随筆・その他

リレー随筆


ここが私の“another sky”


鹿児島県立大島病院   西依友梨子

はじめに
 県立大島病院研修医1年目の西依友梨子と申します。同期の鄒先生からバトンを渡され,ちょうど土日に奄美で一番好きなカフェに隣接する宿に泊まりに行く予定がありましたので,そこで過ごす休日のことや,最近おこったことをつらつら書こうと思います。

another sky
 私は大のテレビっこです。奄美大島で娯楽がたくさんあるとは言えない場所で研修をしていますが,テレビがあるのでそれなりに楽しく生活しております。特にanother skyというテレビ番組が好きです。自分の人生で転機が起こったり,勝負をしに行ったり,ただただ好きな場所だったりなど,思い入れがある海外に旅行をしにいくというテレビ番組です。私の医者として初めて働く場所が奄美大島。間違いなく奄美は私のanother skyになりそうです(海外ではないですが)。自然豊かで食べ物もおいしく観光客が年々増えているこの島で学ぶ医療。とにかく,体当たりの日々です。とくに救急当直。いろんな症例が島内や島外(喜界島,徳之島など)から搬送されてきます。各科の救急疾患のファーストタッチを学べる事はいいことですが,自分の無力さを思い知ることが多く,知らず知らずにストレスが溜まっているようです。昔は休みの日となるとショッピングなど人が多く集まるところに行きたいと思っていましたが,今は海をみて,ドライブしておいしいものを食べることがリラックス法になっています。もともと泳ぐことは好きでしたが,昨年度は一度も入らず,ただただ海を眺めていましたので,今年度こそは海に入ることが目標です。



大宮エリーについて
 最近好きな人がいます。大宮エリーという方です。もともと東大薬学部出身で国家試験の時になんとなく試験をさぼり,ブラジルに行ってリオのカーニバルを見に行っていたような。その後は大手広告会社に勤め,独立,今はエッセイを書いたり,ラジオパーソナリティやったり,いろんなお仕事をされている方です。
 社会人になる前は猛烈に村上春樹を読みあさった時期がありましたが,社会人になって寝る前に,長くなくてあっさり読めて,軽く笑える本でいいから読みたいと思うようになりました。
 私の浪人時代からの親友も大手広告代理店に勤めていて,そんなところにも惹かれて,ふと彼女の執筆したエッセイを手に取りました。本のタイトル「なんでこうなるのッ」。何といっても話がおもしろい。大宮エリーの日常がおもしろい。携帯の機種変更の手続きの際に読んでいたところ,ドコモで一人爆笑してしまいました。私のつたない表現力の中ではおもしろさは伝わらないので,みなさんにもぜひ読んでもらいたいです。
 大宮エリーと私は似ているところが多いと思います。(お酒が好きで泥酔するところ以外は)例えば,家の片づけをするのが好きなところ。大学1年生から一人暮らしが始まって以降ずっと部屋の掃除が好きでした。社会人になって病院の宿舎で広くてきれいな家に住めるようになってからも,家具選びが癒しになっています。「なんでこうなるのッ」のエッセイの中で,「家を掃除することは自分のことをすることと同じ」と書いている文章をみて胸のうちがすっとしました。なんでこんなに自分が部屋の改造や家具を買うことにこだわるのか不思議でしたが,私はシンプルに自分のことをしたかったのかと気づかされました。
 他に似ているところといえば,後述するユタ神様のことです。大宮エリーも島に旅行に行った際に,そのような不思議な力に引き付けられたり,なぜかユタ神様なのではないかと地元の人から決めつけられたりしたそうです。私がユタ神様ってなんだろうかと調べ始めたころに,彼女のエッセイでその話を読んだので,また偶然を感じました。そんなこんなでエッセイを今多く読んでいます。今回リレーエッセイを書く機会があり,これもご縁と思って引き受けましたが,やはりプロの文章には到底およばず,読みづらくてすみません。

夢 紅
 大島病院には,鹿児島大学出身でもなく,さらに鹿児島県の出身でもない人が離島医療とはなにか興味を持ち,見学や研修にいらっしゃいます。有名研修病院の研修医の人たちが地域研修の枠で奄美に来てくれて,一緒に働けることが私の貴重な経験や勉強になっています。そんな研修医の先生方と観光に行く機会も多いです。救急科の先生がこぞって勧めるのが,夢紅というカフェです。私も夢紅から海を見ながらおいしいごはんを食べるのが好きです。今回は夢紅の横にあるお宿に泊まりました(休日島をでなくても観光客向けのホテルに泊まるのが奄美での遊びになっています)。木を基調とした温かみのあるホテルで,部屋から海が見えることと,大きなお風呂があるところが魅力です。普段の冬の奄美は天気が悪い日が多いですが,その日はちょうど晴れて日の照りが強かったので海に入れるのではないかと思うような陽気な気候でした。チェックインした後,海を見ながら夢紅でプリンとコーヒーを食べ,波の音を聞きながら夕ご飯までの時間をゆっくり過ごしました。夕ご飯は夢紅のディナーで,あさりのワイン蒸し,ホワイトアスパラのスープ,トマトとパプリカのサラダ,車エビのサラダ,あかりんとんのポトフ,ドライフルーツのケーキとコーヒーでした。料理はおいしく,手が込んでいておしゃれで,お皿は陶芸家のご主人の作品なので,総じてとても素敵な時間でした。大きなお風呂に入って体が温まった後はテラスで波の音を聞きながら,星空観察できました。
 翌日は少し日が出たころに起きてベランダに出て海をみます。ホテルに泊まることの醍醐味は朝の海を見られることだと思います。まだ人の気配がなくて,太陽の照りもさほどない時の海が一番静かできれいです。私が今住んでいるところは病院の近くの名瀬というところで海に行くにはそこから近くても車で10分はかかります。なので海が一番きれいな朝みれるタイミングはあまりありません。「奄美で研修している」と他の人にいうとドクターコトーみたいに海に面した小さな診療所で働いていることをイメージされるのですが,病院の近くに自然は溢れていないですし,海に行くにも車が必要です。
 というわけで一番の醍醐味の海辺で読書したりぼーっとしたりして過ごしてから,朝ごはんです。朝ごはんはパンとにんじんスープとフルーツで,シンプルだけれど,丁寧で自分が作る朝ごはんとはやはり違いますね。食事のあとのモーニングコーヒーをいただきながら,他のお客さんと多愛のない話をしていると,その人の正体がだんだんとわかってきて,なんと以前,奄美の別の病院で働いていた先生だったようで,こんな偶然があるのだなということと,また何かに引き寄せられてここに来たのだなと感じました。
 奄美や沖縄はユタ神やノロ神様とよばれるいわゆる「いたこ」の人たちが各地域にいて,私もローテート中に患者さんとして担当する機会がありました。私は強く信じたり否定もしませんが,その人を担当してからは,偶然なことも実は必然なことなのだと感じたり,縁を大事にしないとと思うようになりました。せっかく縁あって奄美に来たのだから,奄美の文化に馴染んで,尊重して,奄美の人たちの役に立ちながら,しっかり自分の研修をみになるものにしていきたいと感じている日々です。
 上は夢紅のディナーの写真で,下は朝の海です。ぜひみなさん疲れた時に奄美の自然に癒されにきてくださいね。





次号は,鹿児島県立大島病院の松田大樹先生のご執筆です。(編集委員会)



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