃     六号 検査(けんさ)
   〃     七号 メロン
   〃     八号 踊い(おどい)
   〃     九号 蟹(がね)
   〃     十号 綱(つな)



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