323・三條 風雲児 選 |
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天
大崎 植村聴診器
傘焼っで昔の青年ん血がたぎっ
かさやっで むかしのにせん ちがたぎっ
(唱)声張い上げっ曽我兄弟ん歌
(唱)こえはいやげっ そがきょでんうた
「曽我どんの傘焼き」「義士伝輪読」「妙円寺参り」は、青少年を集めて教育する三大行事でした。
今でも大へん盛んなものもあれば、やや下火になったものもありますが、曽我どんの傘焼きは、傘を集めにくいこともあり、昔のように、どこの町村でもやっているわけではありません。
褌に白鉢巻の裸ん坊たちは、燃え上がる傘火を回りながら、曽我兄弟の歌を大声で歌い、血をおどらせたものでした。
この句は、昔の青年ですから、現在は見物しながら、曾て血をおどらせた若い日のことを懐かしく思っているのでしょう。昔の青年をねらったところがよかったです。
地
清滝支部 鮫島爺児医
古り蛇の目傘焼き出たや祖母が叱っ
ふりじゃのめ かさやきでたや ばばががっ
(唱)大切らしちょったとに貴重ね品
(唱)てせらしちょったとに たしねしな
現在は、番傘だとか蛇の目傘だとかは、ほとんど見かけなくなりました。確か九州で、和傘を作っているところは一軒しかないと聞いたことがあります。それも大量生産ではないということでした。
子供にしてみれば、傘焼きに持って行きたくて、蛇の目傘を持ち出したのでしょうが、めったに手にはいらない貴重な傘なので、おばあさんが大事にしまっていた品だったのでしょう。叱っているおばあさんの顔、叱られてしょげている子どもの顔が目に浮かんできます。
人
錦江支部 城山古狸庵
石橋ん見えん傘焼か物足らじ
いしばしん みえんかさやか ものたらじ
(唱)かった気分が出ちゃこん台場
(唱)かったきぶんが でちゃこんだいば
昔、傘焼きが盛んだったころは、それぞれの学舎は、傘焼きをする場所が決まっていたようです。
それに当時は、甲突川に石橋が並んでいたわけですが、現在はそれがなくなっています。
曾ってその石橋の近くが、自分たちの学舎の傘焼き場所であったことを思いながら、石橋のない甲突川は、なんだか物足りない気持がするのでしょう。あるべき場所に、あるべき物がない寂しさというものかも知れません。
五客一席
紫南支部 紫原ぢごろ
傘焼きな良か洋傘は役き立たじ
かさやきな よかだんがさは やきたたじ
(唱)とは言が手いな入らん番傘
(唱)とはゆが ていないらんばんがさ
五客二席
姶良郡 大久保直義
傘焼っで甲突川い夏が来っ
かさやっで こうつっがわい なっがきっ
(唱)ぴったい似合た褌姿
(唱)ぴったいによた ふんどしすがた
五客三席
武岡 志郎
兄弟ん苦労傘焼き兵児が受け止めっ
きょでんくろ かさやきへこが うけとめっ
(唱)こん頃ら親が殺さるい娑婆
(唱)こんごらおやが ころさるいしゃば
五客四席
上町支部 吉野なでしこ
川ん土手傘焼く見かてわっぜ騒動
かわんどて かさやくみかて わっぜそど
(唱)前が屈まじ後は見えじ
(唱)まえがかごまじ うしとはみえじ
五客五席
伊敷支部 矢上大寝坊
番傘い褌忠義ずい集めかた
ばんがさい へこちゅうぎずい あつめかた
(唱)今ん若け衆にゃ真似どまでけじ
(唱)いまんわけしにゃ まねどまでけじ
秀 逸
大崎町 植村聴診器
傘焼っの傘貰れ岐阜い使けを遣っ
かさやっの かさもれぎふい つけをやっ
(唱)毎年加勢をしてもろ友情
(唱)めえとしかせを してもろゆうじょ
紫南支部 紫原ぢごろ
温暖化気兼ねしいしい傘を焼っ
おんだんか きがねしいしい かさをえっ
(唱)うっかい塵も焼けん世の中
(唱)うっかいちりも やけんよのなか
錦江支部 城山古狸庵
新か傘を傘焼き焼べち催促っ孫
にかかさを かさやきくべち せずっまご
(唱)もったいなかち言葉を知たじ
(唱)もったいなかち ことばをしたじ
姶良郡 大久保直義
傘焼きな老爺も胸ん血がたぎっ
かさやきな おんじょもむねん ちがたぎっ
(唱)懐かしゅなった青年のころ
(唱)なつかしゅなった せいねんのころ
清滝支部 鮫島爺児医
傘焼きな燃えん傘どま邪魔じけなっ
かさやきな もえんかさどま まじけなっ
(唱)骨ばっかいで厄介けちょい品
(唱)ほねばっかいで やっけちょいしな
武岡 志郎
ぼろ傘が傘焼きいかな主役きなっ
ぼろかさが かさやきいかな しゅやきなっ
(唱)破れた傘も適材適所
(唱)やぶれたかさも てきざいてきしょ
上町支部 吉野なでしこ
番傘が無で洋傘を集めかた
ばんがさが ねでだんがさを あつめかた
(唱)そいも容易すねごっひんなっ
(唱)そいもここやす ねごっひんなっ
姶良郡 大久保直義
傘焼っで初めっ褌を締めっみっ
かさやっで はっめっへこを しめっみっ
(唱)パンツよっかも誠て便利
(唱)パンツよっかも まっこてべんり
清滝支部 鮫島爺児医
雨が降っ傘焼っの傘借っ帰っ
あめがふっ かさやっのかさ かっもどっ
(唱)役きな立たんじ直き濡れ鼠
(唱)やきなたたんじ じきぬれねずん
参 考 作 品
貸せ言たや曽我どん向っの傘を出っ
かせちゅたや そがどんむっの かさをでっ
性が悪しオランダ傘は燃え残っ
しょがわるし オランダがさは もえのこっ
何言えば隣の亭主と見比べっ
なんちゅえば つっのとのじょと みくらべっ
戸口かあ叫っ大虎を引張っ込ん
とぐっかあ おらっうとらを そびっこん
薩 摩 郷 句 募 集
◎6号募集要項
1、題 吟 「検査(けんさ)」
2、雑 吟 なんでも可
3、締切日 平成18年6月5日
◎7号募集要項
1、題 吟 「メロン」
2、雑 吟 なんでも可
3、締切日 平成18年7月5日
◇選 者 三條 風雲児
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 鹿児島市医師会「医報」編集係
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