鹿市医郷壇

兼題「カルテ」


(462) 樋口 一風 選




清滝支部 鮫島爺児医

   紙切れんカルテい聞けば返事ずばしっ
  (かんぎれん かるていきけば へずばしっ)
(唱)手書っのメモい詳し症状
  (てがっのめもい くわししょうじょう)

 パソコンは便利だけど、ちょこっとメモをするのには不向きなような気もします。紙のカルテには、患者さんの何気ないひと言もメモが出来て便利ではないかと思います。断片的な言葉でも拾い集めると、その時の症状が思い出されます。それを、「返事へずばしっ」と擬人化して詠んであります。紙のカルテには、デジタルに無いアナログの温かみがあるのでしょう。それを上手く表現してあります。




紫南支部 二軒茶屋電停

   此や何け虫が這たよなカルテん字
  (こやないけ むしがほたよな かるてんじ)
(唱)我がで書たとを読んかて難儀
  (わがでけたとを よんかてなんぎ)

 他人の事を言えるような字は書けませんが、たしかに問診を受ける時、盗み見をしても、先生のカルテの字は読みづらい時があります。まして、ドイツ語の専門用語では、分かるはずもありません。自分で書いた走り書きも読めない時があるのに、まして他人の字はなおさらです。
 この句の字は、自分の字のことだろうと解釈しました。




上町支部 吉野なでしこ

   今流行っ電子カルテい付て行けじ
  (いまはやっ でんしかるてい ちていけじ)
(唱)腕あ良かどんメカいな苦手
  (うであよかどん めかいなにがて)

 今まで慣れ親しんだ、紙のカルテが使いやすいような気がします。これからのデジタル時代には、電子カルテも必要とは思っているがなかなか馴染めません。これからは新しいシステムも取り入れなければいけないと考えてはいるが、かと言ってメカの進歩には、おいそれとはついて行けないようです。お医者さん達も大変な時代です。



 五客一席 城山古狸庵

   紙でなかカルテを相手い狼狽ろっ
  (かんでなか かるてをえてい ばたぐろっ)
(唱)慣るっ時ずや迷よキーボード
  (なるっとっずや まよきーぼーど)


 五客二席 川内つばめ

   殴い書カルテ詰まった医者ん愛
  (なぐいがっ かるてつまった いしゃんあい)
(唱)問診のメモ字ずいも必死
  (もんしんのめも じずいもひっし)


 五客三席 清滝支部 鮫島爺児医
   
   古りカルテ昔しょ思め出っにっ笑るっ
  (うりかるて むかしょおめでっ にっわるっ)
(唱)開業ん頃ん汗と涙い
  (かいぎょんころん あせとなんだい)


 五客四席 城山古狸庵

   金釘流電子カルテい救われっ
  (かなくっりゅ でんしかるてい すくわれっ)
(唱)字が下手じゃっち恥じゃかかじ済ん
  (じがへたじゃっち はじゃかかじすん)


 五客五席 上町支部 吉野なでしこ

   十年前御繦褓かぶれも面皰顔
  (じゅねんまえ おむっかぶれも にきっづら)
(唱)繰ったカルテい昔す思め出っ
  (くったかるてい むかすおめでっ)


秀  逸

 城山古狸庵
   カルテでな分からじチャート言直せっ
  (かるてでな わからじちゃーと ちゅなおせっ)
   ドイッ語ち知たじカルテを使こっおっ
  (どいっごち したじかるてを つこっおっ)
   偽医者もカルテん丈な準備っ居っ
  (にせいしゃも かるてんぶんな しこっおっ)

 清滝支部 鮫島爺児医
   手書きしたカルテも今じゃキーボード
  (てがきした かるてもいまじゃ きーぼーど)
   似ちょってん内容な全然違ごカルテ
  (にちょってん なかんながらっ ちごかるて)
   下手な字ん手書っのカルテ頼いなっ
  (へたなじん てがっのかるて たよいなっ)
   時効でん残せっ欲しか古りカルテ
  (じこうでん のこせっほしか ふりかるて)

 川内つばめ
   紙カルテ停電なんだ平然っしっ
  (かんかるて ていでんなんだ しれっしっ)

 印南 本作
   カルテいな個人情報が多量し詰まっ
  (かるていな こじんじょうほが ずしつまっ)
   達筆のカルテん字をば読ん悪し
  (たっぴっの かるてんじをば よんにくし)

 醤油屋孫一
   急患にカルテが無かち狼狽ろっ
  (きゅうかんに かるてがなかち ばたぐろっ)
   カルテん字英語と思たや日本語
  (かるてんじ えいごともたや にっぽんご)
   医師の性格が良分かいカルテん字
  (せんせいの たっがゆわかい かるてんじ)

今月の投句から
 「年重ね増っカルテと診察券(としかさね いみっかるてと しんさつけん)」という句がありました。兼題は、要求された題に対して作っていただきます。この句は、句としては問題のない良い句ですが、「カルテと診察券」と両方詠んであります。題を見ないと、カルテなのか診察券なのか、よくわかりませんので兼題だけを詠んでください。
 「カルテ無や診察ちゃ出来ん貴重品(かるてねや しんさちゃできん きちょうひん)」という句がありました。上五の「カルテ無や」に、迷いました。これは、A「カルテでないと診察は出来ない」なのか、B「カルテが無い」と言う意味なのか、解釈に苦しみました。Aなら「カルテねや」に、Bなら「カルテが無や」と助詞を付けましょう。おそらくこの句は「カルテが無いと」という意味だろうと思いましたが、上六になるので助詞を省かれたのではないかと思いました。助詞が無いと、良くありません。一風

薩 摩 郷 句 募 集

◎7 号
題 吟 「 計算(さんにょ)」
締 切 平成30年6月5日(火)
◎8 号
題 吟 「 疲れ(だれ)」
締 切 平成30年7月5日(木)
◇選 者 樋口 一風
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:ihou@city.kagoshima.med.or.jp


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